#60 くじ運









『残り物には福がある』ってことわざが世の中には存在してるけど、

今回はそれを完全否定する!!





「次は、県立十二支高校。ステージへどうぞ」


「はい!」

 残りのくじは2つ。Bブロックの129番。

…3回戦で黒選に当たる。そしてもう一つが。

Aブロックの2番。…華武の真横。


「ちょっ…ちょっと!あれって!」

「2番を引いたら、2回戦で華武と当たる。そうなれば…敗北は必死、か」


129番引いても黒選が近すぎる気がするが。


「あの2つのくじはそのまま、天国と地獄という訳さ…」


十字架に触れたキャプテンが階段を登っていった。


「牛尾、死んでも129番の方を掴めよ。オレの博才、今日は全て貴様にくれてやる。

虎鉄…ときに牛尾はクジ運良い方なのか?」


「どうっすかNe〜〜。家は金持ちのクセして本人曰く、ちょっとないらしくて…

あれで運も良けりゃ、パーフェクト超人っすYo。それにあの人、欲がねぇからNa〜〜」

虎鉄がため息をついた。


「牛尾!神頼みだ!!神にお頼み申し上げろ〜〜!!!」

「神様〜〜〜!!」


 羊谷と虎鉄がロザリオと聖書を何処からか持ち出す。

何処から出したんだ?

出来れば私も129番を引いて欲しい。


2番では…間違いなく黒選に当たることなく終ってしまう。それだけは嫌!!


「牛尾先輩…頑張って」

今は心の底からそれだけを祈る。

「見ろよ!残りの2つの空席を…」

「2番を引いちまうと、すぐさま華武と当たるんだぜ!」

「ひぇ〜〜、十二支可哀想だな」

 この辺の声も、牛尾先輩に届いているはず。…緊張してないといいけど。


「頼むでござるよ〜〜、ボクらの為に地球の為に、

2番を引いてくれ!華武とはボク達当たりたくない〜〜」

「2番を引いてくれたら、もれなくこの『セーラーエンジェル怒苦露』

の1/10フィギュア
あげるっピーーー!!」


 ピー、って何!?小饂飩さんか?っていうか、このオタク軍団は一体…?!

「それに加えて『チョビンツ』のセル画と、我らがアイドルの声優・林魔須美嬢の

デビューシングル『おちゃめなピーチパイ』
も付けるっピーーー!!」


 キモ!!つーか、本当に野球部なのか!?どこの学校だ!?

『私立 兄御田学園』

ほ、本物のアニメオタクだった…。


賞品にも砂の欠片程の良さも分からない。つーかいらない。



「「「2番!!」」」「「「2番!!」」」「「「2番!!」」」「「「「2番!!」」」」


 2番コールの中、キャプテンがゆっくりと箱に手を入れる。背中に緊張が見えた。

ステージの上から駆け足ぎみの足音が聞こえる。


ん?…足音?!


「テメーらうるせーぞ!!2番しか言えねーのか!!?」


 お猿君!!何ステージに上ってんのよ!!


「言われねーでも十二支は2番狙いだ!!華武を倒すのはオレ達だ!!

決勝だろーが!2回戦だろーが!関係ねぇんだよ!!!」

「…あ、あのヤロー…」

「また騒ぎを…」


 監督と虎鉄先輩の呟きに。


「行ってきます」


その言葉に続いて私もいつも付けてる指無し手袋を整え、壇上へと続く階段に足をかける。











「文句のある奴はかかってこいや!!

十二支高校野球部1年サード猿野天国が相手になってやるぜ!!」


「文句というより、恥さらしの片付けかな?」


猿野の後ろから声が聞こえる。


「…そッその声は…」

ぎこちなく体を後ろに向ける。

「猿野。お前はどれ程人に迷惑をかければ気が済む?」


そこには修羅のようなが立っていた。


ご、御奉行様!!いっいえ。そう言うわけでは…」


「だったら抽選会進行の邪魔をするな!!」


少し飛び上がり猿野の首に手刀を1つ落とす。


「グフッ!!」


猿野は膝をつき黙って痛みに耐える。


「司会と運営の人が可哀想だろうに。会場内の皆様お騒がせしました」


丁寧に頭を下げる。


『いえ、ご協力有難うございました』


アナウンスで返答される。


「いえいえ。さあ牛尾先輩パパっと引いちゃってください。

引かないんだったら私が引いちゃいますよ?」



先程とは打って変わった表情で牛尾に笑いかける。

会場内の球児達+αはその笑顔にやられた。





可愛い気!!さっき笑顔の瞬間撮った気(^▽^)b」

いつも持っているケータイがフラッシュで光る。

「先輩―。それ送って下さい」「録、印刷頼んだぞ」

すぐさま2人が反応してその画像ゲットに乗り出す。



ちゃーん。ビミョーにてんごく君とは違う意味で自分も会場乱してるよー」

 剣菱自身も良いものが見れたと喜んではいるのだが。



更に狼が増えるから止めてくれ…」

魁が額を手で隠す。

―。それは反則だってー。それ知ってるのは俺等だけで良いのになー」

由太郎は拗ねる様に言う。



他校の反応は様々だが、壇上の2人は気にせず話を続ける。





「じゃあ、我等が勝利の女神に運命を託そうか」


牛尾が一歩下がって前を空ける。


「勝利の女神って…本当に私が引くんですか?まぁいいか。では、行きます」


箱の中に手をいれる。2つのボールの感触。


私は、最初に触れた方のボールを掴み、取り出す。結果は。


「十二支高校、129番です」


満面の笑みで会場に見せるようにボールを肩ほどまで上げる。


「「でかした―――!!!」」


監督と虎鉄が喜びを分かち合うように抱き合う。


この時点で兄御田が2番に名前を収める。


あっ泣いてる。兄御田じゃ、1回戦も勝てそうにないから変わらないと思うけど…。


これで、最悪の事態は免れた。










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