7 埼玉ベンチを離れると走って観客席に上がり、 十二支の固まりと華武の固まりを同時に見つけた。 今日は帥仙さん気になるし、華武に挨拶してくるか。 はそう決めるとポカリのペットボトルを 買ってから華武の一団に向かった。 「こんにちは華武高の皆さん」 「じゃねえか。久々だな。女子選抜快勝おめでとさん」 「ありがとうございます萩之月さん。 無涯さんはさっき無汰君と一緒に埼玉に戻りました」 「え?どうして主将が埼玉に戻るのさ」 墨蓮が心底不思議そうに聞いた。 そして1軍の菊尼と桜花も顔を不快にしているところから 見るとやはり同年にも伝えていなかったことが伺える。 「実は正午に無二子ちゃんから電話もらって知ったんです けど、無涯さんのお母さんが甲子園出発前日に入院されて いたそうなんです」 「何だと!?それは本当か!?」 「ここで嘘ついてもしょうがないじゃないですか。 それに、無涯さんの不調をよく知ってるのは あなた達の方でしょうに」 に言われると彼らはぐっと喉を唸らせ、 二の句が告げられなかった。 「でも大丈夫です。埼玉選抜総出でなんとか説得 して帰らせましたから」 「運賃はどうすんじゃい?」 屑桐家の状態を知る桜花の心配はもっともだった。 「それなら無汰君に5万ほど貸しました。 二人の帰りと無涯さんがこっち戻ってくる分には足りる と思います。無汰君には無涯さんのプロ初給料で返す様 に言っておきました。入院費だけでも大変なんです からすぐに返せなんて鬼なこと言いませんよ」 お陰で私の財布のお札は全部消えた。 「それで屑桐のお袋は大丈夫なのか?」 独民に聞かれ、は表情に影を落とす。 「今日の6時から手術だそうです」 母を、父を失った悲しみを知っている。 死が分からないほど、小さな時だったけれど、 もう会えないと聞かされ、理解した時、沢山泣いた。 「何が何でも、成功して欲しいですよ」 それは何にも染まらない純粋な願いだった。 願いだけで、命が助かることはないこけど、 それでも人は願わずにはいられない。 助かってくれるように、生きてくれるように、と。 NEXT