#25 5回表
華武の攻撃。
犬飼の球もそろそろ読まれ始める頃。投げられた球種は、蛟竜。
「ここだ〜〜!!!」
打たれた。
「いい当たりだ〜〜〜!!サード!」
「お猿君!!成果を見せなさい!!」
捕った。猿野が捕れるとは露も思わなかった十二支は歓声をあげる。
「止めたぞ〜〜!!」「猿野でかした!!」「ハハハ、捕れた…」
「ボサッとすんなバカお猿!!」
「ねえ見た?今のオレの超美技!」
「いいから早くファーストへ投げろ!!」
その間に。
「セーフ!!」
「猿野君、後でケツトンボ1000回ね」「お手伝いします牛尾先輩」
隣に座っている監督が猿野の今後を考えて冷や汗を流す。
猿野が犬飼に駆け寄る。
「やいコゲ犬!何ヒョロヒョロした球投げてんだ!
すげー球ビュンビュン飛んで来るぞ!オイ!」
「ヤレヤレ、お前の所に飛んだ時点でヒット確定だ」
「何だとテメェ!!元はといえばテメーのせいだろうが!!
次打たれたらマジで交代すんぞコラ!!」
「元から期待なんかしてねぇ。オレ一人で奴らを抑えてやる」
ああ…ケンカが始まった…。もう何回目か分からないよ。
犬飼が投げた。打たれる!!
「三遊間!!」
猿野の方へ飛んだ球に蛇神が飛びつく。
「司馬殿!!」
体は浮いたまま、上体を思いっきり下げて投げた。
「あの体勢から!?」
司馬が捕って、塁を踏む。
「アウト〜〜!!」
さらに、ファーストへ送球。
「HAHAH〜N、ストライクだZe」
「アウト〜〜!!」
「うし、ゲッツーだ!!ナイス連携プレイ!!」
思わずは立ち上がる。初めて試合で見せる連携。
練習の甲斐はあったな。皆が犬飼に近寄った。
「犬飼殿。打たれる事を恐れるな。我らが点にはさせぬ」
犬君は…少し照れているように見えた。
5回裏。
フォアボールで、7番・辰羅川が。デットボールで、9番・司馬が出塁。
しかし、1番・兎丸の三振で得点には至らなかった。
半限ルールにより続く、6回裏。
このルールだと6アウト制だったが、牛尾の猛抗議によりランナーリセット。
ノーアウトランナー無しの状態から始まった。
「2番、レフト・猪里ちゃん」
ちゃん付け!?今、先輩達がアナウンスやってるんだよね?!
ってことは夜摩狐先輩か桃坂先輩あたりか?!
「さあ、そろそろあの守備ば突破しちゃろーかね」
今の無視ですか!?猪里先輩!!
球が投げられた。得意のバント。
「魚鱗の陣!」
ファースト以外の内野が全員来た。セーフティバントを読んでいた…?
「アウト〜〜!!」
「3番、ショート・蛇神くん」
蛇神が、バッターボックスに立つ。
ピッチャーが投げると同時に菖蒲監督が合図を送った。
「臥龍の陣!」
球は外角。
「ストライーク!!」
普通のバッターなら、流すのが精一杯。方向はファーストに限られるだろう。
だからこそ、そちら側への守備を固める。
"八陣守備"
予測を立ててそこへ導く布陣。
けど、蛇神先輩ならこれを破れるハズだ。蛇神先輩の六道眼なら。
「あ、あれって!」「蛇神さんが開眼したZe!!」
諸行無常・・・ 一切の物事は 絶え間なく変わり行き
滅び行くが 世の理 我 無想の境地に至れり
色不異空 空不異色
色即是空 空即是色
有為転変
打った。
「引っ張った―――!!!」
動揺する華武。球の飛んだ方向は。サード側。
「抜けた〜〜!!ファースト寄りの間隙を突く一撃〜〜!!」
「すげ〜〜。開眼した蛇神さんは神だぜ」「つづけつづけ〜〜!」
通常より長いバットによる、左右打ち分けの広角打法。
敵の裏をかいた、流しから引っ張りへのスイッチ。
続く牛尾も、絶妙のバッティングを披露。1塁・2塁のチャンスを広げた。
だが、5番・虎鉄はダイバースクリューを捕らえるものの。
再び八陣守備の毒牙にかかってしまった。
6番は、サード・猿野。
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