#06 音瓶高校
次の日、新生十二支の初の対外試合の朝がやって来た。
今の私の格好は皆と同じユニフォームにさらしをまいて胸を潰し、
黒の野球帽を深く被っている。
出席確認をしているとまだ出席の○が付いていないのが2人。
「監督。サードの2名がまだ来ていません!」
「ったくあの馬鹿共は…首に縄くくって引っ張ってこなきゃならんのか
…最大のチャンスをくれてやったというのに後3分か。
最悪の場合…村中がサードをやれ」
やった!!
その言葉に素直に喜ぶが。
「その心配にゃ及ばんぜっ!!待たせたな野郎共〜」
「兄貴ィ〜〜!!」
馬を走らせ、獅子川がやってきた。
「くそしくじった…俺は、もう駄目だっ!
ここへ来る途中でやられちまった…」
何にやられたんだ?
「幌馬車強盗からこの馬車を守る最適のライフルに…」
「あんた何処からやって来たんDa!?」
「俺か…俺は放浪の旅人は人は誰しも幸せを探求する旅人のような者さ
…人は何処から来て何処へ行くのかっ…俺の実家は、
そこの角にあるアパートさっ!今年で築25年になる」
「歩いてこいYo!」
まったくだ。
「来い野郎共!俺のアッツイもんを喰らわしてやるっ!」
「何を喰らわす気だよ!?」「猿野がまだ来てねぇんだ」
「あの馬鹿の事だ。途中でトラックに轢かれて死んでるぜ!」「寝坊だと思う」
それぞれ様々な意見の飛び交う中、どこからともなく声が聞こえてきた。
「待たせたな、皆の衆。山を越え、谷を越え、おばけ怖ぇ〜!
僕らの都市にやってきたぜ!僕は21世紀からやってきたんだ!」
ガチャっと音がする。いつの間にか存在していた扉から猿野が出てきた。
どこでもドアから出てきた(!?)
「僕は未来のロボットこれは未来からの贈り物さ…」
ゴソゴソとズボンを弄ると。
「ポケベル〜〜」
出てきたのは『アイシテルv』と打たれた
一世代前の遺物、ポケベル。
めっさ懐かしい。
「もう、誰も使ってねぇよ!」
「これね〜文字が最大12文字まで送れるんだ凄いでしょ〜」
「携帯あんならそっちでメールしろや」
朝っぱらから疲れるよ。子津君いないから皆が代わりにツッコミしなくちゃだし。
今は代わりに獅子川先輩がやってくれてるけど…子津君あんた凄いよ。
よくこれにいつも付いていけるね。
「牛尾先輩、わ…俺、子津君が本当に凄いと思えて来ました」
「同感だよ村中君」
+*+*+*
学校に入ったら、面白可笑しい風景が広がっていた。
「あ…あのよッさっきから気になってたんだがこの学校って…眼鏡ばっかじゃん」
「そうここの校風は『曇りなき眼鏡は世を見通す』という事だからね」
変な学校は十二支と黒選だけじゃなかったんだ。メガネジャンプは私も気になるな〜。
+*+*+*
「両校整列!」
ついに試合が始まる。私が出るのは前半3回までのサード6番。
「やっぱりメガネばっかりだ〜」「さりげに1人チャパ王みたいなの混じってるし!」
「この学校だけでメガネの展覧会出来そうっすね」
監督同士が握手を交わす。
「いやいや今日はアレで何よりですな。態々我が校までアレして頂いて、
やはりアレかね。我が校のアレっぷりに君達のアレもアレしっぱなしかね…」
絶え間なく喋り続ける大正監督。
電話で話していたときもアレが多くて分かり難かった。
「は…はぁ…本日は我が校から試合をお願いしましたので、
そちらへ赴くのは当然の事ですよ」
コッチに来ないって聞いてぶーたれてたのは誰だよ。
「何分新たに赴任したばかりで、右も左も分からぬ若輩者ですので、
本日は胸をお借りします」
「ははは、そうか。うちの連中はアレだからね
精々君達十二支もアレしたまえよ。まぁ今日はアレでよろしく頼むよ」
望むところさ。
「互いに礼!」
「「「「「「シャースッ!!!」」」」」」」
「にしても、気持ち悪ぃ学校だな。右も左もメガネメガネメガネメガネ・・・」
「そいつは聞き捨てならないね・・君達は様式美メガネの偉大さが分からないのかい…」
相手校の奴等がやってきた。
「このレンズ越しに映る世界の美しさと来たら、
どんな絶世の美女もショボイこそ泥に見えるよ」
「それ度が合ってねぇだろ!」
「そして、この私のメガネよくなくな〜い?」
良くないよ。
「あのメガネの配置フォルム。どれをとっても1級品ですね。」
「あんな素敵めがね見た事ありません…」
「マジで!?」
辰君に凪、それ本気なの?
