#24 4回裏
回は進み、4回裏。十二支の2巡目の攻撃。
「3番、ショート・蛇神くん」
「頼みますZe!蛇神さん!!」「念仏打法でホームランだよ!!」
牛尾は、何も言わなかった。
朱牡丹がパソコンを見つつ、呆れた。
「相変わらずスゲェバットだな(-_-;) ヤレヤレ、あんな体勢で打てるワケ?」
「ハッ…木のバットか。よっぽどミートに自信があんのかね」
立ち直った御柳は新しいガムを噛み始める。
球が投げられた。
先の回…沈む球道にしてやられたが最早その球、見切った也。
打った。
「ライト線ッ!!」「いい当たりですよ!!」
ファーストミットは、僅かにボールに届かない。
ボールが跳ねながら、フェンスへ飛んでいく。
「ついに超えた〜〜!!ヒットヒット!!」「よっしゃーー!!長打コースだ〜〜!!」
「外野はいねーぞ!回れ回れ〜〜!!」
だが。
「バッターランナーが一塁ストップ!?」
蛇神は、1塁から動こうとしなかった。
「な…何で回んねぇんだよ蛇神!!今のは余裕で3塁行けただろ!?」
これが。この半限野球に対する、先輩達の答え。
「4番、ライト・牛尾くん」
「頑張ってください牛尾先輩」
「行って来るよ、君」
に笑いかけ、バッターボックスに立つ牛尾。
「1つ訊く。君達はこの試合、楽しめているのか?本当に野球を愛しているのかい」
「ハァ?」
2軍が呆れた。素で聞かれちゃあ現役高校生の反応は大抵こうだろう。
「何言ってんだコイツ。『愛してるのか』だってよ」
「テメーらと同じルールでやってたら差がつき過ぎてつまんねーんだよ!」
「まあ、楽しくはやってんぜ〜。テメーらをいたぶる事をだけどな!」
「…だそうだが。で…だからどーしたよ?キャプテンさん」
あーあ。怒らしちゃった。師仙さん後悔するよ。
「…そうか。試合を続けよう」
「N…牛尾さんどーしたんDa?」「あげん言われても黙っとーこたなかよっ!」
「あいつマジだな。何かやらかすぜ」
「そっすね。俺等の特訓してる時だって優しかったには優しかったけど…」
野球を心底愛しているからこそ。
野球に厳しく、何よりも、自分に厳しい人を…貴方達は、怒らせてしまった。
「牛尾。お前の言う事はもっともだ。
しかしプレイヤーならば、グラウンドでの主義主張は全て
…だからこそ、そのバットで語ってみろ」
投げられた。ピッチャーが笑う。
打った!!
球は…フェンスを越えた。
「入った〜〜!!突き刺さった〜〜!!2ランホームラン!!」
牛尾・蛇神がホームイン。牛尾が十字架に口づけた。
「ナイス!キャプテン!!カッコイイ〜〜!!」
「終にスクリューを打ち崩しましたね!!」
「この調子でガンガン攻めまくるっつぇ〜!!」
「皆、後は頼んだよ」
牛尾はヘルメットを取ってベンチに帰ってきた。
「お〜〜い!!皆やってっか〜!」「応援しに来てやったぞ〜〜!!」
この時点で賊軍登場。
「スコアボード見てみろよ!」「スゲ〜〜!マジで華武に勝ってるよ!!」
「十二支スゲーぞ!」
ハンデありまくりだけどね。
「次あたりボクちんの打席だから、かる〜く満塁ホームランでも「満塁じゃないから」
「この世にお前に期待してる奴なんか一人もいねーよ。でも応援してるぞ〜〜!」
「いや、タンザニアのあたりに3人だけいるかな〜〜。がんばれ〜!!」
「お前のせいでオレの人生メチャクチャだ。かっとばせ〜!猿野〜!」
心の声がそのまま出てるよ!!
「いや〜、お前皆からほんと愛されちゃってんな〜〜。よっ!
この逆カリスマ!いや〜〜、華武のグラウンドは広いな。
こりゃ新宿ロフト何個分か?いや原宿ルイード何個分か?」
いつの間にか沢松君もいた!!元の大きさが分かんないよ!!
「テメーら目ぇかっぱじってよーく見てろよ!」
目じゃなくて耳でしょ。それじゃ目潰しだ。
私だってさすがに目潰しと金的は外してるからなー。
「次はオレが超弩級の満塁弾かましたるわ!!」
「だから次はお前じゃねぇZe。ったく、せっかちBOYだNa」
後頭部にバットを当てられて振り向く猿野。
「……あ、マリファナ先輩」
「テメーいつからそんな呼び方してんだYo!!」
マリファナって…麻薬じゃない。これは嫌だろうなー。
「5番、ファースト・虎鉄君」
「次はそのスクリュー、オレの"V"がお相手するZe!」
「……へぇ〜。だから?」
「さっきのホームラン効いたみたいですよ」
「あれでか?」
「最初、詰まってましたから」
華武は怖い顔で表情が分り難そうに思えるけどそうでもないんだよね。
「これ八手。帥仙へ伝令を」
菖蒲からの言伝が、ピッチャーに伝えられた。
「帥仙さん。監督からです」
「・・・・・・」
「"八陣守備"を敷けと…何としても失点を抑えよとのお達しです」
師仙が指を鳴らした。
「プレイ!」
投げられた。スクリューじゃない、普通の球。
「ストライ〜〜ク!!」
2球目。やっぱりスクリューじゃない。
「ストライクツー!!」
ピッチャーが構えた。同時に内野手が動き出す。球はスクリュー。
「虎鉄っ!!これは罠たい!!」
ダメだ。敵の決め球を打つ事にこだわるあの人じゃ…打った。
「いった〜〜!!」「よっしゃ〜〜!虎鉄〜〜!!」
華武の面々はあくまで冷静だった。
「兵法・八陣の一!」
菖蒲監督の軍配が指す先には。
「鶴翼の陣!!」
内野手が外野まで来ていた。
「アウトーー!!スリーアウトチェーーンジ!!」
虎鉄が歯噛みする。
「予め虎鉄の狙い球をスクリューと判断してわざと打たせ
投球の瞬間、内野陣を外に移動させたのか。
虎鉄の性質を分かっていなければ出来ん芸当だ」
「そうですね。打席が多い分攻撃のチャンスは増えても
敵にこちらの癖や能力を研究させる機会を与えた事になります。
そして、こちらが敵を研究する機会は減らされた」
菖蒲が面の下で笑っている気がした。
「野球…即ち戦。兵法を制する者が試合を制する故」
きっと今の世が戦国だったら菖蒲監督の軍隊は随分勝ち進んだであろう。
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