#29 試合終了
「やった――!!あのバカやってくれたぜ――!!」「俺達が勝ったんだ――!!!」
1年全員が倒れたままの猿野に駆け寄る。私もすべての荷物を持って下に降りた。
「猿野!大丈夫か!?」「ダメだ!気絶しちまってんぞ!」
「三象先輩とダブルノックアウトだ!!」
こりゃまたすごいパワーだこと。あの三象先輩、吹っ飛ばしたよ。
「こいつ、ひょっとしたらマジにとんでもねぇ逸材だったりしてな」
「ハハハ、そんな大それたモンじゃねーよ!ただの超ラッキーなアホだろ!」
猿野がニヤけてる。が、それを思いっきり犬君が踏んづけた。
「起きろ、バカ猿」
「いだだ…犬コラー!テメーぶっころだ!!」
「とりあえず、秒殺だな」
「二人共、クリーンファイトでお願いしますよ」
「ッて言うかストップかけてよ!!」
私は辰君の言葉にツッコミをいれる。
「止まれ、猿野天国、犬飼冥」
威圧を含ませた声で喧嘩を止めた。幸いすぐに2人共止まったが。
「ったく、皆が皆してここまで無茶するとは驚きを通り越して脱帽だ。
猿野天国、まだ技術はまだまだだが
…今回の試合の努力は認めてやる。
頑張ったな、遊軍入りのチャンスは掴んだぞ」
確かにまだまだ技術も精神も甘すぎるが、
4日間でココまで伸ばしてきた努力は凄いと思ったから。
「へッ当然だ!!」
「ふぅ、さて、最後の挨拶だ。皆整列!!」
「10−11・・・この試合は1年軍の勝利と相成った」
グラウンドに整列し、監督の話を聞く。
「この結果を元に、雄軍・賊軍を再考する事とする」
「では今をもって紅白戦並びに合宿の全メニューを終了します。
全員長い特訓メニューご苦労様。今後の活躍に期待します」
全員が、緊張した面持ちで監督と私を見ている。
「最後にひとつ付け加えておくが…今回の紅白戦、点数上では1年軍の勝利だが
…その内容を見ると、6点は賊軍相手に入れたもの。それを加味した上で再考する事にする。
両軍、肝に銘じておくように」
先輩方がホッ、と肩の力を抜く。
まあ当然だけどね。彼等もとても凄かった。
この宝石の原石のような彼等を磨いて行こう。
「なお、明日はこれまでの息抜きも兼ね、ちょっとした余興を用意している。
そしてだ…出血大サービス。今夜は宴会だ。せいぜい飲んで騒げ」
「うおー!!マジか!?」
「HAHHA――!今夜はカラオケでワンナイトカーニバルKaい?」
「ハハッ!もう俺、腹ペコばーい!!」「っしゃああ――!試合が終わった――!!」
全員のテンションが盛り上がった。
「み、皆よかったっすね!」
「何、他人事みてーな口きいてんだよ、このカマトトちゃんは」
「は…?」
お猿君は子津君にむりやり肩を組む。
「お・ま・え・のお陰で勝てたんだろーが」
「で、でも…」
「あ――!!もうテメーは命がけの胴上げだー!!」
「わっ!」
「子津ワッショイ!!」
高ッ!!
「「「ワッショイ!!ワッショイ!!」」」
「くれぐれも横ワッショイは禁止だよ!」
「死ぬ死ぬっ!!死ぬ高さっすよーーー!!
お゛〜ろ゛〜じ〜〜で〜〜〜!!!」
「次はモミーの総大将だ!!」
「い、いや!私は!」
「「「ワッショイ!ワッショイ!!モミワッショイ!!!」」」
「メガネが飛んだ〜〜〜!!!」「ハハハハハ!!」
暗い顔をした鹿目先輩が、グラウンドを去りかけたが、お猿君の女装、明美に掴まった。
「ささ、先輩もご一緒に!」
「お、お前は!!」
「カエル一丁ーーー!!!」
強制的に持ち上げられる先輩。胴上げの輪に強制投入。
「わっ!!お前らやめっ!!」
「「「ワッショイ!!ワッショイ!!」」」
「次は三象先輩いくわよ〜!」
「「「それはムリだーーー!!!」」」
「何やってるんだか…」
もう止める気も起きないね。
「…監督がちゃっちゃとあれを止めて挨拶をさせろって言ってる…かも」
檜が私の服を引っ張って託を伝える。
「うん分かった。あれ?そのカード」
檜の持っているカードに目を向ける。
「運命の輪。1年軍を占って出てきたの…かも」
「ふ〜ん。運命の輪か。キーワードはチャンスとか幸福だっけ?」
あいつ等にはお似合いの言葉か。本当に良く当たってる。
「さて、やりますか」
次に進まなくちゃ、その幸運が逃げちゃう。
せっかく面白くなりそうなんだから、その流れに乗ってしまおう。
今年の夏を熱くするために。
NEXT