ドリーム小説

13



「ごめん、キタ」

琴美のその一言で全部分かるのは私達全員女の子だから。






「切原さんヴァ●ァリン買ってきたよ」

チームメイトの菅沼がマツキヨから帰ってきた。
琴美は青い顔をして体を冷やさないように布団に包まる。

「…くぅぅ〜」
「間違いなく月経だな。
下腹部痛が酷い…明日の試合は無理だ」

医師である霞は選手部屋で琴美を診察して決定を下す。

「紀野、、2人は今月は終ったか?」
「終わりました。元々あんまり生理痛ないですから」
「同じく」

と燐がさらりと答えると布団から顔を出した琴美が
恨めしそうに視線を刺してくる。

「不公平よぉ何でこの私だけこんなに…」
「琴美ココアと紅茶どっちがいい?」
「ホットの紅茶に生姜入れて」

恨み言逃れ成功。

「リョーカイ」
「それが作り終わったら加西と紀野と一緒に
試合の流れを確認するように。
切り札の使用は2つまでに抑えるのが必須条件だ」
「分かりました。では紅茶作ってきます」

はスリッパを履きなおして部屋を出た。





「いいよね、さん何でも出来て」

誰かがぽつりと漏らした声は数人の胸にチクリと針を刺す。

「羨ましがるのいけんけど、やっぱり
ああなりたいって思うときあるよね」
「瞳さんもなんや。うちもな、はん大ごとなもん沢山
抱えとるの知っとっても、いんや、そうであるからこそ
ああも見事なまでにしゃんとできるのが羨ましくなるんやね」

瞳と由乃が同調の姿勢を見せ、比嘉は座布団を丸めて
枕代わりにし、寝転がってから自分の意見を言った。

「心技体どれを取っても誰にも見劣りしない。
勉強…て雑学あるし性格はあの通りの人の良さ。
弱点と言えばこの間の初恋の人関連と着飾りした時
くらいなもんか?」
「あれは昔の忍が悪いのよ。
の許可取らないでホームページに写真載せて、
その上自分の顔使われた18禁アイコラが出回ったから。
トラウマなってもしょうがないと思うわよ」

恵子はじろりと忍を睨む。
最初は女の子らしく本人も楽しんでいたドレスアップに
難色を示し始めたのはあの件の所為だ。
同級生の男子にそれを見せられた時、は羞恥心と怒り
で泣きそうだったなとと燐は思い返した。
流石にあれは可哀想だった。

「あの件は私も深く反省しているよ。だから今はごく
一部にしか公開していないじゃないか。
私はは好きだが、羨ましいとは言えないな。
の過去は重すぎて過ぎて私なら耐えられない」

そこで全員―監督の霞も―うっと喉を詰まらせた。

霞はある程度以上、の性格も過去も知っている。
3歳で両親が死んだだけでも辛いが、村中夫婦以外の親戚
ほぼ全員がを引き取る事に難色を示し、しかもは
それをずっと覚えていた。

『あんな子はうちの子といっしょに育てたくないって
言われました。
私その時、魁兄とユタととなりの部屋でねてたんですけど、
起きちゃって聞いちゃって、お義父さんとお義母さんが
そのことに怒ってくれて、本当の家族にしてくれたんです。
だから私、本当の両親と今の家族しかいりません』

あれはたった7歳の子供から出てきていい台詞じゃなかった。

その上に初めて恋した大神君が交通事故で死に、
1年ちょっとで相棒とまで呼ぶようになった加西を
傷つけた事で心に深い傷を作った。

そして今度言った台詞はこうだ。

『私、好きになった人を不幸する体質なんでしょうか?』

哀れにも程がある。
本当に加西が記憶を取り戻してくれて良かった。
でなければは一番幸せなはずの時期を楽しめずに
いたかもしれない。

「同情したって、は変らないわよ」

腹を包むように丸くなっている琴美が苛立たしげに
布団から顔を出した。

「どんなに好かれたって、嫌われたって、
強くたって、弱くたって、それを決めるのは
私達じゃなくて本人なんだから。
昔のことは変えられないし、故意に忘れるなんて出来ない。
だったら同情してやるより今と未来で幸せのもみくちゃに
してやればいいんだわ」

ああ何言ってんだろ私。

「何でも並かそれ以上にこなすのはムカつくわ。
男漁りたい放題の環境でもマイペースなのは色々言いたい
けど、まあ我慢してあげられる。
カワイイ顔して辛らつな台詞吐けるのは小気味イイわ。
身体能力は仲間兼ライバルとしては花丸よ。
女として、選手として嫉妬できるイイ女。
そして、友達としては信頼できないカワイイ子。
信頼できないから助けてあげるのよ。
あーでも紅茶遅いわね!
クスリもさっさとこの痛みを止めなさいよ!!」

信頼なんて、してあげない。
危なっかしい馬鹿な娘だから、
一度は消えてしまった娘だから。
でも、信頼できなくても結構好きなのは変わらないの。






「………は、入れない」

ずるずると背中が壁を擦る。

お尻がぺたりと床について、ポットと同じくらい熱く
なってる自分の頬に気づいた。

どんな告白よりもストレートな感情をぶつけられた。

心がもみくちゃになるくらい、今、幸せかも。





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