ドリーム小説

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「大神とは中学からバッテリーだった。
受験の息抜きとか理由付けて大神とちゃんと野球して、
一緒に十二支に上がって、いつからか小学生3人が
フェンスから僕たちを見ていることに気づいて……。
あの頃はもうちゃんもいなかったから大神も
寂しかったのかもしれないね。
練習中何回も君達を振り返る彼を叱咤したのも
今ではいい思い出だ。
しかし、今こうして見ると何だか僕の想像して
いた関係とは随分食い違っていたようだ。
学校が一緒じゃない事は個人の進路の選択だからとやかく
言わないけど、今、同じチームになれたというのにお互い
少しも関わろうとしないなんて、一体君と御柳君の間
には何があったんだい?」



「がいなかった?」
「俺達小5の時親父のトレードで引越ししたんだよ。
俺が中2ん時に親父引退して、埼玉戻ってきたんだ」

由太郎は表情に困惑の色が見せながら猿野の疑問に答えた。

オオカミという名前が喉で留まっていて、答えが
欲しくて仕方がない。

それぞれが異なった感情を抱く中、犬飼は鬼気迫る
表情で喉を唸らせた。

「御柳、アイツが…大神さんを殺したんだ…!!」

御柳の表情が更に強張った。 犬飼は、5年前の出来事を主観で話し出した。 デパートで万引きをした所を大神に助けられたこと。 店員に開放された後に出向いたマックで説教され、 沢山のゴジラ松井キーホルダーをもらったこと。 それから部活のない日に練習を見てもらっていたこと。 それらはもう大神本人から聞いていた。 しかし、犬飼の言葉の端々から伝わる、大神への 尊敬の念は今までよりずっと身近に感じられる。 そして、話はあの日の出来事へと移行していった。 「あの日、私共は大神さんの練習が終るのを待って、 一緒に道路を歩いていました。 7月に入り、最後の大会が近い大神さんに会うには こちらから出向くしかありませんでしたから」 辰羅川が思い出しながらその日のことを話す。 「俺と大神さんが談笑をしているところに、御柳は悪戯に 大神さんの野球帽を取って、車道に飛び出した。 次の瞬間、御柳の横にトラックが迫っていて、大神さんが ガードレールを飛び越えたと思ったら……辺りは真っ赤な 血が舞ってた」 その血が御柳のものでなく、大神のものだと気づくのは 少し間が空いてからだった。 「葬式にも、形見分けにもその後の練習にも御柳は来なかった。 学校は夏休みに入ってたから、次に会うまでは結構時間が経っ てて……いつの間にかに悪い連中とつるんでた」 ああ、その辺りでと会ったのか。 場違いな納得がの心をよぎった。 「俺と辰は、大神さんに説教された言葉が頭に離れなくて、 あいつ等がたむろってるゲーセン街に行った」 「御柳君は家にも夜になるまで帰らないとお家の方から 聞いていたので、あの頃はその選択しかなかったのです。 それから、私共は御柳君と一緒にいた人達に、 暴行されました」 「そこで俺達はこう言われた」 "てめえらを半殺しの目にあわせるのはてめーらの 探してるバカラちゃんのたっての希望だったんだよ" 「それを言われてから、俺は左腕を折られたは首が捩れるかというほどに素早く御柳に視線を向けた。 そこには、驚愕で目を見開いた御柳がいる。 違う……この言葉は、ミヤ君のものじゃない! 「成程、その一件で大事な腕と友達を一度に失って しまった訳だね。さて、今の話に対して何か言う事は ないかな……御柳君?」 白雪は微動だにせずに、御柳に語りかけた。 「うわわっバレてた!」 「ちょ、やべどうするよ!」 猿野と由太郎が慌てる中、御柳は顔をこちらに見せないよう にしてホテルと逆方向に走り出した。 「っミヤ君!!」 「追いかけちゃ駄目だよちゃん」 御柳と同じ方向に走り出そうとしたを白雪は止めた。 「どうして!?あの状態のミヤ君放って置けってこと!?」 「彼には考える時間が必要だし、ちゃんと大神との つながりを知った以上、追いかけても逆効果だ。 それに、彼等はちゃんからの説明を待っているよ」 白雪の後ろで、犬飼と辰羅川が神妙な顔つきで立っていた。 重い雰囲気を漂わせたままの公園に、 と猿野、由太郎は足を進める。 「さん、私は貴女の口から本当の事を聞きたいです。 何故あれほど多種の変化球を覚える必要があったのですか? 何故、今まで大神さんとの関係を黙っていたのですか?」 猿野と由太郎は戸惑った風にを見る。 はぐっと手を握り締め、固く結んだ唇を解いた。 「黙っていた訳じゃない。気づかなかったの。 私は貴方達を直接見た事は一回もなかった。 大神さんや雪さんから話を聞いただけの存在だった」 というか、嫉妬の対象だったのよね。 何か居場所乗っ取られた気分がして。 「が変化球覚えだしたのって小3か4くらいだったよな? もしかして、オオカミって人に黒帽子くれた兄ちゃんか?」 は由太郎の半ば確信した問いに静かに1回頷いた。 あの頃の私は、人と関わるのが苦手だった。 NEXT