#14 イナズマの検証









「く〜〜〜!!虎鉄先輩かっけぇ〜〜!!」「こりゃ、DUVSを越えたっすよ!!」


唐突に猪里先輩がずずいっと出る。


「よーやった、虎鉄。後はこの俺が説明しちゃーけん」


「う、猪里先輩!?」


いきなしの猪里のドアップ。そのまま虎鉄の新打法解説講座が始まった。


「あの構えは体全体の力ばめいっぱい活かすもんで、低く屈んどう体は、

縮めたバネのごたる状態や。極限まで縮めたバネは、インパクトの瞬間伸びきって、

あんだけボールば飛ばせる力が生まれるっちゅー事ばい。

で、バットで一回地面ば抉った時巻き上げた土は、ボールとのく擦れ、

インパクト時バットと強結果、ボールには微量の土や傷がつき、

最後にバールが落下しよる時、さっき付いた土や傷が空気抵抗の歪みば作って、


不規則に曲がりながら落ちてきよったという訳やね。

ちゃんの技『竜王』のアドバイスと鍬で畑ば耕して、斧で木ば打ち込んで、

イメージば掴んで生まれた虎鉄の新打法…BTS…ブルー・サンダー・スラッシュ。

まさに、グラウンドに突き刺さる"青いイナズマ"たい」


長々しい説明ご苦労様でした。


すると、あっと何かに気付いたようにお猿君が喋る。


「BTSなんちゅー技なんだ。っていうか1ついいっすか?

猪里先輩がこんな長いセリフ喋ってんの、初めて見ました!!」


「ふーーー、そうなんよ。待ち焦がれたばい。登場して以来、初やけんしさ」


すっごく満ち足りた顔してます。


「流石は十二支の『怒れる虎』だぜ〜!かっけぇ〜〜!!」

「きゃ〜!虎鉄君、素敵〜vV」



「フフフ、スタンドの皆、サンキューNa。この調子でこの回も1点もらうZe」


 監督が笑いながら呆れた。

「ったく、皆浮かれ過ぎだ。そんな事したら、向こうのピッチャーに悪いだろうが」

「いいえ、気にしてませんから」


敵校の大和の目が少女マンガっぽくなっちゃった!!??


「にしても、。お前、鹿目には遍照天(ヴィシュヌ)。

続いて虎鉄に竜王まで教えていいのか?」


は何も答えず、曖昧に笑って見せた。

正確には2つとも系統は同じだけど別の技なんだけどね。

間違いなく魔球XもBTSも本人達のオリジナルだよ。



『9番 ショート・蛇神くん』


 第二の矢、発動。いきなり開眼。


「打った〜!!流し打ち!!ライト前ヒットだ!!」

 蛇神先輩も虎鉄先輩に続いた。


「十二支高校1点追加!!2−0!!!」

「よっしゃ〜〜〜!!ナイスバッティング仏陀様〜!

こうなりゃ涅槃までついて行きますよ〜!!」



「ったく、浮かれんなっつったろーが」


 愕然とする武軍。辰がメガネを押し上げた。


「ダブルチャンス打線…いたずらに戦力を分散させてしまう恐れがあったのですが、

見事、第一・第二の矢の両方が機能しましたね。流石ですよ、監督」


 しかし、当の監督は女子マネを侍らして札束風呂。


「あんたが一番浮かれ過ぎですよ!!」「そのお金どっから持ってきたのよ?!」


2人によるダブルツッコミが入った。


この頃思うけど、辰君のメガネの数は底なしだよ。







ダブルチャンス打線により2点をもぎ取った十二支。


その後、双方のピッチャーの、お互い引けをとらない投げ合いにより、

戦況は膠着状態に5回を迎えた。



「うっしゃ〜〜!!いける!いけるぞ〜!!」

「鹿目先輩!このまま抑えて行きましょー!!」





 喜ぶ十二支スタンドを尻目に武軍は作戦会議を開いていた。






「フン、大衆は騒がせておけばよい。ここからが本当の戦争。

敵が勝利を意識したその刻こそ、我らの勝機」


 武軍装戦高校監督・瑞鳳源帥が、その指揮を執った。



「刻は満ちた。敵軍の5回の攻撃を以って開始の合図とす。

先に行った戦略会議通り、焦土作戦を遂行する」


 徹底的に十二支ナインの戦力を分析した戦略会議。

その中には、当然鹿目や牛尾のデータもあった。


「よいか。この作戦こそが、大戦略野球の本懐である。

各々、殲滅戦の覚悟で作戦にあたれ」


「「「はっ!!」」」


 そう…文字通り、殲滅戦だ…。














『5回表 十二支高校の攻撃です 1番 レフト・猪里くん』





「そろそろ、カタパルトにも目が慣れてきた頃かいな」

「いったれ猪里先輩!!3巡目突入だ!!」

「すでに6安打もしてんだ!もうカタパルトだって怖かねぇっすよ!!」



 辰羅川がメモをしてあるデータを見る。


「確かに、大和投手に対し、4回までで6安打…しかしその内訳は、

獅子川先輩と虎鉄先輩、各1安打ずつ。牛尾先輩と蛇神先輩が、各2安打…」


「つまり、ダブルチャンス打線のクリーンナップだけ、って事。

オマケに…今までの例でいくと、ここからが武軍の見せ場になる」


 は冷めた半眼を武軍に向ける。


あいつ等は、ここから何かをしでかす。



 大和が投げた。だが、投げ方が。


「サイドスローやて!?」


 驚愕する黒豹。そして、猪里先輩。


「ストライ〜ク!!」


2球目を何とか当てるも、結局アウト。続く三象先輩も、アウトとなった。


「ッく〜〜〜、カタパルトとサイドを使い分けて…

ますます打ちづらくなっちまったよ〜〜」


 頭を抱えるスタンド。


「あ゛〜〜、も〜〜、どいつもこいつも横投げになった位で情けねぇ!


いつまで敵ピッチャーの顔にビビってんだよ!」


 顔が「い゛〜〜〜」ってなってる!!




「ちょっと〜〜、シシカバ先輩、どうしたんすか、アウトロ〜は?

ど真ん中の球空振りしちゃ、勿体無い。ダーツだったら100点ゾーンっすよ!!」


 ああ!!ケンカ売り始めたし!!


「猿野、テメーよっぽど蝶々になって、お空を飛びてぇようだな」


 獅子川先輩と犬君が手を、虎鉄先輩と辰君が足を掴んで。蝶々の歌で上下に振る。


『友達同士でできる拷問シリーズ@ ちょうちょ』


ぐわん ぐわん


「ギャ〜〜〜〜〜!!!」


 数十秒間上下に振られ続けた猿野であった。











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