「精々馬鹿にしてるがいい…後で君達全員に負けメガネをプレゼントしよう。
コンタクトは邪道だ!NONメガネ人は事実がぼやけて見えていないな!
だから、力の差もわきまえず十二支なんかが遠征に来るんだな!」
あ、ムカつく。大体の高校がこんな態度で対応して
いたから感情押さえて話すの大変だったんだぞ。
「メガネ軍団め・・・後で片っ端からそのメガネぶち割ってやる」
何故か、この学校に来てから心が落ち着く故郷のような…
そこのメガネ集団!!和まないで!!
一宮先輩いたら仲間入りしそうな気がするよ!!
「1番センター兎丸君」
「プレイ!」
ズバァン
「ストライ〜ク!」
「私の球よくなくな〜い?」
う〜ん悪くはないけど…うち等には物足りないってところだな。
現にウサギ君はまったく慌ててない。
「よう、天国。試合どうなってるよ…」「牛尾様達はどうなってますの?」
「あ〜沢松君に梅星先輩。ご苦労様っす」
帽子を外さないで2人に挨拶する。
「…もしかして、か?」
沢松が半信半疑で聞いてきた。
「あったりー。ここでは俺の名前は村中でよろしく」
「みんな〜応援に来たっすよ!」
賊軍の人達も音瓶高に到着。役者は揃ったな。後は暴れるだけだ。
*
キィィィン
「十二支1回に猛打爆発!4連打で早くも2点先取です!」
「大正監督。最後まで胸を貸してもらいますよ・・・作戦名『萩30万石』
…お言葉に甘えて、あんた等には十二支復活の礎となっていただきましょう」
「6番サード村中君」
「別紅!!そんな女みたいな体格の奴なんてのしちまえ!!」
そうはいかないさ。
キイイィィィン。
「ホームラン!!」
ちょろいね。
「またいった〜!十二支打線とまらねぇ〜」
「強いですわ・・・十二支は完璧に生まれ変わったんですのよ!」「すげぇ」
「別紅流れを止めろ!!」
「ふざけろよ…こんなに打ち込みやがって…よくなくねぇ…よくなくねぇよ!」
「止まらんよ。十二支はこのまま甲子園まで突っ走る!
作戦名『萩30万石』30得点叩き出すまで打って打って撃ちまくれ」
「十二支打線猛打爆発5回にして15得点!」
「めでてぇめでてぇ!祭りだ祭りだ。今日は新生十二支の記念すべき初陣だ!
初得点より5得点刻みで褒美を取らすぞ!次は20得点だ!」
でも、弱すぎて不燃焼で私の出番は終ったよ。
にしても…桃坂先輩、栗尾先輩、そのバニーガールは何ですか?!
「次は交代です。6番サード村中君から猿野君。6番サード猿野君」
「監督舞い上がってるっすね・・酔っ払ってるんじゃ…」
「祭りじゃ祭りじゃ!行け〜十二支!打て〜猿野!
景気よくドでかいの花火ドカ〜ンと打ち上げろ!」
「男の祭りじゃ〜!」「早っく打席にたてやっ!」
「おら〜メガネ軍団片っ端からそのメガネクリン●ューで
曇り止めかけてからぶち割ってやる!!」
猿野の手にあるのは、兎丸だった。
「わ゙〜そのバット兎丸君そのバット兎丸君!」
「あ゙〜バットなんてめんどくせ〜蹴り返してやる!!」
猿野は本当に足を使った。当然当たるはずもない。
「ストライ〜クバッターアウ!」
「あれ〜祭り終了?急に切ないんだけど」
「お前はしゃぎすぎだ!」
ドガァ「ぼへっ!」
鳩尾に膝蹴りが見事に入った。
「お祭り野球かよ!無茶苦茶しやがって!」「十二支ってこんなに強かったのか!」
「あんな奴等に負けてたまるか。わし等もあれだメガネ祭りだ。
メガネのずれは心のずれメガネを激しく上げ下げしろ!」
誤算だ。侮っていた。
このチームは明らかに昨年までのアレとは違う!特筆すべきは…守備力!
「虎鉄君!」バシッ
「アウト〜ッ」
ギィィン
「いった〜センター前!」「今度こそ初ヒットだ!」
ダダッ
「間に合わねぇ!此処は深追いせずワンバンでとれ!
下手踏むと長打になっちまうぞ!」
「ジョーダンこんなの十分僕の守備範囲内だよ」
ズダッ パシッ
いいぞ…ミスを恐れるなどんな場面でも攻めて攻めて行け。
「サード行ったぞ!」「やべ〜猿野だ!!」
「今年の十二支は一味違うぜ。何せ、サードには鉄壁の
守備ならぬ、鉄尻の守備があるからな!!」
ボプッ??!!
