#36 台風の目の発見





十二支ベンチには、一気に逆転ムードが漂った。



「よっしゃ〜〜セカンドまでいったぞ!」「あの球を打つなんてすげーよ!!」


良くやった!」「凄い凄い!!ちゃん打ったよ!!」

勝利の片鱗が見え、賊軍も歓声を上げる。兎丸が飛び跳ねた。


「うむ。気迫で打った也」

蛇神も嬉しそうに言う。

「まったく……君は人を驚かせるのが得意だね」

少々複雑な気持ちを抱えつつ、牛尾は微笑んだ。




ブォン ブォン



「なんだアイツ!あのバットの量は!!(@_@;」

猿野が、5本ものバットを持って素振りを始める。


「すごいングね…」

驚いている久芒の横で、御柳が呆然としていた。


「9回裏。3−4。6番、サード・猿野くん」



「オラいくぞ――!!!」

猿野が打席に立った。


「猿野天国!!せっかく見せ場を残してやったんだ。必ず打て!!」

はセカンドから叫ぶ。


「さあ、やろうぜ。卍での続きを」





屑桐は答えなかった。無言のまま、構える。



猿野は。タンタン、と足でリズムをとり始めた。


「いくぜ、司馬。今こそテメェの技、使わせてもらうぜ!

言われた本人の方を見れば。



『ヤダ!!断固断る!使うなエテ公!!』

現状を理解していない司馬の後ろに獅子川がそう書かれたボードを掲げていた。


「ダメなの!?酷い!あんまりだ!!」

と言いつつまだリズムをとり続ける猿野。

「見て司馬君!まーた兄ちゃんが人の技パクったよ!ジャロに訴えようよ!

「…(フルフル)」

司馬は頭を横に振る。

「み…見ろ!!リズムをとってるぞ!」

「あれは、カミソリカーブ攻略の時、司馬が使った…」

リズム打法。球が投げられた。


「何の曲でリズム計ってんだ?」

な〜みをチャプチャプ チャプチャプ かき分けてひょっこりひょーたんじーま  

ひょっこりひょうたんじ〜〜〜


何故にひょっこりひょうたん島!?


「まっ!!!」


フルスイング。


「ぬおっ!!」


バットの風圧に驚いた桜花。

ガシャン


球を後ろにそらした。


「フ…今宵のオレのバットは一味違うぜ」

「今は日中だ」


はセカンドからツッコミを入れる。

それを聞いていた萩之月は。


律儀にツッコミいれなくてもいいんじゃないのか?


とか思っていたりした。言ってやらないのはちょっとした優しさなんだろう。


「え〜〜、桜花のおやっさんが後ろに球そらすなんてめっずらし気〜(;^_^A)」


「あの6番バッターは卍の時にも一人でふざけてバットを外野までぶん投げた奴だ」

「それに、2軍を降ろすきっかけとなった、3点目のファーストへの打球だ。

余りのスピードに、ファーストの四方木は一歩も反応できなかった」


「どーすんだよ!こんなバカがラストバッターなんて!!」

「こんなふざけた奴に、埼玉一から点を取れる訳なかったな!」

「オイ!テメーら!」


猿野が賊軍を指さす。


「最後まで望みは捨てんな。腐んのは勝手だがよ、応援くらいよこしやがれよ」


うん。それには心から賛成だ。ずっと打ちしがれてちゃ、こっちのやる気も失せる。


「お、おう…悪かったよ」「かっとばせ!かっとばせ!猿野!!」

「かっとばせ!かっとばせ!!」「大爆笑!大爆笑!!猿野!!」


沢松!!その応援は何だ!?


「「大爆笑!!」」「「「大爆笑!!大爆笑!!大爆笑!!」」」


ワハハハ   アハハハ ヒャヒャヒャ



「「「「「大爆笑!!!」」」」」

ウヒャヒャ  場内大爆笑コールが…。


「猿野流 暗黒空手秘奥義"大爆掌"!!!」



どぱぁぁん



「ギャ〜〜〜〜〜〜!!!!」


猿野が沢松に攻撃を!!


「沢松の顔が打撲と内出血で腫れ上がってドドリアさんみたいな顔になってんぞ!!」

「また一人癒しちゃったわ☆」


殺しだよ!!!


「頼むぜ猿野!」「一発でかいのいったれ〜〜〜!!」


「任せとけ。よく言うだろ」


猿野が振り返る。


「野球は、9回裏、3アウトからだって!」


「それじゃ試合終わってるぞ」




賊軍がまた頭を抱えた。


「ずいぶんと仲間から好かれとるようじゃが、体がいくつあっても足らんのぉ

…まあ、これからせいぜい、がっかりさせん様にせにゃあの」


桜花が笑う。少しは認められたようだ。


「心配してくれて、どーーもあんがとさん。

だが生憎、オレはかなーり打たれ強いもんでね」



しょっちゅう死んでるしな。


「さしものSM嬢だって、オレをいじめ疲れて、土下座して泣き入れて来た位だ」


ありえない!!っつーか、お前はドコ行ってんだ!?


タンタン




猿野がリズムを刻みだす。


く〜〜〜もを すいすい すいすい 追い抜いて 
 
すい すい すい   ひょっこりひょうたんじ〜〜〜


「まっ!!」


ガキィィン



当たった。球は後ろのフェンスへ激突。


「ファ…ファール!」


華武の連中が黙った。


「あ、当てた〜〜〜!!」「猿野!行けるぞ〜〜!!」「ふんばれ〜〜〜!!」


賊軍の応援に、自分を指差す。


「任しとけってんだ、コノヤローー!!」


ホントに勘だけはいいんだよな。


草葉の陰から見守ってくれ」


「人を勝手に殺すな!!」



















NEXT