ドリーム小説

20

「あ、いたいた。外所先輩、伊藤先輩ジュース買って来ま
したよ」
「お疲れ様ちゃん」

は真っ白のつばの広い帽子を被ってペットボトルを
二人に渡した。

「で、今はどうですか?」
「6回表はが満塁ホームラン打って一気に4点差!」
「7番が一塁に進んだけど5,6,8でアウト取られて裏に
入った。そんでその裏が現在2アウトで最後の打者が今打席
に入るところだ」

外所と伊藤が交互に説明して、はセンターにいる
を見た。

「・・・遠いなぁ」

一ヶ月足らずの間に、がすごく遠い存在になってしま
った感覚を覚える。
自分だけじゃ解決しようのない苦しみから、前進できた。
楽しいと目一杯に伝える満面の笑みはブラウン管だろうが
液晶だろうが変わる事はない。
でも、やはり生ではそれらよりももっとアタシに語りかける
雰囲気がある。

有志で組まれた応援団の熱意。

観客席に座る人たちをこの炎天下の中、数時間
座らせても飽きさせない力と力の拮抗。

グラウンドにいる選手達はこの場の主役で、どこのポジ
ションの人でも、どんな動作でも、真剣さと練習量の
成果が数ヶ月前まで野球をまったく知らなかったアタシ
にも伝わった。

あの狭いけど、居心地のいい文芸部の部室にいるだけでは、
アタシの親友は満ち足りなかったんだと、否応がなく実感
させられ、悲しくなった。

が望みを叶えて嬉しい気持ちもあるのに、フェンスの
隔たりがそれ以上に疎ましい。
突っ立っている間に、最後の打者がファーストゴロでアウト
を取られ、6回の裏が終った。
次は7回の表。神奈川の厚木投手が交代して、大磯という
人がマウンドに上がった。

大磯投手は厚木投手よりも身体が大きいから、
豪腕投手だろう。
9番の主将がファールを5本出したが、6本目でレフト
フライでアウト。

1番の人はボールが多い打席だったが、三振でアウト。
2番の人は取りやすそうな打ち上げをしたかと思った
ら、スピンがかかっていたのか、球は急降下して
球処理に時間を稼ぎ、セカンドまで塁を進めた。

3番の人は上手く二遊間を抜けたかと思ったけど、
ショートの人がナイスキャッチして、2番の人をアウト
にして、7回表を切り抜けた。

「スゲースゲー。あの大磯っての、140出しながら
シュートとフォーク入れたぜ。
厚木の155km/hに隠れてたけど、いい投手じゃん」

いつの間にかに小野関先輩と唐澤先輩が合流してた。
小野関先輩はヘタっぴな鼻歌を歌いながら伊藤先輩
と肩を組んだ。

「これ以上点数差がついたら結果は決まるからな。
紀野投手にも疲れが見えてきたし、女子選抜も
そろそろ投手代えた方がいいんじゃないか?」
「代えるって言っても、誰がやるの?」

外所先輩がきょとんとした顔で聞くと、小野関先輩と
伊藤先輩は口の端をにんまりと持ち上げた。

「そりゃ」
「勿論」

『女子選抜の守備変更をお知らせします。
ピッチャー、紀野さんに代わり、さん。
センター、さんに代わり、菅沼さん』


「「我等が後輩、に決定」」

「お疲れ燐」
「後始末は任せた」

パァン

と燐はお互いの右手の平をぶつけ、ハイタッチした。

「、奥の手は2つまでだぞ」
「はい監督」

黒蝶はあるがままに舞う。

グラウンドに立つ時、常に黒かった帽子が、黒ずんだ
赤の帽子であろうとも、変わらず、ありつづける。





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