#38 それぞれの発見
一人になった屑桐に、牛尾が近寄る。
「屑桐。君の球は中学時代に比べ、格段に進化していたね。今回は僕の完敗だ」
手を差し出す牛尾。
「大会の日まで、また一から精進し直す事にするよ」
「牛尾。悔しさという感情を持ち合わせているのなら…這い上がって来い」
華武のベンチへ帰り際。
「弱者を踏み越え、再び立つグラウンドの上で…オレに示してみろ。
十二支高校を選択した事の意味を」
「結局は牛尾先輩を認めてるんだよねー。屑桐さんはやっぱり悪役になりきれないよ」
その光景を少し離れたところで見ていたは心に溜まっていた
ヘドロのような気持ちが少し、雨と共に流れていくように感じた。
ベンチに戻ると御柳が、バッテリー・Aの二人に近づいていた。
「よお。イイ眺めだな」
むしろ、座っている二人を見下していた。
「なあ、奴の球はあれだけだったかよ?」
二人は……答えなかった。
「ミヤ〜〜〜〜!!!もう行くぞ\(?O′)/」
「ハイハイ、今行くっすよー」
朱牡丹と並んで、ベンチへ歩き出す。
「何だ、ミヤ。試合前もあのピッチャーと何か言ってたけど、友達気?(?_?)」
「まさか…あのヤローは昔の舎弟ってトコですかね」
「子分なわけ?にしちゃ、フレンドリーじゃんさ。あっ!取るなよ(>0<)」
朱牡丹の帽子を取り上げた。取り上げた帽子を被って。
「フレンドリーねぇ…」
ガムを膨らませた。
「は?」
「友情なんざ、いつか終わりが来るもんだろ。知ってたっすか?
"FRIEND"のスペルの最後も"END"ってんだ」
帽子の代わりグローブを乗せた朱牡丹が、半眼を向けた。
「何言ってんだ、お前(-_-;)」
「い…いいじゃねっすか、別に!」
自分で言った言葉が恥ずかしかった様で照れながら華武のベンチへ向う。
十二支全員が集合した。皆は泥だらけで傷だらけ。
「負けちまったなァ…まっ、良かったんじゃねぇか?
埼玉一の実力も、直接お触れ合いして分かったんだしな」
皆の顔は、やはり暗かった。
「この試合を通して、十二支に足りないものは何かって事と、
壁となって立ち塞がる大元の敵の強さも把握できた。
全員が十二分に機能すりゃあ、十分射程距離内の敵だ。大丈夫。
時には負けねば得られんものもある。これは負け惜しみでも何でもねぇぞ」
監督もこういう時はカッコイイんだね。
「結局、負けちまったんだな…俺達…」「奴らから、あんなにハンデもらったのに…」
打ちひしがれている賊軍は、暗い呟きを漏らし続ける。
「本大会ではそんなもんねーんだぞ…勝ち目はあるのかよ!」
「あの犬飼ですら、メッタメタに打ち込まれちまうなんて…」
「ケタが違いすぎるぜ!!」
「ヤベー!考えるほど、華武を倒すなんて夢のまた夢って感じだ!!」
「唯一塁に進んだだって公式試合には出られないんだぞ!!」
「ここで、諦めるのか?」
は、声を低くし、言葉を紡ぐ。
今、1番泥だらけなのは間違いなくだろう。
それでも、その姿は、そんなものは関係なく、惹きつける魅力がそこにはあった。
「ここで、諦めれば、そこで終了。
でも、諦めなければ、次を見つける可能性がある。猿野天国は良い例だ」
「……」
「私は、全身全霊でそれを信じてる。だから、諦めない」
ただ、冷めた視線を送るだけ。
「華武は、それが出来るからあんなに強いんだ。
でも、もがいてくれ、まだ諦めないでくれ。
それが、お前達の夢をかなえる道標になると信じてる」
皆の目には、いくらか光が戻ってきた。
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