ドリーム小説

18




「はーい終っわり!」

パンと自分の膝を打って、魁にマッサージの終わりを告げた。

魁は気持ちよくて瞼が重くなっていたのでその音で
はっと背筋を伸ばす。

「手間をかけた」

は正座で少し痺れた足をほぐす。

「これくらいはお安い御用です。そういえば、
今日はユタがいないね。どうしたの?」

いつもは魁兄と一緒に来るのに。

「由太郎は猿野殿と御柳殿と共に白雪監督の部屋へ向かった」
「ああ、打撃強化組なのか」

十二支の爆弾猿野天国に、華武の4番御柳芭唐、
黒撰の柱村中由太郎。

この3人がずば抜けて長打力に優れているのは周知の事実だ。

空蝉を教えるって雪さんも言って……
そういえば、刀どうするんだ?












マッタク、ダカラアイツヲ一人ニスルナト言ッタノニ。

眉間に皺を寄せ、黄泉はチームメイトの鵙来を探していた。

大阪選抜のミーティングが始まって10分程経っても部屋
に来ない鵙来に、全員がまた迷子になったのだと理解した。

あれでも鵙来は大阪選抜のキャプテンを担っているから、
放って話を進めるわけにも行かず、手分けして捜索している。

黄泉もその中の1人であった。

手を煩わさせられている感覚が気に食わなくて、
苛々が募る心中に、ふと反対方向から人が来た。

闇に溶け込む黒の髪と、早朝と同じようなラフな格好。

「…」
「雉む、あーはいはい、黄泉さん」

また苗字で呼びそうになったので一睨みし、
はすぐさま下の名前で呼び直した。

「何故ガココニイル?部屋ハ別館ダロウ?」
「埼玉選抜に義兄がいるんです。この間の金髪の少年も
私の下の義兄ですよ」
「埼玉カ…ウジ虫ノ群ガル場所ダ」

鼻で笑う黄泉にはむっとした表情で反撃する。

「あら?埼玉は貴方の生まれた土地でもあるでしょ」

ピクリと、黄泉は眉を吊り上げた。

「お猿君から聞いたんです。家族関係に第三者が口を
挟む筋合いはありませんから何もしませんよ。
ぶっちゃけ黄泉さんが埼玉全体の敵であってくれた
方が彼等の団結力アップします」

もうちょっと華武が他校と溶け込むのに時間かかると
思ったけど、黄泉さんっていうイレギュラーで固まり
つつあるもんね。

の翡翠色の目は、先を見据えて光っている。
強気な彼女を見て、黄泉は口元を吊り上げた。

アア、コノ目ダ。
コレガダ。

「ソレヨリモ、鵙来ヲ探シテイル。見ナカッタカ?」
「いいえ、見てません。探すのを手伝いましょうか?」
「ソウシテクレ」






場面代わって、特訓組の方は?

「え〜〜ではショートコント"お医者さん"」

鵙来と猿野のギャグの嵐だった。

「はいダメー!!あんた芸人ムリ!!
関東で言ったらプリンプリンレベルだな」

御柳は大爆笑しながら刀を自分の後ろに隠す。
どうやっても刀を貸し出すつもりはない。

鵙来は不服そうにズボンのポケットからどうやって
入れていたのか分からない独楽と紐を取り出した。

「ワイな、独楽回しごっつ上手いんやで。
ちょいその日本刀持って立ててくれん?」

御柳は意図も分からずに刀を自分の体と垂直に
するように立てた。

「せや、そのままやで」

独楽に紐をくくりつけ、鵙来は独楽を放り投げた。

ヒュッと風の切る音がしたかと思うと紐は宙を舞い、
鵙来以外の3人が紐から放たれた独楽を見失った。

「あれ?」
「独楽は?どっかいったぞ?」

周りを見回す猿野と由太郎を面白そうに見てから
鵙来は御柳の持っている刀の切っ先を指差した。

そう、鋭利な刀の先で、独楽は回り続けている。

「えっ!?いつの間にシュルルって!?」
「うぉわ〜かっけーかっけー」
「これならええやろ?」

鵙来のしてやったりとした余裕の表情に、
3人は否を言うことはできなかった。








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