#20 半限野球通告







引っ張られて帰ってきた犬飼-は、何があったのか知りたがる皆に詰め寄られる事になった。

だが、頑として口を開こうとはしない。


時間も押してきたので、華武のグラウンドへ向かった。

















「これが華武高校の野球部専用グラウンドか」

「うわ〜〜!!広―――い!!すっご――!!!」

「もう頭きた!二度とここの土が踏めない様、一面にドミノを並べてやれ!」

「止めなさい!!」


しばらく待ったが、華武が現れる気配はない。






「ったく、華武のヤローはまだか?」


「十二支の皆様、大変お待たせ致しました故」

 この独特の喋り方は……。

冷や汗をたらしながら振り返ると。


「な…何だ、あん監督は!?戦国武将や?それに、お面!?」

「こいつぁ、一際ファンキーだZe!」

はこの間ぶり故」


「こんにちは菖蒲監督。この前は禄に挨拶もせず、帰ってしまって大変失礼いたしました」


「先日はこちらの話も急なものだった故、おあいこ故。ほほほ」


軍配で口元を隠しながら笑う。

「いやー、こちらこそ。突然の練習試合のお誘いに乗って頂きまして

我々の方から馳せ参じてまいりました。本日は是非、埼玉の雄である華武さんに

胸を貸して頂きたく思います」


監督が手を差し出す。


「胸を…?それは少し違いますな。本日の試合、
我々の方が実験を兼ねさせて頂く故に」


握手を交わすはずの手は無視された。


「正味な話、今の貴校と当たりましても、先日の卍高校と同様我々の圧勝
…こうまで結果が判りきっている様ではわざわざ試合を行っても我々の利点が見えぬ故」


やっぱり根に持っているんじゃないの。

「何てモノの言い草だ!」「オレ達と戦っても、何の得にもならないって言うのかよ…!」


「いや〜〜いきなり本質ズバリのご指摘を…。その通りです。

今の我々では、到底あなた方には太刀打ちできんでしょうなあ」


監督、腰引く過ぎませんか?

確かにその通りであって何も言えないのも真実ですけど。


「結果が大方確定しておる試合も興が削げるというもの」


菖蒲監督が、点数の書かれていないスコアボードを軽く叩く。


「そこで、両チームの戦力差を埋め…貴校が我が校と対等に渡り合える特別ルール…」


 何処からともなく八手さんが現れチョークで華武イニングの偶数に×を書いていく。


「何だ、あれは…?」「華武の攻撃イニング半分が消えとーぜ!!」


「この通り、我々は"半限野球"を提案する故」


「半限野球!?」

これにはさすがに動揺するレギュラー陣。




「推定では、我々は貴校の倍以上の力を有する故。従って、我々は全ての戦力を半限する。

その一項・我々のチームの攻撃イニングの半限」


 って事は、華武の攻撃は。1・3・5・7・9の五回だけ、か。




「その二項・我々のチームの守備範囲の半限。

我々は、内野手6人だけで守備布陣を敷く。その三項・ストライクゾーンの半限。

そして四項・選手力半限。貴校をお相手するのは、この2軍の選手達故





「なっ・・・何だよそれ〜!!ムカツく〜〜!!!」

「オイオーーイ!2軍っていくら何でもナメすぎだRo!?」


「勿論、ご理解頂けぬのであれば無理して試合をなさらずとも良き故。

遠路はるばるご苦労様でした。お引取り下さい」


菖蒲監督がお辞儀をする。


「あ〜〜、お待ち下さい。分かりました。何か随分と気を使って頂いちまって、

これでようやく対等に戦えそうですよ。よろしくお願いします」


「監督さんよー!アンタ、プライドはねぇんですKaい!?」

「オイ、あっちを見てみろ」



声に誘われ見た先は華武のベンチ。そしてそこには華武の1軍メンバー。


やるなら引き出してみろってとこかな。


「こんなハンデで負けるなんてありえねぇ!たっぷり泣かしてやろーぜ!!」

「ぜってー勝とうぜ!!」

「うん!ぼくの足で引っ掻き回してやるからね!」

「Hey!2軍なんかに引けをとっちゃいらんねーZe!!」


 全員、やる気満々。そうこなくっちゃ。












「監督!僕を先発でいかせて欲しいのだ!無糧道と戦えなくなったのはこいつらのせいなのだ!

せめてこの試合であいつの仇を討ってやるのだ!!」


卍戦前と同じく必死の鹿目。


「弔い合戦という訳か…ふむ…」

だが、犬飼が鹿目の頭を押しやった。


「この試合はオレが…奴らを一人残らずぶっ潰してやる…」


「犬飼!お前何勝手な事ぬかしてるのだ!先に言ったのは僕……」


じたばたする鹿目。だが手も足も犬飼に届いていない。


「スンマセン。見逃して下さい」


「どうする監督?」


「……分かった犬飼。この試合はお前に任せよう」


「ウスッ!」





















「んだ〜〜、どいつもこいつもパッとしねぇな。おもいっくそ2軍ヅラしやがって…」


まだ納得のいかない猿野は2軍のを眺めながら毒付くが。


「オイ そこの猿。テメーこそ雑魚面下げて謳ってんだオラ」

とライトの独民が言い返す。


「誰が雑魚ヅラだ!俺はスター面で仏面だ!」

「雑魚ヅラの上にキモヅラだな…プッ」


犬飼がその話を聞きながらまた猿野を煽る。


「テンメーー!!」


 ああ、またケンカが始まった…。


「テメーらごときが華武と戦えるだけ有難いと思えよ、雑魚集団が」


 あ、お猿君がキレた。


「テメーらそこ並べや!2軍のくせして無礼だぞコラ!!

後でぜってぇ泣かしてやんからな!!」


「だから止めろって言ってるでしょ!!」


猿野のこめかみに拳をいれる。


「ブホッ!!」


「お猿君運んで黙らせておいてね」


皆は猿野を担いでベンチへ戻る。


ご苦労様です。


「皆さんウチの部員が大変失礼しました」


2軍の方々に頭を下げる。私この頃頭下げてばっかだよ。


「……さん、マジで華武に来た方がいいんじゃない?」

「あれは、流石にねぇだろ」


墨蓮と帥仙がに言う。それはそうだけどね。


「でも、彼等のお陰で私は又グラウンドに戻って来れましたから。

見捨てられないですよ。それに、ウチを甘く見てると痛い目に合いますよ?」

私の時みたいにね。

「……そうか、もったいねぇこった」

そして、両校ベンチに戻る。




















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