#20 前日


まさか、残り3日すべて他校の資料集めと試合申し込みで終わるとは……。

ファイルがすでに4つ完成。

今の所、十両や前頭並の高校の申し込みはすべて終了。

、調子はどうだ?」

監督はグラウンドから帰ってきたらしい。

「もう疲れました。10校分の申し込み終了」

 背中を伸ばしながら完了した仕事の報告をする。

「良くやった。さすが仕事が速いな」

 畳に置いてあるファイルを拾って読みながら監督は労いの言葉をかける。

「黒撰のお手伝い経験もありますから。

黒撰だったらすぐに練習試合OKだと思いますけど、どうします?」

「いや、あいつ等じゃまだ勝てる相手じゃないからな。
それにお前の事がバレるぞ

「そうですか、でも私の事はいいですよ。
今日、終わったら明かすつもりですから」

「……いいのか?」


「問題ないですよ」

そろそろ話さないといけないだろう。

「そうか、そろそろオーダー表の発表だ。行くぞ」

「アイアイサー」


 *


さて、決戦前夜の顔合わせだ。

「皆の衆、ご苦労だったな。

いよいよ明日、この合宿の締めくくりに相応しい
2・3年対1年の雄軍枠争奪紅白戦を執り行う」

「…それでは両軍の総大将。オーダー表を提出してください」





2・3年連合軍総大将・牛尾御門

1年軍総大将・辰羅川信二。




両方のオーダー表を見て私と監督は笑った。

「ほう…。それでは、1年軍から発表してもらおうか」




置いてあるボードに1年軍から渡された紙を張り出す。

最初に皆の目が行ったのは、ピッチャー。

そこに書かれている名は犬飼ではなく…。



「何!!子津が先発かよ!?犬飼はどうした!!」「血迷ったか辰羅川!!」

「血迷うも何も、このオーダーこそが
…2・3年連合軍を迎え撃つのに最適なベストオーダーなんですから」

辰君はやっぱり頭がいい。私もコレを望んでいた。

今の犬君の足じゃ全部は投げ切れないし、子津君の成果も見たかった。

彼の武器は球威ではないのだろう。

その頭脳と技巧でどこまで2,3年と対決できるのか楽しみだ。



「た、辰羅川君!いいんですか、僕で!?」

「入部試験での投球術と知謀ぶりは拝見しました。共に力を合わせましょう」



そして内野は。

「も〜〜、おも〜〜〜いっきり走るかんね!!
この日の為にぼくの足、磨きに磨きをかけたんだから!!」
セカンドに、ウサギ君。

「・・・(♪)」
ショートに司馬君。

サードにコンバートされた明神君。

残りはファースト。

そこは『?』になってる。辰君は博打も出来る度胸を持っているらしい。




「では、ファーストは私の口から発表しましょう。

…1年軍ファースト・猿野天国」



「当ーー然!!」

「正気かよ!?」「ド素人だぞ!?」「守備だってザルだ!」



「静かに」


少し声を強くして諌める。

「ギャラリーが黙った所で、辰君、説明頼んだ」


辰君がめがねを押し上げた。

「確かに特訓での成績は、はっきり言って素人レベルです。

しかも野球に対してもいたって不真面目。

ですが……

皆様はもうお忘れか。入部試験での彼の奇跡を」



話に聞いただけのお猿君の起した奇跡。

それが偶然なのか必然なのか、この決戦で見極める。

「このオーダー、並びに試合の責任は私が負いましょう。
異論のある方は一歩前へ」

 誰も出ない。
皆も分かったのだろうこれは、勝ちを狙ったオーダーだ。






「では次に2・3年連合軍のオーダー発表と行きましょう…」


 次に貼った紙には。






「ど、どういう事だ!?レギュラー陣が一人もいねーぞ!!」

「明日はこのメンバーでいかせてもらうよ。

…これでいいかい君?

牛尾先輩はポソリと小さい声で私に耳打ちする。

「ええ。有難う御座います。牛尾先輩」

私も耳打ちし返す。

明日の決戦は荒れに荒れそうだ。







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