「ケツで止めた〜?!!」
あのボール、もう触りたくない。
「セーフ」
十二支のワンサイドゲームで回は進み9回表1アウト
「遂にリーチだな。記念すべき30得点目は誰だ?」
「5番ファースト虎鉄君」
「みんな悪いNa!美味しい所を俺が掻っ攫っちまって…」
「何言ってんすか勝負っすよ!」
お猿君が虎鉄先輩に突っかかっていったので、
きっと良い事は起こらないだろうと思った。
結局、虎鉄先輩はレフトフライとなった。
「6番サード猿野君」
「やはり運命は俺を選んでしまうものだな!」
「ここまで、猿野の成績は7−0で7三振3エラー…こりゃ外したかな…」
「だったら俺にもっとやれせてくれれば良いじゃないっすか」
男言葉で抗議する。
「プレイ!」
散々ふざけてくれたな。何が30得点?。そんなのよくなくねぇ。
お前が最後、お前がブレーキになってんだよ。さっきの黒帽子の方が断然上だろう!!
「メガネカーブ!」
クソッ今まで全三振。此処で打たなきゃマジお荷物だ。
カーブなら、うちのほっぺ先輩のほうが、百倍凄かったぜ。
キイィィィン
「いった〜入った〜ソロホームランこれで30点到達だ!!」
まさに爆弾打線。一度火がついたら、止まる事を知らない。
ズドォン
「ストライークバッターアウト!」
「監督。これで13三振です…」
「何なのだ…あの投手は・・・」
バシッ ズバァン
「ストライクツー」
「あと1球あと1球!」
犬飼君、ウイニングショットはあの球で行きましょう。
…サインを受けた犬飼はコクと頷く。
ズドォォォォォォ
「ストライクバッターアウッ!ゲームセット!」
「完璧です。犬飼君。遂に完成しましたね。
残されたノートに記された4大秘球のうちまずは1つ目。
第一の超剛球。蛟竜」
「うぉっしゃ〜勝ったぞ〜」「すげぇ魔球だな犬飼!」
「すっごいや犬飼君。いつの間にあんな凄い魔球覚えたの?
今度僕にも投げてよ」
「犬飼君この前は今の球見せてはくれなかったね。捻挫していたからかな?」
牛尾先輩が嬉しそうに犬君に話しかける。
「主将…」
「ともかく凄いじゃないか!ますます夏の大会が楽しみになったよ!」
同感です。犬君、鹿目先輩、そして、子津君が完成すれば
全国のレベルも夢じゃないかもしれない。
「互いに礼!」
「シタ〜〜!!」
「おら〜者共帰るぞー」
「お前等もう十二支を甘くみんじゃねぇぞ!
それとな、メガネは流行んねぇんだよコンタクトにしろ!」
暴れようとするお猿君を子津君が必死に押さえつけている。
すまん子津君、そして有難う。
「後、今日の俺達の武勇伝を伝えとけ!
ヘンな事を一言でもいってみろ!メガネ割りに来るからな!」
「二度と来んじゃねぇ〜!裸眼族が!」
そんな会話がされていた一方。
辰君と、司馬君と凪は、別れを惜しんで泣いていた。
そんなにココ気に入ったの?
「今日はご苦労様。これから学校に戻ってミーティングをします」
今日の反省会をして、次に備えなくちゃ。
「ちょっと待った!こちとら大活躍で疲れたんだ!ご褒美だご褒美プリーズ!」
「忘れてた。疲れてるのか?そういう時は糖分だ。甘いもんを奢ってやる。
初得点の物には角砂糖1つ。5得点目は角砂糖5個だ」
「あま〜い」
「ちょっとまて…これって…」「あぁ…」
皆顔が青くなって行く。
「20得点目の者には角砂糖20個…」
ああ。叫び声が聞こえてくる。
「25得点目の奴には角砂糖25個・・で記念すべき30得点の物には袋砂糖1袋」
どっざああああぁぁぁ
とお猿君の口に大量の砂糖が流れ込む。
「砂糖+塩で中和中和これで+−0だわ」
「そのたし算間違ってるっすよ!」
「しゃ〜ねぇな。今日は初勝利祝いだ全員にお好み焼き奢っちゃるわ!」
絶対砂糖とココの食費の領収書は受け取らないと心に誓った。
「監督。猿野君の顔色が大変です!」
「子津君、ほっとけ」
次のお好み焼きに手を出す。
結構ココ美味しいや。
「村中君それは酷いッすよ!!」
猿野天国・8打数1安打1本塁打エラー3。
そして、その日から十二支の怒涛の快進撃は始まった。
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