#21 試合開始。
「1回表、華武高校の攻撃です。1番ライト・独民くん。プレイ!」
「今日の先発、鹿目じゃねぇのか…。相手は華武だぞ。あいつそんなにすげーのか?」
あ、そうか。獅子川先輩は1年vs2・3年の時いなかったもんね。
「犬君はレギュラー争いの試合、クリーンナップの三連続三振でデビューを飾ってますよ」
「何ッ!?あの牛尾と蛇神を?手加減でもしたんじゃねッか!?」
「ま、見てれば分かるんじゃないですか?」
投げた。速いストレート。だが。
ギィィイン
「まさか!?」「でかいぞ!!」「犬飼くんの球が…!!」
球は、ライト側の線の横を通ってフェンスを越えた。
「ファール!!」
「チッ。大した事ねーな」
「マジかよ…初見から犬飼の直球があっさり打たれるなんて…」
「オイオイ、あいつらホントに2軍なのかよ!?」
もう一度ストレート。
「しゃらくせぇ!!」
さらに芯に近い部分で打った。球は後ろのフェンスにぶつかる。
「ファール!!」
さっきよりタイミングが合っている。
「ほお、バットをへし折る強打は伊達じゃない様だな」
「ええ。他校なら1軍の実力です」
この前の試合は圧倒的すぎて、分かり難かったけど。
「2軍でこれだ。その上に控える1軍は、
下位打線でも他校の4番に匹敵する実力があると言うじゃねぇか…」
「……の割には楽しそうですよ。まったく、野球部の監督は一般人が見受けられませんね」
「……自分の親父も入ってるのも忘れるなよ」
ある意味お前もだが。
「お義父さんを普通だと考えるのは至難の業ですよ。
ま、犬君がこのまんまやられっぱなしって事はないでしょ?これから来ますよ」
練習の時見せてくれたあれ。あれは2軍では攻略は難しいだろう。
犬君が投げた。ストレート?
いや、違うね、ストレートに見えるけど、あれは…。
「マズい!タイミングがピッタリだ!」「犬飼でも抑えられねぇのかよ!!」
球が当たる直前に……曲がった。
「何〜〜!!つまった!?」「ピッチャーフライか!」
犬飼は一歩も動かずに球を捕る。
「アウト〜〜!!」
「スライダーか!?変化球にしちゃ速すぎるぜ」
「いや…アレを見ろ」
屑桐に促されて、独民のバットを見る。
正確にはビリビリという音をたてて切れていくグリップテープを。
「!!ただの変化球じゃねーぞ!!」
「間違いない。あれは現代の魔球と言われている…」
「"カットファストボール"…か。えらいモンを習得したな」
「私も見た時は驚いたよ。変化球とも直球ともつかないファストボールの一種で
日本でストレートって呼ばれる球はアメリカではファストボールって呼ばれてる。
日本では、ボールに綺麗なバックスピンをかけるのが理想だとされてる。けど…」
次のバッターも詰まった。
「アメリカでは、とにかく打ちにくい強力な球なら、時には型に拘らない。
そうやって生まれたのが、直球のスピードで変化を起こす"ファストボール"」
が説明を終えるが獅子川は驚きを隠せない。
「そんな事できんのかよ!?」
「…ボールの握り方に特徴があるのだ」
鹿目が、球を握って見せた。
「球の握り方は2つある。一つ目は『4シーム』縫い目に対し、
人差し指と中指を垂直にかける。投げると1回転で4箇所の縫い目で空気をかくので
強いバックスピンがかかる。もう一つが「2シーム」。
縫い目に対し、2本指は平行にかける『4シーム』に対しこちらは1回転で
2箇所の縫い目でしか空気をかけないので、微妙な変化がかかるのだ」
「日本では、4シームが普通のストレートの握り方だよ」
さらに、次のバッターも詰まる。
「あの球は2シームファストボールの内、最も習得・攻略共に困難と言われている
"カットファストボール"…」
犬飼が、球を捕った。
「アウトーー!!スリーアウトチェーンジ!!」
「現代最後の魔球と言われているのだ」
うわー私も挑戦したいな。後で頼もうかな。
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