#14 イレギュラースピードバッティング2
……しかし、いくら待っても中々球が発射されない。
故障か?それとも策略か?
「オラーーー!!来いヒゲーーー!!」
「それがなぁ、今マシンがトラブル起こしてな。
出てこんのよ。めんどいからお前、記録は0球でいいか〜」
「ちょっと待て待てーー!!大方球が詰まってんだろ!?このポンコツ」
お猿君!機械は殴っちゃ……ガン!!「プゴ!!」
やっちゃった。
私は額に手を当てる。
「お、出た。145kmか」
「テメーわざと狙いやがったな!!」
0距離で顔面に直撃して平気とは
…流石いつも私の攻撃を耐えているだけはある。
「知るか。これであと9球だな」
「今のもカウントされんのかよ!?」
されちゃったね。
結局、カーブを掠りもしない。
しかも何でゾンビ化?意味はあるのか?!
「フフ、これぞびっくりハト捕獲法」
やっぱり意味は無いんだ。
「自然のハトは捕まえようとしても絶対逃げる。
いかにハトにその気を悟られず接近し、捕獲するか。
それは野球も一緒のはず!」
全く違う!!本当に時計に穴を開けたのはお猿君なの?!
「アホだアホだと思ってはいたが、ここまでイッちまってたとは……」
「何かもう、特訓どころか生きる事すらバカらしくなってくるな」
145km顔スレスレのストレート。やはりダメダメだった。
「彼なりに必死に考えての事なのでしょうが……」
辰君が弁護してるが無理でしょう。
「やっぱシロートだったのKa。メッキがパリッとはがれたNa。
まぐれでも何でも打つかと思ったんだがNaー」
「残念ながら、それはないよ、虎鉄君」
「キャプテン」
「バッティングは一朝一夕で会得できる技じゃない。
それこそ本来ならば、毎日毎日何千何万もの
素振りの先に到達できる聖域。
…野球にはまぐれも偶然もありはしないよ」
厳しいけど、正しい。
「猿野天国・記録0球」
……ちょっと待ってよ。
「ちょっと監督、なんなのあれは!!」
期待をかければかけるほど、裏切られた時の反動は大きい。
「何がだよ」
「お猿君よ!!本当にあの伝説を破ったっていうの?
あの状態で?!信じられないよ!!!」
嘘だと言って!!
「気持ちは良く分かる。が、……本当なんだコレが」
言いにくそうに頭を掻きながら監督は噂を肯定する。
じゃあ私は……。
「…監督、私もバッチィングをやらせてもらえませんか?」
真剣。目が、そう物語っていた。
いや、今までだって遊びでやっていた訳じゃなかった。
しかし、今回はそれ以上の気合を感じてしまう。
「…。良し、良いだろ。黒蝶の名を蘇らせろ」
「はい」
私はジャージを脱ぎ捨て下に着ていたユニフォームになる。
そして、バックから黒闇天を取り出した。
「あの黒いバットが黒闇天か?!」「監督の言ってたコクチョウってなんだ?」
「準備はいいか?いくぞ」
1球目は130kmストレート。
こんなの簡単。
カキ―――ン。
ジャストミートした音がグラウンドに鳴り響く、
そしてボールは柵を越えて見えなくなった。
「初球からホームラン!!!!」「あいつには苦手はないのか?!」
「ドンドンいくぞ」
2,3,4球はカーブ。
柵まではいかないものの外野より後ろまでは届いている。
5〜8球も楽々打ち返す。
そして、9球目。
キィィィン
ガシャン
フェンスに当たる音が野球部員の耳に入る。
「嘘だろ、キャプテンと並びやがった」
「監督、最後なので145kmのストレートもらえませんか?」
「今度は阿耆尼(アグニ)か」
「ええ」
球が発射されると同時に先程とは比べ物にならない位
体を捻り、足の幅を広げる。
「噴き舞い上がれ阿耆尼!!」
カキーーーン。
音は今までよりも響き、ライト方面の柵を越えた。
「嘘だろ!!さっきのを打ちやがった」「全制覇だ!!主将を超えやがった!!」
「打率10割だと?!」「阿耆尼、又インドの神様か?!」
「蛇神説明するのだ」
鹿目先輩が蛇神先輩へと目を向け、命令する。
「鹿目、それが人にモノを聞く態度か!
阿耆尼は火の神也。天にあっては太陽、空では稲光、地では祭火として燃え盛る。
家や森の火にもなるが、心の中の怒りや思想、
霊感の火としても存在すると考えられた。
神々と人間の仲介者で悪魔を焼き払う存在でもある」
毎度毎度説明させてすみません。(by作者)
「、気がすんだか」
監督は気付いている。私が何でこんな事をしたか。
「はい。ありがとうございました」
私はお猿君より上なのに、時計は超えられない。
「全員宿に戻って飯を食ってこい。1時にグラウンドに集合だ」
「「「「「「「「「「「おいーす!!!」」」」」」」」」」」」」」
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