#54 罪の発見
連れて行かれた先はグラウンド。
石坂は隅に鞄を降ろし、その中からグローブを取り出した。
「部長、どうしたんですか?」
「、バットは持ってるな?3球勝負だ。
思いっきり打て、少しストレス発散しろ」
マウンドに立つ石坂。はそれに答えて黒闇天を取り出した。
そして私は3球すべてを打ち返した。
1本はホームランで校舎2階のベランダに落ちていく。
だが、このピッチングは…。
「……部長、野球やってたんですか?」
これはやった事がある人の球だ。しかも強い。
野球部に入らなかったのが不思議なくらいだ。
「おお。中3の時まではエースピッチャーしてた。
だけど、練習中に大怪我をして、辞めざる終えなかった」
顔では笑っているが、当時はどれほど大変な思いをしたのだろう。
「、言いたい事は言っちまえ。俺位なら聞かれても何にもならねーよ」
だから、溜め込み過ぎんな。
野球部でも、家族でもないから言える事もある。
「部長、今日お猿君が退部したの…私はとやかく言える立場じゃないんです。
私も…中学の時途中で部活も、学校も辞めました。
お猿君と、同じ事をした。今、こうやって反対の立場にたって分かった。
私はあの時、一体何人の人間を裏切ってしまったんでしょう。
ずっと一緒にプレーした仲間に、簡単な理由だけ話して去ってしまった。
また試合をしようと約束した人もいた。私を、目の敵にしてた人もいた。
……そんな、私に目をかけてくれた人すべてを、
私は裏切ってしまったんだ」
今更…気付くなんて…。
「今、野球をしている。それも裏切りになってしまうのかな?」
レオハルトは、その中の1人だった。
「、それは…ソフトは人の為だけにやってるってことなのか?」
…フルフル。
首を横に振る。
チガウ。ソフトは、同性の仲間が欲しかった。
本気で話せる友達が出来たのは中学のソフトからだった。
「特にお前は郡を抜いて強かったんだよな?それなら尚更だろう。
確かに裏切られたと思った人間も沢山いただろう。
でもさ、はその罪に気が付いた。それで次のステップに進めるじゃんか。
お前は、ソフトと野球の違いは合っても、グラウンドに戻ってきたんだろう?
ソフトで出来ない事も、野球なら出来る事が沢山あるだろ?
女だから公式試合に出れないとしても、規定を変えられるかもしれない。
現に社会人の部の大会は女子の選手がいる。が先駆者になれよ。
それで、裏切りって思えた行為は、次に進む大切なステップに
変身するかもしれないぞ?」
自分が、悩んでることをプラスに帰る
その姿はいつもとは違った雰囲気で、その中に弱さと強さが交互に見え隠れしている。
「んでさ、は猿野とはまた違うと思うんだよな。
多分だけど、やる気とチャンスがあれば戻ってくるさ
はなりに、これからそれをどうするか考えろ」
「石坂部長。有難うございます」
なんか、この人には甘えてしまう。多分、雰囲気が、の父さんと似てるから。
この人は、ちょっと私に似てるから。
「ああ」
石坂部長はそれだけ言って、私の頭を優しく撫でた。
ゆっくり、子供をあやす様に、それは魁兄とユタと同じ暖かさを持っていた。
*
「…、何かベンチが騒がしくないか?」
用具も片付けて、帰ろうとした矢先、石坂がポツリと呟く。
「そうですね。行って見ますか?」
私達はベンチに近づく。
「監督、皆さん何かあったんですか?」
「あれー?もしかしてビミョーにちゃん?」
「剣菱さん?!」
そこには凪の兄、剣菱さんが立っていた。
「なんだ。の知り合いだったのか?」
石坂がきょとんとしながら言う。
「ええ。石坂部長。鳥居凪ちゃんのお兄さんですよ」
「ああ。あの子の…ん?鳥居?剣菱?もしかして、7Bのピッチャーの鳥居剣菱?」
「そうだよー。えーと君は?ついでにちゃんとの関係もビミョーに聞きたいかも」
なんでそこで私と部長の関係が入ってくる?
「ああ。俺は石坂友輝。文芸部の部長しててな、
は文芸部員でもあるから普通の先輩後輩だが」
あっもしかして俺、と付きあってると勘違いされた?
俺にとってはは可愛い後輩もしくは妹なんだけどなー。
しっかし牛尾を筆頭にに惚れる奴ドンドン増えるなー。
別に面白いからいいけど。
石坂は何気に人の感情を見抜くのが上手かった。
「へー、ちゃん兼部してるんだ。ビミョーに大変だねー」
「野球部の方が後に入りましたし。というより何でここに剣菱さんが?
凪は帰っちゃいましたよ?」
「えーそうなの?あっとそうだ。ちゃん。
凪とてんごくっていう奴の関係教えてくれる?」
「てんごく?ああ、天国。猿野ですか。いいですけど、急にどうしたんですか?」
「昨日凪とビミョーに遊んでたらあってさー。
なんかムカつく視線投げられてたから、
恋人っぽいコース色々回ってビミョーに遊んでたんだけどね〜」
思わぬ真実発覚。
「…、猿野って鳥居(凪)さんに惚れてるんだよな」
「ええ。どうやら、あれの勘違いですね」
あの馬鹿。どうせ凪と剣菱さんを見て、本当に恋人と思ったんだろう。
「剣菱さん、お願いがあるんですけど」
「んー?何?」
「あのですね…」
さて、チャンスは蒔いておいてやった。
帰ってくるかどうかは後はお前次第だ。
「鳥居(剣)。俺とは恋愛感情は無いけど、ライバルは多いぞー」
「諦めるつもりは全くないねー」
裏ではそんな会話が最後されていたりした。
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