#24 1回裏〜2回表
「わ――い!!ちゃんがあっちにいて寂しかったんだよね!!」
だってさっきの叔父ちゃん達ちゃんがあっちに付いたみたいに言うんだもん。
そんな不公平な事、理由が無い限りちゃんはしないのにね。
「はしゃぎすぎだよウサギ君、それより気を引き締めて。
次はさっきとは段違いに強いよ」
下手したら次は1年軍がさっきの相手のようになる可能性もある。
「ええ。そうでしょうね。敵は各ポジションランキングトップ。現レギュラー陣ですから」
あのランキングは色々いじくったけどレギュラー陣は全く変えていない。
まさしく十二支野球部各ポジションの王者。特に、内野陣はかなり強い。
……個性も外野陣より強いな。
「レギュラーさん達は強いかもしれないけど僕等1年軍が力を合せれば大丈夫だよ。
まず僕が足で掻き回すよ。なんたって1年の特攻隊長だもんね」
格好いいね。皆感心してるよ。だが、
次の瞬間猿野が女装をすばやく解き
カウボーイの格好で兎丸にウェスタンラリアットをかました。
まったくコイツは……。
「猿野天国、ふざけてる場合ではないだろう。
私は確かに先程の1本足打法でのホームランに感心したが、
認めたとは一言も言っていはいない。
もっと私にお前の起すという奇跡を見せてみろ」
屋根の上から足を組み、見下ろすように言う。
「たっりめぇだ。俺の実力はまだまだこんなもんじゃないぜ!!」
その言葉、強がりではない事を祈る。
「では、楽しみにしておこう」
「にしても、何でさん口調が変わってるんすか?」
ああ、言ってなかったっけ。
「いや、キレたり、真剣になってるとついなってしまうんだよ。おそらく上の兄の影響だね」
まだ少し抜け切ってない。時々意識的に口調変える事もあるけどね。
「(お兄さんはそういう口調なの?)」
司馬君が口パクで尋ねる。
「まあね。部内では蛇神先輩に似てるかな。
私達と同い年の兄もいるけどコッチはウサギ君が一番近いかも」
「……随分、似てない兄弟のようですが…」
辰君は想像したようで、ずり下がったメガネを上げながら言う。
「でも、一番奥はそっくりな兄弟だよ」
貴方達はその兄弟と戦うことになる。このままじゃ勝つ可能性は無い。
だからこうやって貴方達を強くする。
兄弟達も私と同じで強い相手と戦うのが大好きだから絶対喜ぶだろう。
勝つのが分かってる試合なんてつまんない。
勝つか負けるかのギリギリの所で戦うからこそ、野球は楽しいんだ。
「さて、肩慣らしも終了したようだね。本当の試合の始まりだよ」
ビデオを脚立に置き、スタンバイOK。
封鎖箇所はそのまま継承されるから外野陣は手足にパワーリストをつける。
「でも、内野陣が自由なままだ」
これは大きく関わってくるよ。
『1番セカンド兎丸君』
「ノーアウト満塁で兎丸君ですから、大量得点のチャンスですよ」
「そうっすね。前にランナーがいる所為で兎丸君の足が十分に発揮出来る場面ではないけれど、
今はギロチンがあるっす」
確かにその通りだけど、先輩達はそれを捕る気満々だよ。
じゃなきゃさっきと同じように前進守備なんてしないさ。
ここで1番辛いゲッツー狙いなんだろう。
この内野陣ならそれが出来る。
そして、鹿目が低めの変化球を投げ、
蛇神の方に飛ばさせ高くバウンドする前のギロチンを捕った。
そして空中送球をやってのけ、ファーストで兎丸、
ホーム前で本庄をアウトにし、ゲッツーをやってのけた。
「これが、レギュラーの力か。
蛇神先輩の尋常ではない反射神経と三象先輩の山のような体で阻まれた。
ここから得点は難しいぞ」
この後は司馬が打席に入り、三象のノーモーションで不意を突かれサードがアウト。
スリーアウトチェンジでやっと2回表。2,3年軍の攻撃。
1回表は3者凡退だったので1番手は4番サード牛尾。
「牛尾先輩が最初か。先輩は打の試験でも1番だったし、こりゃ辛いわ」
「何言ってるんですか。打の試験1番は全球パーフェクトだった貴方でしょうに」
辰君がため息混じりに訂正をいれる。
「私はこの試合出てないしねー」
「つーか入れれば勝てるんじゃねえか?」
は?何を言っている、野木君よ。
「そうだよな」「は練習参加OKなんだし、主将級の力あるし」「1年だしな」
なんか周りが変な事で騒いできたよ。そりゃ私だって出れるなら出たいけど。
「審判タイム!!監督。さんを交代メンバーに入れるのは有ですか?」
辰君マジにしてどうする?!これはレギュラー争奪戦の場だぞ?!
「が入るのは流石にベラボーにヤバくないKa?」
「そうっちゃね。さんが入ったら戦力倍増ばい」
先輩方まで騒いでるよ。
「んなの許す訳ねーだろ。これはレギュラー争奪戦だ」
予想道理。ちょいと残念だ。気を取り直してまた試合再開。
*
『2回表、0−6。4番サード牛尾君』
ここから、2,3年軍の猛反撃が始まった。
1,2球と変わらず子津はスローカーブを投げストライクをとるが、
牛尾は3球目、大きく弧を描くホームランを打った。1−6でまだ1年軍優勢。
封鎖場所は兎丸の足。
『5番ショート蛇神君』
「随分と変わったバットね。木製バットだし、普通より長めだし、梵字が沢山彫ってある」
まあ、長さを変えてるのは私の黒闇天も一緒だし、遠心力を考えてのことだろう。
蛇神先輩には似合いまくりのバットだわ。
「……またやってる。今度は弁当箱作成かい」
顔に似合わず手先は器用なのか猿野天国。
蛇神先輩を固まらせるなんて早々に出来ることじゃないよな。
蛇神先輩はバッターボックスに立つと立っているのは右打者の方なのに左手でバットを持ち、
右手は添えてるだけという変わった構えを見せる。
無の構え・毘沙門天。
……私と名前のセンス被った人初めてだ。
しかも毘沙門天って吉祥天の夫じゃん。黒闇天にとっては義兄か。家族できちゃってるよ。
子津君はクロスファイヤーという切り札を見せるが、
蛇神先輩の集中力には及ばなかったようだ。2者連続ホームラン。
切り札を打たれた事で子津君は落胆しているようにみえる。焦りは禁物だ。
2−61年軍優勢
封鎖はまた兎丸の足。
次の6番キャッチャー三象はピッチャーフライ気味の球でもセンター奥に運んだ。
力は猿野並。7番ピッチャー鹿目は一宮のようにガチガチになり始めた
子津の球を正確に見てワンアウトで1塁に進んだ。
8番レフト津島は痛烈な当たりを見せるが。司馬がイレギュラーバウンドの球をキャッチ。
セカンド、ファーストをアウトにしてゲッツー。
後ろの内野陣のお陰で少し、子津の硬さが柔らかくなった。
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