#05 貪欲




思わぬ進塁に武軍は立ち直るように声をかけ合う。



「大和!マグレじゃマグレ!」




セカンドがピッチャーに返球しようとした瞬間、動いた。




「なにぃ!?ピッチャーに返球する隙をついて!」

「暴走だ!暴走!!」 

「送球が高すぎる!ランナーの飛び出しに手元を狂わせたか!?」


慌てる武軍を尻目に獅子川は三塁へと足を急かした。


「ヘッ!二塁なんざハナから眼中にねぇんだ!オレの望みはあくまでホームよッ!!!」


猿野がキャプテンの髪を引っ張って激しく上下させる。


「ちょっとキャプテン!見てますか!?見てますか!?

あんな事やらかしてますよ!!」


「サード!殺せ〜〜!!」



キャッチャーの送球。



「ちいっ!サードは何があっても頂くぜッ!!」


突っ込んだ!!スライディング…かと思いきや。


「だ〜〜ああああ!!!」


「バカめ!死ねや〜!!」


獅子川が笑った。


「あ!こんなとこに蚊が!!」


パァアアン

とサードの眼前で手を叩く。


「オレ流"猫騙し"!!」


「ぐわああ!!」


猫騙しに流派は関係無いと思いますが?


「セ…セーフ!!」


「わ〜〜、かなり強引だけど、凄―い!!」「三塁まで行きよった〜〜!!」


さすがに悔しげな武軍。


「オラ!テッメーら!見たか聞いたか驚いたか〜〜!?

こッれがオレの生き様よッ!!」


「いいぞ〜!兄貴ィ!!」「かっけ〜〜っすよ〜〜!!」


なんか、こーゆータイプ―がらむしゃって感じ―もみじとか好きそうだよなー。

私も……嫌いじゃないよな。


「な…なんちゅー強引な走塁だ。ある意味すげぇわ」


「良くも悪くも、あれが彼のプレイスタイルでね。

君の言う通り、もしかすると、部内一、走塁に関しては貪欲かもしれないよ」


脱帽するしかないよ。こりゃお猿君並に驚かされた。


「彼はいつも練習において、野球のセオリーや基本には縁がなかった。

バッティングに関しても"ストライクゾーンの球を打っても面白くない。

こんな球打てて当然"と言い、彼はストライクゾーンから

大きく外れた悪球を狙い打ちする様になった。

随分と変わってはいるけれど、それが彼なりの野球の愛し方なんだろうと思う」



「でも、通常のストライクゾーンが打ててませんが?」


これは、対策練らなくちゃだよ。

相手に知られた今、もうこれ以上は打てる望みは薄い。



比乃がさりげなく猿野の後ろに回る。


「あっは!獅子川先輩大活躍じゃーん。

この試合、兄ちゃんの出番ないんじゃないの?この試合といわず、この先もずっと」


今黒いセリフが!!やっぱりウサギ君も黒キャラか?!


「ぐぬぬ…ムカつくわ。ハラワタが煮えくりかえるほどに」


「も〜〜、せめてチームメイトが打ったんだからさあ、もっと素直に喜んだって」


「あ゛〜〜、クロ●ッツの端っこの一粒が取りづらくてムカツクわ〜〜〜」


そんな事で!?


「メン●ス食う時、決まって包装紙がグルグルの螺旋状になるのがムカツク…」


「どーでもいじゃんよ!そんなの!!」


ウサギ君…。いくら腹黒になった所でもやはりツッコミ役か…。





「カラーギャングが出席簿つけてたのは、何かカワイイ」


「首都高でルーレット族が渋滞に巻き込まれてるのも、何かカワイイよね」


話に乗っているお猿君とウサギ君


「どうでもいいよ!!」


私も、ツッコミ役から逃げられないのか…。









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