#04 アウトロー







「プレイ!」

「ヘイ、カモンベイベ!俺の相棒雷丸が火を吹くぜ!」

キャッチャーの妙高は首をかしげた。


 何だコイツ?データがまったく無いなんてあり得ないね。

補欠か、それとも本戦用の切り札?てっきり黒帽子の村中が出てくるかと。

あいつは要注意人物なのに苗字以外よく分からないいんだけど…まぁ今は関係ない。
まずコイツのデータから取らないと…。

こいつのバッティングのクセをラーニングしたい。

口元小さなマイクで指示を出す妙高。


「各員、サーチ開始」

スタンド各所に配置された部員に指示が出された。

これが、武軍の強さの正体だ。




ピッチャーが振りかぶって、投げた。


「あれ?普通の投げ方だ!」

「こりゃ絶好球だぜ!行け〜〜〜!!」


てっきりまたカタパルトがくるとおもったら絶好調に打ちやすいど真ん中。

これを打たないはずがないのだが……。


「ハッ!オレ様をナメてもらっちゃぁ困るな!こいつは失投したお前さん達が…」


バットを思いっきり振った。


「悪いんだぜ!!」


ズバァン


見事な空振り。十二支全体が固まった。


「い、今…バットとボールの間が…こんな…ねぇねぇ、ちょっと御門奥さん!」


御門奥さん!?牛尾先輩がマダムに!?


「ストライ〜〜〜ク!!」


「チッ。荒野の荒くれ大リーガーの球に慣れ過ぎちまって、

これしきの球が打てねぇとはな」


何だコイツ。ありえない。サンプルデータ集める用に甘くしてるのに。

仕方ない。もう一度。


妙高は大和に甘く投げる様にまた指示をする。


「またど真ん中だ!遠慮はいらないっスよ!!」「獅子川さん!いけ〜〜!!」


そうだよ。さ、早く打ちなよ。それと引き換えに、君のデータは頂くから。



「ストライクツーーー!!」


「何でだ〜〜!!!」


青ざめる賊軍。


「これってひょっとして、獅子川さんって口だけ野郎って事…」


いや、そんなんだったら牛尾先輩が推薦するはずないし…。


「ちょっとちょっとキャプテェ――ン!今の見ましたか!?

あんなんならオレを出しましょうよ、ね〜〜〜!」


お猿君が牛尾先輩の肩を激しく叩いた。気持ちは分かるから今回は止めない。


「彼にとって、今の球はストライクじゃない。

彼は彼のストライクゾーンを持っているんだよ」



牛尾はある日を思い返る。

あまりにもすごいバッティングスタイルに見かねた牛尾が注意する。


『ほら違うよ、獅子川くん。野球の基本ってのは…』

『はん。何だそりゃ。オレはオレ流だ!』


子供っぽく笑いながら、獅子川が意思の強い声色で話す。


『レールに乗っかった人生ッてな、楽しいかい。オッレは自由に生きるぜ!!』


停学をくらったと聞いて校門を出て行こうとする彼に駆け寄る。


『ハツ、当分は学校来んなだってよ。停学ってやつさ。

丁度いいや、オレは旅に出るぜ。世界でも見てくらぁ』


『獅子川くん…』


『―――何だよ、牛尾。漢ならアウトローだぜ!』







何の翳りもない笑顔が、眩しかった。

そう、今思うと君と、似ている笑顔。









妙高は更に首を傾げるしかなかった。

どういう事だ?何で、こんなのが3番を・・・。まったく、ありえないね。

2球もチャンスがあったのに…。もういいや。

大和さん、止めはやっぱりカタパルトで。



妙高の指示を聞いて構えた。遂に来た、カタパルト。




「待っているんだ、あの球を・・・。彼が最も得意とするのは、悪球打ちさ」

「悪球打ち?」

は聞き返す。




「これだッ!!待ち焦がれたぜ!!!」


オレ流アウトロー打法!!


キィィィィン


打ちあげる音が球場に響いた!!

それは敵味方関係なしに唖然とさせてしまった。


「いった〜〜〜!!レフト!でかいぞ!!」「そのままいっけぇ〜〜!!」

「レフトバックーー!」


妙高が叫ぶ。その間に球がフェンスへ。


「やべぇよ!入っちまうぞ!!」「信濃走れ〜〜〜い!!!」


球の行方は…。


「フェンス直撃〜〜!!!」「くぅ惜しい〜!あ50cmで柵越えだったぜ〜!!」


「長打コースだ!回れ回れ〜!!」


スタンドで応援する賊軍の大声援に頬を笑わせた。



「待っていたぜ!アウトローの球をな!こッれがオレ様のアウトロー打法よッ!!

こーなりゃランニングで本塁まで一直線だ!まさにオレの足は跳ね馬のようだからなッ!!」


おー、格好いいじゃないですか。一塁へ一直線…。


『おっと、バッターランナー1塁を蹴った〜〜!』


「はいよ!黒王号ッ!!」


『パカラ パカラ パカラって、馬で蹴った!?』


今まで何処にいたんだ黒王号!!??


「オラオラ〜!バカ息子!とっととゴーホームだよ!

アタシはお前をそんな柔な子に育てた覚えはないよ!!」


ちょ、この女性ウエスタンさんはもしかして獅子川先輩のお母さん!?


ズギュン ズギュン


「銃打っちゃ駄目でしょ!!」


『場内での発砲は、他のお客様のご迷惑となる場合がございますので、御遠慮下さい』


「アナウンスさん結構冷静?!」


しかも。


「バカ!余所見すっから、つまづきやがった!!」


あーこけちゃった。なんか、場内がし―――ん。としちゃってる…。


「信濃〜〜!はようせい!!セカンドで殺せるぞ!!」

「やっべーー!一転して大ピンチだ!立て〜〜!立つんだ文!!」

「オラァ!いつまで寝てるんだい、ブン!!」

あああ!!獅子川母がキレた!?


「今起きないならこのリボルバーを脳天に食らって、永久にそこで」


ズギュン


「眠ってるかい!?」


チュイン


「ヒッ!!?」


さらに打ちまくる獅子川母。


チュン チュン チュン チュン


「あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


「そこッ!そこッ!!こそ〜〜〜〜〜ッ!!!」


四つん這いで走ってる…。キショいよ、さっきまでの格好良さは何処?


「何かもう、荒野の跳ね馬というよりゴキブリですね…」

「辰君、言い得て妙だね」


絶妙な単語の選択に感心する


「ふざけやがって!このゴキブリ野郎!!」


セカンドに送球。


「グ……あんだぁ!人をゴキ扱いしやがって!オレは、アウトローだ!!!」


獅子川はスライディングして…。


「セーフ!!」


おお、2塁まで行った!!


「…なんちゅーしぶとさじゃ。まさにゴキブリ・・・」

「見たかい、猿野君。あれが彼のバッティングさ」

「私的にはあの貪欲と呼びたいほどの走塁に吃驚ですよ」

しかし、私は獅子川先輩を甘くみていた。そう、これだけじゃなかったのだ。










NEXT