#02 レギュラー発表。







合宿から3日たった。
今日は遂にレギュラー発表が行われる。

今回は細工なしの本物。また決めるのが大変だったよ。



「凪、子津君、部活行こうか」

鞄を肩に掛け、2人に声をかける。

「ええ」「はいっす」

さて、皆の反応が楽しみだ。


*+*+*


「全員整列」

野球部全部員がそれぞれ緊張した面持ちでグラウンドで整列した。


「今回の新生十二支レギュラー…テーマは"大改革"だ。
これから発表するニューオーダーを決めるに当たって、3つの改革を盛り込んだ」


部員が食い入るように監督を見つめる。


「1つ目は、ポジションランキングの"順位変更"。
ま、順位変更はいつでもやってる事だ。

大した事はない。問題は2つ目の改革"守備位置変更(コンバート)"だ」

部員がざわつく。

「先に言っておくが、ニューオーダー9つのポジションの内、
5つのポジションがコンバートした選手で埋まっている」


1年が相当数食い込んだ事もあってほとんど新チームと言ってもいいだろう。
ざわめきは静まるどころか大きくなる。


「では、各ポジション上位2名の遊軍枠を発表する。まずは外野だな。
…なお、外野手は3つのポジションともコンバート選手だ」

「「「「「「ええっ!?」」」」」」


外野レギュラー3人は青くなってる。

部員の困惑を尻目にに、私は持っている用紙に沿って発表を始める。


「レフト、2年・猪里猛臣

「は、はい!!」

前セカンドレギュラーが、レフトに。



「センター、1年・兎丸比乃

「えっ?あ・・・はい!」

その代わりにセカンドに入るかと思われた兎丸がセンターへ。



「ライト、

3年・牛尾御門」



「はい!!」

部員のざわめきが、その範囲を超えた。



牛尾先輩が外されるとは誰も予想出来なかったろう。

話を聞いた時は私も驚いた。



「牛尾キャプテンがライトに移ったら、誰がサードを守るんですか!?」

決定したオーダーに変更はない。各ポジションの説明がいるのならしてやろう。
まず守備面においてだが前レギュラーより今いった3名が劣ってるとは思えん。
それに打撃に関しては新レギュラーの方が遥かに上だ」

監督はあくまで落ち着き払っている。
ちゃんと貫禄があっていつもと違う雰囲気だ。

「レフトの猪里はこの部の誰よりもバント技術に長けている。
2番打者として外せない存在だ」



紅白試合で見せたその技術は、秀逸の一言に尽きた。

私が作ったデータでも高い評価を受けている。


「センターの兎丸の超俊足には誰もが舌を巻く。

守備範囲の最も広いセンターでその足を生かしてもらおう。

そしてその俊足で1番打者として働いてもらう」


T・O・S VRは4段加速に進化し、他の追随を許さない圧倒的な速さを誇る。


「外野手で一番肩が強くなければならないライトの牛尾は、守備良し、打撃良し、

その抜群の肩と振り子打法とで十二支の柱となってもらう」


主将である彼は、主将たりえる実力を持つ。

すなわち、全てにおいて突出した能力。
頷かざるをえない説明に、部員達は静まった。


「では、内野手の発表に移る。まずはファースト、2年・虎鉄大河

「HAHAH〜〜N BABY?vv」

 お猿君ががショックで溶解する…というか、既に土に還っていた。



それを尻目に発表は続く。



「セカンド、1年・司馬 葵」――無言で小さく手を挙げた。

「ショート、3年・蛇神 尊」――こちらも無言で手を挙げる。

「スゲェ2遊間だな!」
「2塁に司馬をコンバートする事で鉄壁の内野陣になったな!!」



再びざわめきが大きくなっていく。これには全員納得のいく結果。



「では、肝心のピッチャーの発表だが、これはキャッチャーとセットで考える事とする。
どうしてもバッテリーの相性というものがあるからな」

「バッテリーA、犬飼・辰羅川。
バッテリーB、鹿目・三象。」

「この2つのバッテリーに上も下もない。
試合のケースによって使い分けていく」



驚異的な剛速球の犬君。

すさまじいキレと2段のカーブを持つ鹿目先輩。

2種のピッチャーが揃った。

しかし、これは独特すぎて他のキャッチャーでは捕れないだろう
という事でこの方法を取る。



「最後に、牛尾の抜けたサードだが・・・」

全員が監督により一層目と耳を傾ける。羊谷がニヤリと笑った。

「サード、1年・猿野天国」








グラウンド中が静まり返った。






言葉も無いほどの驚きか。

それぞれがありえないを体全体で表現しまくっている。





「・・・聞こえねーのか?返事しろバカ。テメーだよ」


「あ・・・え・・・」


「「「「うそぉおおお〜〜〜〜ん!!!!」」」」






全部員が唱和した。



何でこういう時は気が合うんだろう。



「さっきから変更激しすぎなのをガマンして来たがよ!もうガマンなんねー!!」
「何で牛尾さんが動いてドシロートがサードなんだーー!!」

「うるせぇチンカス共!!すべては打撃重視だ!!
今年の十二支は打って勝つ!!」



監督の一喝に野次は静まった。

「このバカの奇跡がかったバッティング、マグレであろー
ともう見過ごせるレベルじゃねーよ。
これは手堅い本命野球じゃない。いわば大穴野球。
こうでもしなけりゃ、この地区にひしめく強豪校とは渡りあえん」



いくら大穴狙いとはいえ、相当な大博打である。

遊軍に入れるよう薦めた私がいうことじゃないけどね。


「オレはケチくさい結果など求めていない!!
やるからには地区予選突破だ!!」


「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」




「以上18名発表を終わりにします」


「えっ?!遊軍枠は20名のハズじゃ!?」

「そうだ。これが3つ目の改革・・・"遊軍枠定員の変更"。
いわば敗者復活。ベンチ入り残り2名は地区予選開始まで保留とする



つまり。今この場にいる全員に、チャンスがあるという訳だ。

衝撃のレギュラー発表を終え、次の話題へと移る。



「いいか、7月中旬より始まる地区予選までの2ヶ月間。
全20試合地獄のロード・・・練習試合を行っていく」

「そんな・・・20試合もですか!?」


「これですね」

 が埼玉地区の高校野球冊子を取りだした。そしてそれを羊谷に渡す。

「この誌面は2強と詠われる2校の関連記事で埋め尽くされている。

で…十二支はというと、隅っこの方に…"古豪も今は見る影なし"
…この一言寸評のみとお粗末なものだ。まったく、どういう取材してやがる」

ショックを受けた部員達。

「これが埼玉地区での十二支の評価だ。
もう過去の栄光などとうに忘れ去られたって訳だ。その証拠に、練習試合を
申し込んだ際、こちらに遠征に来てくれるチームなど1校として無かった」



ええ、1校もなかったですよ。大半は試合やるだけ有難いと思えって感じだったし。

中には十二支とやる気はないといって断られた学校もあった位。




「どうだ・・・このレッテルを見事覆し、そして今一度栄光を取り戻し、

一気に駆け登ろうじゃねぇか・・・甲子園まで!!」



「「「「「「「おおっ!!」」」」」」





野球部員の気合が学校中にこだました。








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