#26 3回表〜9回裏
私は子津君の手を引いてグラウンドに戻ってきた。
「よう、遅かったな」「さっさと来いよ。試合続行、だ」
子津君は驚いているのが手に取るように分かる。
「だってボクはもう…メチャクチャに打たれて…。ボクなんかがグラウンドにいたら…」
「あのな〜野球ってのは投げるだけか?外野につけよ。打て」
「え?」
「君にはライトに入って頂きます。3番打者の君に抜けてもらっては、
うちの打線に穴が空きますからね。ここで子津君に頑張っていただかないと、
1年軍は全員共倒れになってしまいます」
「そ…そんな…ボクは、ぜんぜん…皆が、思うほどじゃ…」
「子津君、言ったでしょ。チャンスを与えたいって」
「後は犬飼君に任せましょう。」
「あ、あの…すいませんっす。試合…メチャクチャにするなって言われてたのに…」
子津はビクビクしながら犬飼に言う。
「こんなのメチャクチャの内にも入んねーよ。とりあえず、テメーは休んどけ。
…最終回まで、テメーらの所に球が飛んでくる事はねーんだからよ」
「さて、試合続行だよ」
あっと、その前に子津君の手の治療が先かな?
*
「でも子津君。何でちゃんと手握ってたのかな〜」
は上に舞い戻り、ビデオの用意をしてるので見えていないため、小声で会話する。
「それは…俺も聞きたい」「(俺も聞きたいな)」
他の者も近づいてきた。
「それは…内緒ッす」
僕とさんだけの秘密ッす。
「牛尾、その負のオーラを今すぐに止めるのだ」
遠くからそれを見ていた牛尾は表情は全く変わりがないが
オーラが何時ものキラキラオーラではなく、蛇神に札を貼られそうなものを背負っている。
他の者はすでに距離を置いて見守っている。
「フフフ……」
「三象〜牛尾が怖いのだ〜!!」
「ガアアアァ」
*
『ポジションの変更です。ピッチャー子津君がライト。
ライト桶川君はベンチ。ピッチャー犬飼君です』
犬飼の登場はどうやら2,3年軍には効いたようだ。
4回表、8−6。爆発打線の3人を三振で押さえた。
そのままピッチャーの投げあいで7回裏まで進んだ。
しかし、1年も2,3年もこのままじゃ終らない。両方共に背負ってるものがあるのだ。
そう簡単に終りはしない。
「兎丸が1塁でさされた?!」「くそっこれが封鎖野球か!!」
9回表、犬飼が疲れを見せ初め、止めと言うかのように追加点を入れる。
10−6、4点差か。
1年軍には敗北が決まったかのように落ち込んでいる。
9回裏、2アウト。兎丸が出塁しなければこのゲームは終る。
「僕で、最後。僕が出塁しなきゃ1年軍の負け」
ウサギ君は緊張で固まってしまっている。
流石にここで何か言うと不公平なので私は何も言えない。
だが、司馬君が何か言っているようでそれのお陰でウサギ君は元気を取り戻した。
『1番セカンド兎丸くん』
「長かった試合も後、お前1人。これで最後なのだ!!!」
投げた!ストレートだ!!
僕の足は誰にも負けない!!だからぼくはどこまでもこの足と一緒に…
「いっくぞ〜〜〜!!!」
前へ進むんだ!!!
「これで…どうだ〜〜〜〜!!!!」
ギロチンターボ
ドズ ギュオオオオ
「突っ込みながらギロチンとは、やってくれるね」
球はショート方向へ、そこに待ち構えている蛇神。
『絶空』
バチッッツ
はじいた!そこにサードの牛尾がカバーに入り、
すぐさまファーストに送球。兎丸も目前に迫っている。
約束したんだ!必ずつなぐって…ぼくは止まらない!
止まったら ぼくじゃなくなるから
「セーフ!!!」
「よっしゃーついに出た〜〜〜〜!!」「初ヒットだ〜〜〜!!!」
「兎丸〜〜よくやった!」「流石特攻隊長!」
次はまだバットを振りさえしない司馬君だけど、今回は何か違うようだ。
「2番ショート司馬くん」
素振りをしている。
しかし、全打席三振の司馬君を出すのに不安を感じる者も少なくないようだ。
「おいモミーどうすんだよ!?」
猿野が大将の辰羅川のモミアゲを引っ張りながら詰め寄る。
流石に悩んでいるようだ。
「出した方がいいと思うよ」
あっ思わず言っちゃったよ。
「さん?」
「何か思惑ありそうだしね」
「…ええ。司馬君の意志を信じる事としましょう」
そして…。
キィィィン
真芯で剃刀カーブを捕らえた。
「司馬君はずっと剃刀の研究をしてたか。
司馬君は打撃に興味が無かったわけじゃなかった」
リズムをとって打つか。司馬君らしい。
「次は子津君。君の力を見せてみな」
子津君はバット2回叩く。サインか。
キィィィン
子津君はストレートを打ち、2人は駆け出す。
2者もランナーを抱え込んで剃刀カーブは使わないと見越していたようだ。
こんな状況で満塁なんて生ぬるいと言うかのようにウサギ君は、3塁を蹴った。
「V2!!!」
そこで球は三象に到達した。
「あーー終っちまう」「スライディングが間に合わねぇ…」「あんな壁突破できっこねぇよ」
「三象!潰すのだ!!」
ここからさ!VR改は…4倍加速だよ
私の迦楼羅のように三象先輩を飛び越えた。
「まさか、こんな使い方するなんて…」
は自分の技の違った使い方を知って驚愕する。
ズダアァァ
本塁を踏み、追加点を入れて、そのまま兎丸は倒れこむ。
7−10。
2,3年軍優勢。
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