ドリーム小説


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『5回裏4-0で徳島選抜が依然リードのまま攻撃
に入ります。4番ピッチャー鳴滝君』

綺麗な声で流れるアナウンス。
マウンドには帥仙、キャッチャーには由太郎、
バッターボックスには鳴滝が位置に付いた。

「徳島の鳴滝投手は鳴門の大渦をモチーフにアンダーと
トルネードのコンボで投げることで有名ですから
スクリューVSトルネードって構図ですか」

「サンもアンダースロー投手ですから
思うことありますカ?」

野木久に言われ、は悩んだ風に人差し指を唇に当てた。

「アンダーが体勢と手の振りを綺麗かつ正確に
投げることが絶対条件です。
オーバースローの変種であり、腰を強く捻る
トルネードとの掛け合わせは上手いとは思えません。
何であんな体勢を崩し易い投法を選んだのだか・・・今年の
徳島2回戦敗退です。
今まで点を取れない埼玉の攻撃組にも問題があるんじゃ
ないですか?」
「辛口だなあ」
「鳴滝投手の下半身の強さは評価するよ墨蓮君。
トルネードはオーバーで投げても体勢崩しやすい
のにアンダーで投げるなんて凄い。
でも、埼玉には後半戦に強い奴が揃ってるから…
前半で4点しか取れなかったのは致命的よ」

そう、埼玉の長打力は大会屈指だ。



「プレイ!」

合図に従って、帥仙は振りかぶり、力強く投げた。
球が唸る。
空気を巻き込みながら打者を抉る様に潜った。

「よう渦巻いとう。ほなけんど鳴門の大渦に比べりゃ
こまいもんじゃきい!」

鳴滝が真芯で球を打ちに行ったが。

ギャリィ

金属が泣くように響き、球は頭上に浮く。


「見てたかクソヤロー共。
これが俺様の"スカイダイバー"よ」


中指を立てて初お目見えの球の名を明かす。

「スカイは飛ぶ、ダイバー潜る。
言葉としては矛盾してるけど
潜ってから浮く様を表わしてるね」
「下克上合宿で死に物狂いだったからね帥仙先輩」
「華武の恒例合宿?」
「そう、レギュラーふるい落としのため定期的に行われる
地獄の特訓、下克上合宿。
6年間県内無敗実績の要となっているものだ」

菊尼はメガネをキラリと光らせて説明してくれた。

「……もしかしなくても、帥仙さんの目元の傷って
それが原因ですか?」

「あの時は大変だったな」
「ああ、血が吹き出るわ眼球傷ついてないか
で医者と一緒に俺達の方が大慌てになるわで」
「なのに帥仙は"ふーん…だから?"で医者の
説明受け流して練習続けるし」

※医者の忠告、説明はちゃんと聞きましょう。

「歯止め役がいないんだよな華武は」
「だからが華武に転校してくれたらいいのにな」

「私はこのまま十二支にいます。ごめんなさい」

恨めしそうな視線投げかけられても転校しない
ったらしないんです。


それから帥仙さんは残り二者もスカイダイバーを駆使し、
凡フライで討ち取っていく。

ユタ…初めて取る球でも確実にとっていくのは流石だよ。

身内自慢になるけどユタほど臨機応変に投手に
対応できる捕手も早々いないと思う。



埼玉の守備は終わり、それぞれがバラバラに
ベンチに戻っていく中、御柳が帥仙の労を労った。

「うす帥仙先輩ナイスリリーフ」
「これくらいで浮かれるな。俺は俺の仕事を務めただけだ。
ここから4点差を返すのはお前らの仕事だぞ」

ウェーブした紫の髪を揺らし、帥仙は毒づきながら
忠告する。御柳は膨らました風船ガムを割り、
帥仙のそれに答えた。

「わーってますってアンタにここまでやられちゃ
こっちもやるしかないっしょ」
「任せる気(・_<)b4点とは言わず一気に逆転しないとね」
「屑さんが戻りングするまでオラたちが負げる訳
にはいかないング」

華武の3人が余裕を取り戻し、意気揚々と
攻撃態勢に入った。



「そろそろ華武の力見せ付けてやりましょうや」





「いつものことながら、後半の怒涛追いつきになるのね」





「ゲームセット!!」

7-4で埼玉選抜勝利。




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