フリー特訓
只今道具の貸し出しの受付中。
「、結構良い奴だと思ってたのに…ガッカリだよな」
「つーかムカつかねぇ?」
「あそこまで言う必要ないよな」
「監督を止めるくらいの力は持ってそうなのにな」
まあ予想はしていたが。
1年軍は私に敵意を見せるだけで近づこうとはしない。
間違いなくランキング表のことで恨まれてしまっている。
っていうかさっきの会話を聞いてると止めるって監督と同列と見られてたって事?
朝、ウサギ君に会った時、目を反らされて逃げるように去って行ったのは
ホントに効いたよ。
「うーん、予想は出来ても辛いものは辛いか…」
独り言を呟く。
「でも、必要な事をしてくれる君はとても有難いけどね」
牛尾先輩がいつの間にか近くにいた。
……まったく気付かなかったよ。
そういえば、野球部に勧誘された時も気付かなかったし、
私、もう少し回りに注意払った方がいいのかな?
「…先輩は分かっちゃいましたか」
この人と蛇神先輩あたりは気が付きそうだなとは思っていたけど。
「まあね。1年生は君にとても想われているのにね。
…少し1年生が羨ましいかな」
「お世辞はいいですよ。でもこれ2.3年の為でもあるんです。
先輩、最初は2.3年の賊軍を出してあげてくれませんか?」
そうでなければ本当に不公平になってしまうから。
「……そこまで考えていたのかい?」
先輩は驚いて目を見開く。
「当たり前ですよ。これは全体のレベルアップも兼ねていますから」
私は甲子園に憧れていた。
でも、女子ではあのマウンドの上には上がれない。
選手としてグラウンドに立つことも許されない。
「私は貴方達が強くなるようにバックアップすることしか出来ませんから」
だから十二支を強くして行くしかない。
「…君は…それで良いのかい?」
君はソフトでなら自分で高みに立てるのに。
それを投げ打ってまで……。
「ええ」
「そうか」
これで確信した。君、僕は君が好きなんだ。
君とまだ一緒にいる事が出来ると分かって、こんなにも嬉しい自分がいる。
「君、コレからは君でもいいかい?」
……一歩ずつ。
「別に、構いませんが」
……一歩ずつ君に近づいていこう。
「じゃあ僕は練習に戻るとするよ」
「頑張って下さいと、今のうちに言っておきますね。試合中は応援禁止だろうし」
そうやって笑って答えてくれる君が好きなんだ。
*
「今夜の徹底生討論のテーマは
『十二支高校野球部にど素人天国は要るか要らないか?』です」
1年軍にお風呂の順番を伝えに部屋に来て見れば
沢松君を中心に怪しげな討論会が開かれていた。
ウサギ君は要る派で司馬君は状況が分かっていない様子。
辰君は要らない派を、犬君はキモイ派、
その他の1年は地球に優しくない派を主張して、
討論は盛り上がっているよ。その中でお猿君が急に。
「絶対いらねえんだよ!!」
と叫ぶ。
自分で言って寂しくないのかと思いきや。
「ジャージのズボンの紐は絶対いらねえっつーの!!」
「絶対いるね」
と犬君が反対意見を主張。
結構どうでもいいよ。
次のお題は。
「馬鹿じゃねーの?サンタなんて絶対いねぇよ!」
「「います」」
犬君と私の声が重なった。
「お、。いつの間にいたんだ?」
沢松が周りの空気とは裏腹に明るい口調で話しかける。
「うん?先程からいたんだけどなー。後、お猿君。
デンマークのグリーンランドには
『国際サンタクロース協会』
っていうのが本当にあるよ。
日本人ではパラダイス山元さんがサンタクロースの資格持ちだね。
ついでにアジア唯一のサンタだよ」
※本当です。もっと知りたい人は調べて見ましょう。
「テリブルな名前ですね」
私もそう思う。
「で、来た目的は10分後に1年のお風呂の番だから用意してね。
じゃあ私を良く思ってない人がいるから、これで失礼するわ」
少し寂しそうな表情。その部屋の誰もが罪悪感に見舞われる。
「お、おい!!」
彼等は止めることも適わず、は部屋を後にした。
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