10 ……、導火線に火、点っちゃった。 「、そろそろアタシもキレるよ? 隠し事したきゃすりゃいいさ。他人に隠したい事なんざ 1つや2つじゃ済まないもんだ。だがな、逃げる為に話 さないんならそりゃこっちだって態度変わるだろ。 ここにいる奴等がここ数日のの挙動不審気づか ないとでも思ってんのか? 思ってんなら今すぐに考え改めな。 興味本位に根掘り葉掘り聞きたいってのもあるさ。 が惚れた男がどんなだか知りたいのもあるさ。 でもアタシが惚れ込んだ女が小心者のごとく逃げ回るの なんざ見たくも無いね。 言えや。馬鹿な話なら笑い飛ばしてやる。 嫌な思い出なら慰めてやる。 それするのが相棒の役目だろうが」 「久々にマシンガントークかましてくれるわね。 ぶっちゃけ馬鹿な話でもあるし嫌な思い出でもあるわ。 同情されるのが嫌なんじゃないよ。 笑われるのが嫌なんじゃないよ。 嫌なのは、人が助かった夜に人が助からなかった 話をすること」 屑桐一家の母が手術を無事に終えた日に、命を落とした 大神さんの話をするのはなんとなく、嫌だ。 「もしかしてその大神って人…死んじゃったの?」 せあらの返答待ちをは沈黙を通した。 その沈黙は、肯定を意味していた。 は「っけ」と口悪くしてから話し続ける。 「そいつは他人が助かったこと逆恨みするような奴か? 違うだろ?違うからこそ好きになったんだろ。 アタシには今、男いるけど、ソイツは逆恨みなんて粋じゃ ないことはしないね。 盆も過ぎたし酒もない場だけど、ソイツ語って供養の代わり にしてもいいんじゃないのか」 は言葉を切って、の後ろ首を引っつかみ、 顔を無理やり上げさせた。 「ほーら、んな顔赤くして涙溜めとくなって。 アタシか兄貴達いないと自分が嫌いな感情 溜めっぱなしすんの悪い癖だよ」 「うっさいうっさいうっさいぃ! こんなの好き好んで人になんか見られたくないよぉ…」 両瞼を手で押さえて、腕で顔を隠そうとするけど、 そんなのはなんの効果もなくて、ぽかぽかと 頭を軽く叩かれていく。 「は元から泣き虫なのよ。でも男共に見せないのは 正解ね。下手したら襲われちゃうかも」 「うちの馬鹿弟でもこの子のファン化してるものね。 ったく香水いらずのフェロモンでも持ってんじゃないの? 言っておくけど、辛気臭いのは嫌いよ。 何度もあるなんて思ったら駄目よ」 恵子と琴美が叩いた後、乾いたばかりの髪をぐしゃぐしゃ にしていく。 手の平から伝わる体温が暖かかった。 「好きな人いなくなったら寂しいもんね。 あたしも道楽いなくなったら泣いた後廃人になると思うもん」 「だからどうしてせあらはあれがいいんだ」 端から見ればリアル美(少)女と野獣。 美的感覚が発達している忍には理解に苦しむ。 「道楽カッコイイじゃん」 「あれがやの!?」 美的感覚は人それぞれ。 「で、どんな人だったの大神さんは」 「守ってもらって嬉しいって思える人。 大きな体格も、すごく明るい笑顔も、映画見て、 クライマックスで鼻すすっちゃうようなちょっと 情けないところも、全部、見てたかった」 そういえば、大神さんを知らない人に大神さんを 語るの、初めてだな。 「7歳も離れてる私に練習の口出しされても嫌な顔しないし、 逆にありがとうって言ってくれる人。 私が、家族以外で初めて"この人の役に立ちたい"って 思った……"絶対嫌われたくない"って思った人。 だから、本当の私を出して嫌われたくなくて、 天邪鬼になっちゃった」 ライバル宣言して、私を見てほしくて我侭して、 それも全部包み込んでくれた大きな人。 「良かったな。そんな器のでかい男を好きになれて」 うん、良かった。 「良く話せたな。疲れたら寝ていい。 俺っち達も情けない所も一緒にしてが好きだよ」 「ありがと」 …ずっとじゃなくていい。 でも、刹那でもいいから、私を受け入れてくれて ありがとう。 「この大会、出れて、皆とチームになれて良かった」 次の日、鏡を見たら目元が赤く腫れれて不細工な顔だった。 それでも、私は晴れやかな笑顔だった。 NEXT