そうだ、これだ!!これこそ私が私である瞬間!!
屑桐無涯は今まででも最高峰の強者!!
今のは強さを湛え、どこか達観したその瞳。
百戦錬磨…国士無双と謳われた猛者を思わせた。
グラウンドにいるすべての人間が固唾を呑んでその光景を目に焼き付ける。
「ソフトボールの世界に突如舞い降り、
消え去った強く儚き漆黒の蝶。その力、拝見しよう」
お互いが構えた。ピッチャーとバッターの気迫がぶつかる。
五光が…投げられたその瞬間。
屑桐の目が見開かれる。五光を。
ガギィィィィィン
打った!!
「馬鹿な!?」「あの屑桐さんの球が!!」
打ったと同時にが走り出す。
球はかなりのスピードで飛んでファーストとセカンドの間へ。
セカンドが飛び出すが、届かない。久芒が球を追って走る。
その間にが1塁のベースを蹴った。
「抜けたーー!!!」「走れーー!!!」
フェンスに跳ね返った所に久芒が追いつき、バウンドしかけた所に突っ込む。
「捕らせない」
の声と同時に球が…跳ねた。
「イレギュラーバウンド!!?」「まさか、読んでいたのか!?」
それでもギリギリで取ってセカンドへ送球するが、
その時にはすでにセカンドに辿り着いていた。
「セーフ!!」
愕然とする久芒とセカンドの萩之月。
いや、グラウンドすべての人間がその力に驚愕を余儀なくされる。
「ふう。間に合ったか」
が安堵のため息を漏らす。
落ち込み気味の久芒が定位置に戻ってきた。
「珍しいっスね〜〜、先輩が失敗するなんて」
「みっともな゛いング…」
「ほほほ…は想像以上のものを見せてくれる故。愉快、愉快。
すでに女子の力量をとうに超えている故」
褒め称えているのか、驚いているのか、
呆れているのか、面白がっているのか
多分、全部なのだろう。
「御柳より使えりングな」
鼻をかんで、ティッシュをポケットにしまった久芒。
「ひどいっすよ、それ!!」
頬の代わりに、ガムを膨らませ、屑桐に視線を向ける。唇の端で笑っていた。
打たれても、新しい強者に会えたのが嬉しいのだろう。
「その顔、キモイング」
つられて笑っていたらしく、久芒に笑われた御柳。
「ひど!!」
でも、が本塁に戻る事はない。
それを確信しているから今冗談が言えているのだろう。
「猿野、必ず打て」
それを信じるしか今の私には出来ない。
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