#13 イナズマ
猿野は虎鉄の手の平に見たものがいまだに信じられない。
「林業でどうやったら、あんな数の血マメと赤ギレが…?」
「俺はたいがい止めたっちゃ。が、あげん手が荒れとう理由は…手斧一本だけで、
ひたすら斜め下から、突き上げ気味に木を切り倒す特訓ばしっとたけん」
「えっ!斧だって!?」
「兄ちゃん見て〜〜!!!」
兎丸の指差す方向。
大和が投げた。カタパルト。
「来たぞ!カタパルトだ!!」
「見せてやらあ、グラウンドに突き刺さる青い稲妻を…」
虎鉄先輩が振る。
「RAAAAAAH!!」
バットの先が地面を抉って砂を撒き散らせる。
そして、突き上げた。
「HAーーーーーー!!突き上がれ!!!」
ガギィン
球は。すさまじいスピードで上空へと掻け上がる。
「でけぇぞ〜〜!!」「そのまま入れ〜〜!!」
「そ…そんな…!?」
「ライトバーック!!」
妙高の叫びに反応して、ライトが走り出す。球はまだ上がり続けている。
「うひゃ〜〜、高ぇ〜〜!!」「どこまで上がんだよ!?」
「な…何だ!?」「球が消えた?」
球が見えなくなった。焦る武軍。
「どこいった!?今、確かライト方向飛んでったよな!?」
「上がりすぎて雲に消えたか!?んなバカな!」
それとは真逆の喜ぶ十二支。
「こりゃー、柵越えしたんじゃねーか?」
「そうだそうだ!場外に消えちまったんだ!」
ライトが左右を見回す。
「チィ、オレとした事が!」
「ライト上だ〜〜〜!!!真上だ〜!!!!」
「ん!」
妙高の声に上を見れば。落ちてくる白球の姿が。
「あ〜、駄目だ!上がり過ぎた…」 「下からすくい上げ過ぎたんだ!」
愕然とする十二支。
「へへ…脅かしやがって。ライトフライだな」
十二支の言うように本当に柵越えをしてしまったのかと焦っていた武軍は
頭上の白球を認めてほっと胸を撫で下ろした。
「ヌハハ!!残念だったなァ!やはり大和さんのカタパルトは無敵の砲台だ!!」
極端なアッパースイングにした為に、飛距離ではなく高さが伸びたワケか。
「あ〜〜んも〜〜!!あとちょっとだったのに〜!!
上に上がる分前に飛んでたら、とっくに柵越えしてたよ〜!!」
悔しがるウサギ君の肩に手を乗せる。
「安心してウサギ君」
自信に満ちてが笑う。
「アレは絶対、狙ってやっとうけん」
次に猪里が続く。
「えっ!?」
虎鉄先輩が走る。
『あっとバッターランナー 今 一塁を蹴った!
しかし打球は高く上がりライトが捕球体勢に入っております。
柵越えにはあと一歩 距離が足りませんでした』
「へッ…誰がホームラン狙うっつったYo。オレのバッティングはここからDa」
虎鉄が笑った。
「落ちろイナズマ!!!」
落ちてくる球。その軌道が変化した。
「な…何だ!?球がジグザグに落ちてきやがった〜!!」
親指を下に向ける。
「そのままグラウンドへ突き刺され」
球はライトのミットを逃れて。グラウンドで跳ね返った。
「何だってんだ…クソッタレ!」
「武蔵!サードだ!急げ〜!!」
送球。サードが捕るものの。
「セーフ!!」
「よっしゃ〜!!一気に3ベースだ〜!!」「ナイスバッティン!虎鉄先輩!!」
困惑する妙高。急いで何かを入力し始めた。
「HEY、ハイテクくん」
虎鉄の呼びかけに反応して、そちらを見る。
「これでもオレが一番、非力くんって言うのKaい?」
してやったり、という顔をしている虎鉄。
それを見て、歯噛みする妙高は遠目でも分かった。
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