20 次の日の第一試合、大阪VS石川で鵙来が 4HRを打ち、高校記録を塗り替えた。 それを聞いて、驚きよりも先に納得してしまう。 それと同時に勝てるかどうか、じくじくと侵される ように不安になった。 力が及ばないのは承知の上。 だから私は技で勝負してきた。 「どうした?」 はの顔を覗いて聞いてきた。 「ちょっと、考え事」 守備で黄泉さん、攻撃で鵙来さんの大阪に死角はない。 対するこちらは、投手では本音負ける。 攻撃でもソフトで全打席HRの記録を持つ私が 野球でそれができるかと問われれば、否。 ソフトボールは本塁から外野フェンスまでの距離は 女子は67.06m以上。 野球は基本レフト、ライトが100m、センターが120m。 ソフトボールの約2倍。 実際の所、1試合で1,2HRが限界だろう。 「…あの球、完成させる勇気はある?」 はの顔を見上げた。 この相棒は信頼できる返事をくれる時、 意地悪そうな笑みを浮かべる。 今回も意地悪そうな笑みを浮かべていた。 「それ言ってくれる日、楽しみにしてたよ」 練習時間が増えるのは苦にならない。 今度こそ、作り上げてやる。 その日の晩。 部屋でのんびりしていると由太郎が来た。 「こんちはー。いるかー?」 「ノックくらいしろの兄貴その2」 比嘉は急に襖を開けた由太郎に注意する。 「俺由太郎だぞ。次はちゃんとすんな。 んで、ちょっと一緒についてきてくれよ」 焦り気味の由太郎に疑問符を浮かべながらは 敷き終わった布団から立ち上がる。 「いいけど、どうしたの?誰か怪我でもした?」 「紙の台を御柳がぶっ壊した」 「あははは、やっぱ馬鹿だー!」 の言に、私は反論することはなかった。 由太郎から話を聞くと、空蝉の練習中、バランスを 崩した御柳が手に持っていた刀で紙の台の片方を 一刀両断にしたそうだ。 朱雀の間に行って見ると、無残に斜めになる台と 猿野と御柳がいた。 「んで雪さんへの謝罪に一緒についていって欲しいと」 がいた方が白雪の怒りも少ないだろうと考えた3人の 気持ちは分からなくもないが、何とも情けない。 大きなため息を吐いた後、くるりと体を反転させた。 「とりあえず、台を直すのは後にして雪さんに報告しましょ」 夏の明るい、夜。 ホテルの近くにある西宮公園は灯台の光の側で 投球練習を続ける2人がいた。 十二支高校の犬飼冥と辰羅川信二だ。 「四大秘球のキレはまずまず問題なしです。今後に備えて 今日はこのくらいがいい塩梅ですね」 辰羅川は頬に玉の汗をかき、犬飼に居残り練習の 終了を促した。 「いや、まだ白竜の投げ込みをしておきたい」 「白竜…ですか?特に問題点は無い様に思えますが」 「大有りさ」 犬飼と辰羅川の会話に、違う男性の声が割り込んだ。 「白竜だけでなく、全ての球に」 腹に一物抱えていそうな、秘めた意地悪な顔。 白雪の企みがまた1つ始まった。 NEXT