#42 危険信号







いつも通りに朝の鍛錬をして、朝食をとる。

父さんも魁兄もユタも部活の朝練があるから同じ時間に家族全員が食べる。

いつも通りの1日の始まり。


しかし、突然新聞を読んでいた父さんが急に立ち上がった。


「お父さんどうしたの?」「親父、何かあったのか?」


私とユタが同時に同じ質問をする。


「母さん、テレビ点けてくれ。、コレを読め」


そう言って先程までお父さんが読んでいた新聞を渡される。

開いてあるページに目を落とすと……。

















『昨日の夕方、世界的に有名な元俳優でレオハルト財団の総取締り役。

女子ソフトボール界の王者、チーム『サンライズ』のオーナー。

ゼノン=レオハルトさんが日本に急遽来日しました。

空港で来日の理由を記者に聞かれるとレオハルトさんは

『ある少女を探しに来た』

と答えましたが、昨夜の記者会見で少女について語りました。そのVTRをどうぞ』






テレビから聞こえる淀みないアナウンサーの声。新聞の内容も同じ。





話が終ると同時に画面が切り替わり、そこには大勢の記者と数名の関係者、

金髪の美丈夫で30代前半のアメリカ男性が映し出された。


英語で答えているが下の字幕で内容を理解した。


『私は3年ほど前にアメリカの女子ソフト選抜チームと

日本の選抜チームの試合を観戦しました。

その日本のチームにいた、ある少女に大きな才能を感じ、スカウトに来日しました。

彼女は女子ソフト界ではブラックバタフライ――黒蝶――と

呼ばれていました。彼女に是非また会いたい。そのための来日です』


ここでVTRは切れ、元のスタジオに戻った。









『黒蝶とは誰の事なんでしょう』


隣のもう1人の男性アナウンサーに問いを投げかける。


『黒蝶は私立六龍中等学校にいたエースピッチャーで名ショート

だった女子生徒の確立が最有力…というかその子しかありえないでしょう』


『というと?』


確信した言葉にアナウンサーが説明を求めた。


『黒蝶は中学ソフトボール大会で最高ホームラン数39本。

これは1試合最低1本は必ずホームランを出している計算です。

プロでもココまで出来る選手はいませんよ。

世界での最高記録でもあると確認出来ています。


そして、日本選抜にも選ばれ、主力選手として活躍。

ジュニア国際試合で優勝した日本チームは過去この時のチームのみ。


ソフトボールで将来最も期待された選手でしたが、

2年生の新人戦を最後に姿を見せなくなりました。私もとても残念でしたね』



『凄い子がいたんですね。あっ。ゼノン=レオハルト氏が観戦したという

試合の映像を入手しました。ではご覧下さい』










 流されたのは私の中学1年の時、アメリカでの日米親善試合。


私がバッターボックスに立って打つ瞬間や

迦楼羅を使っているときの様子が映し出される。




アナウンサーはVTR終了後簡単に話をして次に話題に話を移した。


が、それでの気が収まる訳がない。




「日本のプライバシーは何処にいったー!!??」

「お、落ち着け!!!!」


急に立ち上がった私を魁兄が慌てて宥める。


でも、これ全国放送だよ?!人の経歴を許可なくバラしやがったよ!!


いや、そんなのこの祭どうでも良い。問題はあいつが、来てしまった事だ。


、大丈夫だ。今日は普通に学校にいけ」


お父さんは私の頭を撫でて、安心させるように言う。


「……うん」


あれは野球帽を目深に被ってるし、髪型も違う、他の人には分からない。


大丈夫、あいつは私が何処にいるのか知らない。来ないだろう。


そう自分に言い聞かせて私は家を出た。













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