#09 魔球X
「…鬱陶しいな。予選ともなると、こういう小賢しい虫が増殖するわけか。
こんなに早く必要になるとは…まあ、実験台には丁度いい…見せてやろう
僕の新ウイニングボール、"魔球X"を」
「タイムだ……伝令に例の物を持たせてやれ」
監督の指示に従って審判にタイムを報告する。
「おっと、ここで十二支高校、タイムを取りました。
選手達がマウンドに駆け寄っております」
先輩の所に皆が・・・待て、あれ等は誰だ?
「お兄ちゃんv」「鹿目お兄ちゃんv」「お兄様v」「鹿目にいちゃんv」
「お・に・い・ち・ゃ・んv」
「うざいのだ」
だろうな。
『なんと〜〜〜!!!選手達は皆妹だったのです!!!
そして何気に、妹達の中に小野妹子が混じっております』
アナウンスさん。何気にノリが良いよなー。
「お兄ちゃん、一緒に隋に行こv」
そのうちの1人に奈良時代を彷彿とさせる衣装をまとった人物。
小野妹子が現れた。
「お前男だろ!!!教科書に載ってたのだ!」
その通りです。
「鹿目先輩、監督からです」
が伝令の役目をし、預かり物を鹿目へと渡す。
「ああ、ご苦労なのだ」
「あれ!?鹿目さん、何すKaそりゃ?」
「すぐに分かる。さあ、皆もう散るのだ。
見せてやる。僕の新ウイニングボール"魔球X"を」
そう言って、ボールを握り直す。
バッターボックスに立った武蔵が小馬鹿にした視線を向けた。
「ハッ、魔球?何時のセンスだ。大体、変化球ってのは、
それ単体じゃ意味がねーだろ。
ストレートの球威があって、初めて生きてくるもんだ!」
「何っ…?!」
反応する鹿目先輩。凶悪な笑みを浮かべている武蔵を睨む。
「投手ってのは結局、最後にゃ体格や球速が求められるもんよ。
非力でちんちくりんの奴にゃ、務まらんポジションなんだぜ。
ホラ、ぼけっとしてねーで早く投げてみろ」
鹿目先輩の眼光が鋭くなった。
「……言いたい事はそれだけか…」
記憶は、予選半月前に移る。夜のグラウンドに、二人はいた。
「三象。僕らはもう3年なのだ…後がない。剃刀カーブは、すでに1年に破られた球
…これ一つで予選を突破できるとは、到底思えないのだ」
「がああ」
「から聞いた。剃刀には、まだ改良できそうな心当たりがあるのだ。
時間は残り少ない…受けろ」
の言う、アレが習得できれば……剃刀ももっと生きてくる。
練習が再開された。
のアドバイスと三象の力があったからこそ、
僕は思う存分カーブを極める事ができたのだ。
その集大成が、こいつだ。喰らえ、武軍の犬共。これが、魔球X!!
投げられた球は。
「えっ、これは!?」「剃刀カーブ…だよな!?」
だが、その球が。
「あっ!何やねん!ボールがブレよる!!」
黒豹の位置からでも分かるほど、はっきりとしたブレ。
「2つに分身しよったで!!!」
さすがに焦り顔の武蔵。
「ぶ・・・分身だとお〜!?んなアホな事あるわけないわ!!
小賢しい!こんなもん只のストレートにすぎん!!どっちかが本体だ!!!」
バットを振る。だが、球が曲がった。
「ストライ〜〜クツ〜〜!!」
「す…すげー!見たかよ!?分身したぜ!」
「しかも曲がったぞ!一体どんな変化球なんだ!」
「球のブレが分身の鍵か・・・?だが、その後のカーブはどういう事だ?」
「未だかつて、この様に不可思議に変化する球は、見た事がありませんね」
皆、驚いてるね。にしても、まさか本当にこんな短期間で身につけるとは
…鹿目先輩もやるねぇ。でも、問題は、まだ残ってるけどね…。
「今のは目の錯覚か!?2つに見えなければ只のカーブなんだがな」
「フン。どうした、さっきの威勢は。あと1球だぞ」
鹿目センパイが構えて、投げた、魔球X。
武蔵がキャッチャーを盗み見ると。右手を低く構えている。
「やはりカーブか!!魔球破れたり〜〜ッ!!!」
バットを振る武蔵。球は、シュート。
「ストライーク!バッターアウッ!!」
武軍が静まり返った。
「ど…どういう事だ!?今…確かにキャッチャーは外角低めに構えとったんだ…?!」
球は、三象先輩の左手に。
「ダ…ダブルミットだと〜!?」
「両手につけないとあの変化には追いつけないのよ」
こっちの作戦勝ちだね。
「鹿目さん!今の球スゲーっすYo!!一体いつの間にあんなの覚えたんすKa!?」
興奮気味の十二支。逆に、武軍はキレ気味だった。バットを投げ捨てる武蔵。
「おいコラ!テメー、分身魔球なんて汚ねー手、使ってんじゃねーよ!」
「汚いのはお前の面だろう」
「てめぇ、死にてぇ様だな。何ならここで戦争始めても構わねぇんだぜ」
ブチ切れ寸前の武蔵。拳を鳴らして鹿目へと凶悪な面で近づく。
「ヤ…ヤベーぞ!武蔵さんを取り押さえろ〜!!」
武軍レギュラーが慌てた。
ここで障害事件起したら今年は無いからね。
「オイコラ逃げんな!!もう一度オレと勝負しろ!!
魔球ナントカを放ってみろや!!納得いかねぇんだよ!!」
「心配しなくても、お前にはまた投げる事になる」
黒い笑みを浮かべて、先輩が見下した。
「今度はその緩んだボルトにねじ込んで、きっちりとシメてやろうか」
鹿目先輩…ナイス毒舌!!
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