#06 入部試験2
ボールが放たれたと同時に位置を全感覚を使って確かめ瞬時に行動を開始した。
「おい、3つとも完全にバラバラだぞ!!」「あんなん捕れっこねえ!!」
決め付けないで!1つは右上30°方向、1つは左下25°方向。
最後の軟球は上80°。
は前に距離を詰め、体制を低くし左回転して
バウンド前の左右のボールを右手のグローブに収める。
「凄え!!あの正反対の2球を捕った!!」「でも上のボールは…」
別に私をなめても構わないけど、後で吠え面かいても知らないわよ!!
ダン!!
私は地面を蹴り上げるようにジャンプし、
空中で背中で円を描くかの様に背面ジャンプをする。
「高い!!なんてジャンプ力だ!!」「でも届くのか?!」
届くのかじゃなくて届かせる!!
パシィッ
3つ目は左手に収める。そのまま宙返りをして、スタンと見事に着地をして見せた。
「本当に3球全部捕りやがった!!」「あんな滅茶苦茶なボールを!!!」
「ありえねえ!!!」「何者だよあいつ!!」
周りのざわめきは前の2つの競技の比ではない。
「黒蝶・捕球演技『婆留那(ヴァルナ)』と『迦楼羅(カルラ)』。久しぶりにみたな」
羊谷の言葉に聞きなれない単語が混じっている。
「何Da?その大層漢字だらけの名前Ha??」
「婆留那と迦楼羅と言うとインド神話の神々の名だな。
婆留那は西方の方角を守る水と司法の神。
神と人の道徳を監視し、背いた者には厳しく罰を与えたという也。
迦楼羅はまたの名をガルーダと言い、
鳥と人とを合わせた姿をした神で不死の水を飲み、
あらゆる神の攻撃を跳ね返したという」
すらすら答えられるお坊さん風味の先輩。凄い。
インド神話をここまで知っている高校生は中々いないよ。
「その通りだよ蛇神君。先程の低空キャッチは水を切るような動きで婆留那。
高い背面ジャンプが空を自由に走る迦楼羅さ。
実用性よりも人に魅せる捕球だという事だろうね」
「正解ですよ。牛尾先輩にこの前のお坊さん風味の先輩。
七面倒な説明有難うございます」
「やあ君、素晴らしいキャッチだったよ!」
「お褒めに預かり光栄のいたりって所ですかね」
褒められたのは嬉しいが、周囲の反応が気になってしょうがない。
「ちゃーん!凄かったよ!!」
ドカッ
「っつ!!ウサギ君急に突っ込んできたら倒れるから!!」
「でもちゃん倒れなかったね」
「足腰鍛えないとあの業使えないし」
兎丸に続いて他の1年軍達が周りに集まってくる。
「でしょね。まったく貴女もある意味猿野君並みにテリブルですよ」
「ちょっと待った辰君。それってすっごく貶されてる気がする!!」
「どう言う意味だ!!」
お猿君が憤慨している。だって…こんなアホな奴と一緒にされたくない!!
「確かにこんなに可愛くてべラボーに凄い子と
モンキーベイベーを一緒にするのは頂けないNa」
集まっていたのは1年だけじゃなかったらしい。
その中でも目立っている集団があった。
牛尾先輩、お坊さん風味の先輩、
ほっぺがかわいい感じのマフラー先輩、
めっちゃでかい先輩、
天然パーマっぽい頭の先輩、
そして先程のラップ調の発言の顔にペイントをした先輩。
個性ありまくりだよ。何で注意しないんだ風紀委員!!
校則が存在しないのか!!??
「さん、2・3年レギュラーの人達っす。牛尾先輩は分かるっすね。
順に3年ショート蛇神尊先輩、3年ピッチャー鹿目筒良先輩、
3年キャッチャー三象男歩先輩。
2年セカンド猪里猛臣先輩、2年ファースト虎鉄大河先輩っす」
子津君が一人一人、の人物を紹介してくれた。
「子津君有難う、助かるわ。始めまして、です」
ココでもう1度挨拶するのが礼儀だろう。
「うむ、蛇神だ。先程の守備、見事であった、我も精進せねばな」
お褒めの言葉有難うございます。
「鹿目なのだ。まったく、本当にお前は女なのか疑問に思えてくるのだ」
……一応、褒められてるんだよね?
「があぁああ」
すみません何て言ってるか分かりません!!
