#15 偵察



一方、他の球場で兄御田VS忍火の試合を観戦しに来た華武は。


「も〜〜いつまでやってるつもりだよ〜〜。

観てるこっちの身ににもなってくれよ\(`‐´)/」


暑がりであると自他共に認める朱牡丹はすでに上半身裸。


「ふーん忍火か…強敵になりそうだ」


それとは正反対に朱牡丹のシャツを頭からかぶって湯気の立つお茶を飲む久芒。


「あの―――それでこれ終わったら勿論解散っすよね?

俺、今日行きたいとこあったんすけど」


下敷きでパタパタと久芒の方からくるお茶の熱い湯気を払う御柳は苛々

ケージはすでに満タンだ。そんな状態でも。


「本校に帰って練習だ」


御柳の希望を一刀両断にしてしまう屑桐の言葉にこの上なく落ち込む御柳。


「ミヤはどうせさんに会いに行きたかっただけでしょ。

それじゃすぐにバレるって」


御柳達よりもう1段下のスタンドに腰掛ける墨蓮がため息と共に

落ち込んでいる御柳に追い討ちをかける。


「それが何が悪いんだよ。ああそうさ!!

昨日の開会式に会えるかな〜とか期待してたのにはすぐに

学校戻っちまったし、だったら大宮ならここからならすぐだから

この試合終わってから行っても時間は十分あるじゃん!!」


御柳はストレス発散するようにダンダンと拳をベンチへと打ち付ける。


その姿は脅威の1年ルーキーとして名を馳せる者としては

非常に情けない。


「十二支だって今日の相手は武軍だからミヤ相手にしてる暇はない気だよ」


「にしても、ちゃんが女子ソフトボールの世界覇者なんて

ビックリングだな」


ズズーと暖かいお茶をすすりながら久芒は話の主題になっている

全国のマスコミにて最近明らかになったの正体について感想を述べる。


「ソフトの伝説、“黒蝶”は中学ソフトボール二連続優勝チーム

でショートレギュラーで主砲としても活躍。

日本中学女子ソフト選抜にも選ばれてる。

第20回女子ジュニア選手権大会。黒蝶は日本初の

優勝チームの4番でチームの要だった。

ピッチャーとしては数える程しか出てなかった気だよ。

参加国17カ国のリーグ戦で初戦から

優勝候補の1つベネズエラに12対4で勝利から始まって

決勝ではアメリカから逆転ホームランで世界中に

衝撃を呼んだ。公式試合のホームラン数も打率も

女子・男子ソフトボールどっちとも合わせても

ギネスに登録可能。これが黒蝶が一年から二年の3学期で

いなくなるまでの約2年の大まかな経歴気だよ」


朱牡丹がノートパソコンのディスプレイに表示してある

文章を感情なく淡々と読んでいく。

読んでいるそれは自分の惚れた女の子の他とは異彩を

放つ才能を物語っていた。


ちゃん本人には確認とれてる気だよ。

すぐに話題代えられちゃったけど」


ちゃんは逃げるように黒蝶の話を止めて武軍に

ついてどんな高校かを聞いてきた。

知ってる限りの武軍の事は教えてあげられたけど、

メールでの会話では本人がどんな気持ちなのかなんてわからない。

もしかしたら、俺は聞いてはいけない事を聞いたのだろうか。



本当は黒蝶について聞かれすぎてその話題を話すことすら面倒

だっただけである。


「そこまでソフトで頑張ってればあん時俺がソフト

を馬鹿にして怒ったのも当たり前か」


御柳はプクーとバブリシャスのガムを膨らました。


「そこまでくると圧巻だな。俺のダイバースクリューを

打ったのもありえない話じゃないって事か」


帥仙は嘆息と共に言葉を吐き捨てた。


「黒蝶の名称の由来はちゃんの髪が綺麗な漆黒の

羽みたいだっからが定説。でも、他にも色んな

理由がネット上でも流されてる気なんだ」


「録先輩。その他の理由ってなんですか?」


墨蓮はそこで何故言葉を止めるのかが

気になったので聞いてみた。


「蝶って昔は不吉なもんだったんだって。

その中でも黒い蝶は嫌われてて、黒蝶の名前も

そこから異質とか綺麗なんだけど怖い者とか、

2年生の3学期からは姿そのものが忽然と

消えてしまったからそこから儚い存在だとか

言っちゃえばひがみや嫉妬の塊みたいなもん」


それは当時から言われ続け、を傷つけたに違いない。

視覚では捉えられないもっと深くて

見えにくい場所で。


「……なんか、それ言った奴らを全員ぶっとばしてーな


あいつ、がその事で嫌な思いをしたというなら、

それを実行する事を厭いはしない。

あいつは強いのに、他人の事を気にし過ぎる節があるから。


「そんなもの馬鹿どもの遠吠えに過ぎない。

監督がを漆黒の蝶とあだ名したのは

その力を認めた監督なりの敬意の表れだろう。

俺達も、が黒蝶であるならば黒蝶と

いう名を貶める意味で使いはしない。同じ強者と

認めた証として使う」



才能と努力。それに耐えうる精神。これがすべて存在しての

功績だと分からない馬鹿にはどんな

思いをさせられたのかは俺は知らないが、

少なくとも、嫌な事ばかりではなかった

はずだ。出なければ御柳の言ったあの言葉

で怒りを感じる事があるはずがない。


ちゃん今どうしてるかなぁ」

「録、他の球場はどうなってる」

「はーい。今調べる気……っえ!?


朱牡丹はその情報を見ると目を見開いて

その情報が本当かどうかを疑った。


それほど、衝撃的だった。





















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