#16 発表





「ではこれより待ちに待った雄軍メンバーを発表する。

尚、夏の大会に向けてのメンバーは遊軍の中から選抜するつもりだ」


周りのざわつきも気にならない程、私は緊張しているかもしれない。

皆を崖から落とすようなものだ。でも、きっと上りきる。


「では、発表する。

「呼ばれた人は返事をして前に。3年牛尾御門」

「はい!!」

「蛇神尊」「…ここに」

どんどん用紙の名を読みあげていく。

「2年に移ります。虎鉄大河」「Hai!」

「猪里猛臣」「ハイ!」




「……以上20名を、雄軍メンバーとします」
 
1年は1人も呼ばれなかった。1年軍は大いにざわつく。

当たり前だ。

犬飼、辰羅川、司馬、兎丸、このあたりは雄軍でも全く

おかしくはないのに入っていない。

さん待ってください!!
1年は?1年は誰1人呼ばれていません!!」



辰君が結果に抗議する。そうだ、疑問に思って怒ってくれ。

「確かに1年は何かに特化した人はいる。

でも、総合的に見るとこの結果なんだ」


突き離す様に言葉を投げかける。嫌いになってもいい。

それを覚悟をしてこれを作ったんだ。





「そ、そんな!!」



今回は驚くだけじゃ駄目だ。もっと反抗して。



「残念だけど監督と話し合った結果……

ってお猿君、何ビールかけしてんの!!!」



あんたが1番反抗して怒って、強くなって貰わなきゃいけないのに!!

私より先に時計に届いた奴がそれでどうするの!!おめでたくないよ!!




「おらヒゲ――!!いい加減にしろい!!他の奴ならいざ知らず、
このSARUNO様が雄軍じゃねーってのはどーいうこった!?」


「ふざけろ。ケツのテメーが雄軍入りできるなら

イクラちゃんだって次回予告できるわ」

 まったくだ。

「と…とにかく、ちゃんとした説明しろよ!」
「散々今まで、野宿だのおかしな特訓だのして来たんだ!!」
「ここに来てテメーの好みとか気分だけで落とされてたまるか――!!」
だっておかしいと思わねぇのかよ!!」

「つまりだな。テメーらは、上位2名にすら入ってねぇのよ。

ピッチャーなら4番目にも入ってねぇんだわ」

「お言葉ですが、その条件ですと4名がそこに該当していたはずですが!?」

辰羅川は合宿に来る前のランキング表の話を持ち出してきた。

「そりゃ2週間前のハナシだろ。

実際2・3年と混じってみりゃ、お前らの実力はホレこの通り…。

お前らは所詮、中学レベルだったのよ」

「2・3年は、まがりなりにもこの十二支でもまれてきました。

そうやって積み上げてきたその壁は、1年が考えているほど薄くはない…」


私は視線を1年の旅館組へと1人1人をゆっくりと見回す。


「足だけでかせぐ非力なバッター」――ウサギ君。

「守備だけで満足して打撃には無関心」――司馬君。

「ワガママで自己管理もできていないピッチャー」――犬君。

「頭脳派気取りで線の細いキャッチャー」――辰君。

「そして野球部員でもないのにここにいる奴、約一名」

「オレの事か――!?」――最後お猿君。



1人1人のプライドを逆撫でする。

もっと、怒るように、もっと、真剣になるように。

1年からの嫌悪感が伝わってくる程に。

辛いが、今、この人達に真実である言葉を言える存在が必要なんだ。

それは、私であれば更に効果は上がる。

私は監督より部員達に近いから。



「中学では通用したかもしれないが…高校は違う。柿枝先輩、夜摩狐先輩。あれを…」

さっき作った表の貼られたボードが運ばれる。

ピッチャー:犬飼D。ピッチャー:子津E。

キャッチャー:辰羅川B。

セカンド:兎丸B。ショート:司馬B。

ファースト:猿野(故)享年15歳。


最後の猿野のは監督のお遊びだけどね。


「これで分かったろう。身の程ってもんが……」



わかっちゃ困る。

反旗を翻せ!!





「異議を申し立てます。恐れながら、
この1年のランキングには何か不当なものを感じざるを得ませんね。
直接ぶつかってみた訳でもないのに、一体その判定基準はどれ程のものやら。
…納得致しかねます

辰羅川がの思う通りに、反抗を開始した。

「そ、そうだ。オレ達はあの厳しい試験も突破してきたんだ!!」
「直接やってみなきゃわかんねぇだろうが!!」
「大体野球ラブってなんだ?俺は女装ラブだ!!

1年総勢17人が一斉に声を上げた。それを見てる雄軍の皆さん。

楽しそうですが…牛尾先輩もため息ついてる割には笑顔だし。

流石、こっちは今の所心配はなし。

「今年の1年は血気盛んだね。頼もしい限りじゃないか」
「一理はある。己の目で真実を見極めるのもよかろう」
「Oh、熱いNe〜。やんならやんZe?」
「それよか、あの子ばどっかで見た気がするっちゃけんね・・・」

猿野の女装って前もあったんだ。

でも、私の思惑は通じてくれたらしい。

監督、やっぱりこうなった。だからやろう。

監督は下手な演技で悩むマネをした後。顔を上げて結論を出す。

「あ゛〜〜分かった分かった。仕方ねぇな。

…2・3年連合軍VS1年。ガチンコ直接対決で<、

白黒はっきりつけてみるか…?」

舞台は整った。後は各自の技を磨き、開幕を待つのみ。




「これより4日後、特訓の総仕上げとして行います。

それまでの4日間は各々が自由にカリキュラムを組み、

決戦に向けての特訓をしてください。

自分に必要なものはメニューをこなしてきて分かったはずです」

「朝から晩までの練習メニューを打・走・投・守、自分に必要なものを選択し、

実践していけ。…以上、話を終わる。諸君らの健闘を祈る」

この4日間でどう変わるのか楽しみだ。






かつて戦国の世に広まった下克上。

今、その波が、十二支野球部にも押し寄せる。










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