「猪里っちゃ。さんはスゴかとね。これから頼むっちゃ」
この人はまあ普通だな。和むわ。
「俺は虎鉄Da!宜しく頼むNa。」
ウインクされた。虎鉄先輩は絶対たらしだ。
「―!!次の用意が出来たぜ」
「分かったー。ではこれで失礼します」
そう言って先輩達から離れていく。
「遅れてゴメンもみじ」
「おう!!にしてもさっきのは凄かったな」
「守備が一番得意だから」
トントンと誰かに肩を叩かれる。
「司馬君。どうしたの?」
「(とても凄くて・・・綺麗だった)」
何も話さないけど、恥ずかしがりながら必死に何を伝えたい、言いたいのが分かった。
「もしかして、褒めてくれてるの?」
なんとなくそんな感じがしたので聞いてみる。
「!!(コクコク)」
肯定の合図が帰ってきた。
「アリガト。頑張ったね」
カアアアアッッ。
何?!急に司馬君の顔が赤くなったよ?風邪?!
「司馬君大丈夫!?」
「(コクコク)」
まだ顔は赤いが、必死で首を縦に振る。一応大丈夫なのか?
「大変そうだったら休んでなよ。じゃあ、次はタイヤ叩いてくるね!!」
もう1つ頷いて手を振って送ってくれた。司馬君良い子だよな。
*
「次の種目だ。このタイヤを叩き飛ばせ」
「アイアイサー監督」
コレは骨が折れそうだな。
「次はどうかな」「もう、あいつは何しても人を驚かしそうだ」
ゴメン、その期待は裏切りそうだ。せめて黒闇天があればなー。
「じゃあ、行きます」
狙いは中心より少し下。腰を目一杯にねじり上げる。そうして一気にバットを振り上げた。
ドゴオッ
タイヤは5.60°位いった所で停止しまた戻ってきた。
「59cmです」
「うー」
やっぱりあんまり行かなかったなー。
「まあ、黒闇天じゃない割にはいったな」
監督は一応満足したらしい。
「でも、黒闇天でしたかった」
黒闇天持ってくれば良かったかなー。
「辰、黒闇天って何だ?」
「さあ?私は知りませんね」
「黒闇天は七福神の1人、吉祥天の姉妹神也」
「??!!」
「へッ蛇神先輩?!」
「吉祥天は幸福と美の女神である対し黒闇天は災禍の女神だ」
「でも、その黒闇天がさっきの競技に関係があるのかな」
「だったら本人に聞いて来いよ」
猿野が珍しくまともな事を言った。
「そうだね。ちゃーん」
早速を呼ぶ。
「何―?」
「黒闇天って何なの?」
「私のバットの名前。ヒットを打って相手に災厄を与える。
ついでにグローブが吉祥天。キャッチしてチームを幸福に導く。
どっちとも同じ人に作ってもらったの」
「特注ッすか?!」
「うん。私,あいつらじゃないと調子出なくて」
「さっきのででか?」
犬君が驚きながら言う。
「当たり前。黒闇天がいればもっと飛ばせてたよ」
あっ。皆黙っちゃった。でもこれぐらいで驚かれちゃ困る。
これからはこの人達をどんどん伸ばして行かないと2人には適わない。
トントン。また肩を叩かれる。もう誰だか分かるけどね。
「司馬君、どうしたの?」
「(グローブも吉祥天を使ったほうが上手いの?)」
今度は喋ってはいないが口が動いているのでわかる。
「うん。グローブも吉祥天の方がやっぱり段違いに気持ちよく捕れるよ」
「さんは司馬の言ってる事が分かると?」
こちらは違う意味で驚いている。
「口が動いていれば、何とか」
それを人は読唇術という。
「それは有難いよ。今の所兎丸君以外は司馬君の言葉の翻訳が出来ないからね」
牛尾先輩が嬉しそうに言う。
「あっとそうだ。牛尾先輩、私は試験合格ですか」
「当たり前だよ」「ココまでして文句を言う輩はいねーYo」
「お前は下手をしなくてもここにいる殆どの奴らよりも上を行っているのだ」
「じゃあ今度は部員の1人として皆に挨拶しろ」
「じゃあ。、これから十二支を甲子園に連れて行くために全力を尽しますのでよろしくお願いします」
「とは言っても当分はデスクワークしてもらうがな」
「酷っ!!」
せっかく入ってそれは無いっしょ!!
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