ドリーム小説


12




白雪は年齢に似合わない不貞腐れた表情でそっぽ向いた。

「どーして僕には見せてくれなかったのさ」

白雪が持っているのは昨日のの晴れ姿の写真。
どうやら埼玉選抜の誰かからか取り上げたらしい。

「ちょっと声かけてくれればすぐに来たのに不肖な兄弟子
には妹弟子が綺麗になった姿を見る権利はないのかなー。
あーさみしいなー」

白々い泣きまねでは少しイラついてきた。

この人は他人をからかうのが大好きだ。
ちょっとした悪戯からそれはもうイジメだろという
範囲まで多様なストックを持っている。
過去私含め大神さんもその時代の十二支も何人が
その被害に会っている事やら。
ああいけない。考えるべき事が他にあってそれを
聞きに来たんだった。

「そんなものどうだっていいでしょ雪さん。
で、空蝉と四大秘球の出来具合はどうなの?」
「良くないね。3人は一枚も切れてないし犬飼君に
関しては練習始めたばっかだからね。
それよりもちゃんは大丈夫なのかい?
師匠は大阪選抜の監督の事で愚痴愚痴言ってるけど。
何であんな体で監督業するのかなぁ」
「あ、気づいたんですね?」
「そりゃ僕はあの師匠の弟子だよ。
多分脚が不完全麻痺してる。
色々調べてみたけど、雉子村監督はアメリカで事故にあった
ようなんだ。おそらく重度の後遺症が残ってるんじゃないかな」
「私の見方も同じ。やっぱ、歩き方が変だし、何より
あの顔の傷は……ねえ」
「何があったんだろうって考えちゃうよね」
「考えちゃったね」

3人とも同じ意見でうち一人は医師。
気のせいで済ませられはしない。

「ここは本人の意思を尊重して…っていうのが常套句かな」
「嫌味に聞こえます」
「でも第三者はそうするしかないでしょ。
というか、これは僕らが関わってどうにかなるものじゃない」

確信した言だ。

では、第三者ではない者…家族ならどうする?
黄泉さんは一緒に暮らしてるんだし知ってるだろうが、
お猿君は知らないんじゃないだろうか。
告げ口するのも気が引けるし、何よりお猿君自身
そっちの話題に触れて欲しくなさそうだ。
もう、本当にすることないじゃない。

「まあちゃんが人の心配するのはいつもの事だ。
君は他人の感情に敏感すぎるからね。
それは僕にとっては好ましい短所であり長所でもあるし、
君にとっては厄介な感情でしかない」

生き難い女性特有の高い感受性。

どうしてこの子はこんなにも背負うものが多いのだろう。
そしてどうして他者からは辛いと思える時でも、
幸せだと本気で言えるのだろう。
弱い自分を自覚し、強い自分を戒めることの困難さは
誰でも実感できるのではないだろうか。
それを限りなく理想的に実現してるこの子は、どれ程の
ストレスが溜ってしまっているのだろうと気にする
人も少ない数ではないと思う。

僕が知っているのは、師匠と言う最高の知性、自己と
最悪の厳しさを備えた最高の指導者がいた事と、
馬鹿だ馬鹿だといくら言っても言い足りない僕の相棒に
会ったことが上手くきっかけを作れたという事だけ。
師匠は大きく違える前に助言を与えた。
大神は馬鹿になる事で手に入れる精神の安らぎを教えた。
気づいたかい?これは僕も同じだから分かることさ。

僕も師匠のお陰で最悪の数年を乗り切り、大神と
バッテリーを組んで、苦労もしたけれど、同時に
楽しかったと本気で言える時間を持った。

僕とちゃんの違いは他者と自分の位置だった。

僕は他者を見下して荒みそうになった。
"僕以外の全部は馬鹿ばっか。だから気にかける必要はない。"

ちゃんは自分を一番下に置いて沈みそうになった。
"私は劣った子。だから誰にも迷惑かけちゃ駄目。"

「きっと雉子村親子は昔の僕と同じなんだろうね」
「選民思想じみてる…そうですね、それが楽ですから。
私には選べない楽ですけど」
「うん、僕はだからちゃんが好きだよ」
「ありがとうございます。私は優しすぎない
雪さんが好きですよ」

魁兄とユタは私の事を大事にしすぎて無茶をさせたがらない。
雪さんは私を大事にしてくれるけれど、無茶
するのを止めないでいてくれる。

「2人が怒って、雪さんに迷惑かけたら本当に
ごめんなさい」
「まかせて」

ありがとうございます。




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