9 ずどんと目の前に座られると、萎縮してしまうのは 私が弱虫だから? 「埼玉主将の母が今日手術の日なのに試合優先にして 泣きついた妹の為に奔走したと」 ちなみに先ほど手術成功との電話もらいました。 ふう、これで一安心と思いきや、断罪は残ってた。 「お人よしって言葉知っとります?」 「器用貧乏やね」 「5万なんて大金ぽんと貸すものじゃないでしょ」 まったくの正論で、反論の余地がありません。 「私を頼ってくれたんだからほっとけないでしょ。 無汰君はまだ小学生なんだから大金持ってないし 無涯さんだって試合中でお金持ってなかったよ。 無涯さんは潔癖な人だから返してくれるよきっと」 「そういう奴でも踏み倒しはするからヤ●ザが 借金収集に使われるんだよ」 「が言うと説得力があるな」 と忍の切り替えしには無視する。 何と言われようとお金を貸すのは必要だった。 「兎に角!情を優先して練習抜け出したのは悪い!!」 「その通りです」 比嘉に怒鳴られてはしゅんとした。 「ねえ、埼玉選抜に彼氏いるんじゃない?」 せあらの爆弾発言に全部が静まった。 「そうよねぇ、彼氏がいたらよく通う理由にも 世話焼く理由にもなるよ」 「埼玉選抜ってカッコイイ人多いもん。 一人くらいさんの彼氏がいたっておかしくないよ」 補欠の狩野さん藤島さんがイキイキと話に乗り出した。 の彼氏とはそれだけ興味を持つのか、それとも この思春期の女の子特有の恋バナ好きの性なのか。 「私は金髪緑目の人がいいな〜、それか現在進行形口調 の人かコゲ茶の銀髪君とか」 「牛尾先輩と白春さんに犬君ですか井口さん」 タイプ全く別々ですよ。 「あたしは主将の人とちゃんの上のお兄さんが好み」 「無涯さんと魁兄、古風ですね吉野さん」 魁兄はモテるのか?男子校だからバレンタインで チョコもらうひと私とお母さんだけの人なんだけど。 ちなみにユタは中3の時4個獲得。 「うちはユタ君とニット帽子の子かわええと思うねん」 「由乃さんニット帽子の子は兎丸君」 由乃さんはかわいい系できたか。 でもこれって私の彼氏じゃなくて自分の好みの男 暴露大会じゃないのかな? 「私の好みじゃないが、十二支のバンダナの奴は気が 利いていたしにはあってるんじゃないか?」 「子津君よ忍」 「私なら"にゃは"って言ってる男かガム男かしら。 遊びなれてるわよあいつ等」 「影州さんにミヤ君…皆しっかりチェックしてますね」 まさかこんなに名前が出てくるとは思わなかった。 「アタシは猿野でもいいかなって思うけどね〜」 「は!?何故お猿君をセレクト!?」 「猿野って一番馬鹿して目立ってる人だよね」 「顔は悪くないけど、性格、いや性癖?が…」 「ぶっちゃけ他にイイ顔と性格した男いるのに なんで癖強い奴選ぶのって話よ」 琴美に賛成する。何故私の彼氏候補の話で 奴が出てくるのか甚だ理解できない。 「だって、埼玉の中で兄達抜かせば一番誰に 素を出してるのあの奇想天外男だよ。 は半年かそこらの知り合いに自分の全部を さらけ出すほど能天気じゃないのに十二支、もっと 言えば猿野君にはずいぶんと奥に隠してた の凶暴性が現れてる。 奴の性格のせいもあるんだろうけど、 でもあいつはの特別だろう?」 の読みははずれてない。 それは私自身よく知っている。 そう、いろんな意味であの猿野天国は私の例外だ。 「格別キツク当たる。 格別気にしてる。 格別、仲間意識以外を排そうとしてる。 これだけ揃ってるとがあの男 好きでもおかしくないと思うんだけどなー」 にやにやした顔で言われると、何の後ろめたいこと ないのに嫌な気分になる。 「、アンタの見る目は信頼してる。 確かに言ってることは私も身に覚えはあるけど、 アイツには絶対恋愛感情は抱けない」 は不可解だと顔に出しながら頭を掻いた。 「何?それはあの明嬢での女の子…名前なんだっけ?」 「凪のこと?確かにあの二人は両思いだけど そういう次元じゃなくて、何て言ったらいいのかな。 アイツは似すぎてるのに違いすぎて、嫌なの」 「変な反意語」 「変な奴を表わすのに変な反意語。 全然問題ないじゃない」 「それで誰と猿野が似てるようで似てないんだ?」 「……内緒でひとつ「これでしょこ・れ」 今まで静かに爪の手入れをしていた燐が のカバンから黒帽子を取り出した。 「燐勝手に人のカバン漁るな!!」 「ここまで話しておきながら逃げるなんて許さないよ。 確かの部屋のアルバムに若々しい埼玉の監督 と赤い野球帽子被った下睫毛長い男と一緒に写ってた 写真をみた覚えがあるよ。 あれ、下睫毛の人はなんとなーくその猿野ってのに似てる 気がするよね。しかも、燐にその人にこの帽子貰ったって 言ったよね?」 「ああ、そんな事もあったっけ。そっか、あの下睫毛の人 がのピッチャーの原点だったんだよね」 「ふーん、その下睫毛の人が猿野天国の外見に似てて」 「中身が全然違うと」 「事下睫毛の人って言わないでよ!! せめて野球帽子の人にして!!」 半泣き気味では叫んだ。 「あーら、この様子じゃ本気で好きだったみたいね〜」 「中学時代から何人も男を振ったり好意に気づかない フリしてたのはそういうことかぁ」 「そやから今もその人が好きで周りのいい男にも 目もくれてへんの?」 「今はその人どうしてるのかなー」 琴美がの後ろに座って彼女の髪をいじくり、恵子が 前から手で頬を包んで迫り、由乃と燐が左右に座った。 包囲網は完全だ。 は眉間に皺を寄せて立ち上がった。 「教えてあげない。 私は今誰でも恋愛をしようと思わない。 大切なことがあるのにもう他に逃げたくない。 以上!この話終わり!!寝る!!!」 は言ってすぐに布団を頭から被った。 「ちょっとここまで盛り上げておいて卑怯よ!」 「せめてその人の名前教えな!!」 「いやその後の顛末まで語ってから寝て!」 「うっさいもう話さない勝手に恋バナしてて」 「元はアンタが誰も選ばないせいでしょ!」 「忘れられない人いるのに他選ぶなんて 失礼なことしたくないもん」 「忘れられないならGETよGET!!」 「そうそう、年齢とか今のご時勢障害にならないし」 「その人に付き合ってる人いるなら略奪愛決行でしょ!」 他人事と思って好き勝手言ってくれるなオイ。 でも話したら話したらで辛気臭くなるから話さないと決め 込んで頭から布団をかけようとしたら、誰かに布団を掴まれた。 NEXT