ドリーム小説

17




「ふむ」
「どうしました監督?」

個人データ表を気難しい顔で見比べる霞監督に忍が尋ねた。

白い紙に印字された数値と単語の羅列を読み取り、
比較するように瞳を動かしていたが、切りのいい所で
それを止め、忍の疑問に答えた。

「我が弟子ながらの記録に目を瞠ってな。
昔から覚えの早い子だったが、ちと異端すぎる」

ここにがいたのなら霞だけには言われたくないと
即座に物申したことだろう。

「それでも私達のチームには彼女が必要です」

いつもの冷静な表情に眉間の皺が増えた。

が飛びぬけて優秀であるということは、チームワークを
崩す恐れがある。

それが理由でレギュラーから外されることはないだろうが、
一応釘する言をしておいた。

「分かっている。をメンバーから外すつもりはない。
ただ、勝つにつれの望まぬ采配をふる事になるだろう」

霞はパンッとファイルを打ち鳴らして選手の意識を
こちらに向けさせた。

「後10分で6時か。練習が終った者から片付けをして
ホテルに戻るように」

「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」






「っかあ!上手い!!」

浴衣と湯気で身を包んでコーヒー牛乳を一気飲み。

「比嘉ちゃん親父っぽーい」

それを隣で目撃した松林は軽くからかう。

「うっせぇ!でかい風呂入ったらまずこれやるだろ!」
「まあ定番やね。私はフルーツ牛乳にしよ」

松林も喉が渇いたのか自動販売機にコインを入れる。
そこで、浴場と脱衣場を分けるドアが開いた。

「熱ちー。もうちょっと風呂ぬるくてもいくね?」
「に同じく」
「私はこのくらいでいいよ。っと、比嘉さんに
松林さんお疲れ様です」
「おう・紀野も上がったか。
今日はこれからどうする?」

「UNOする」「寝る」「魁兄の腕マッサージしに行く」

順に・燐・。見事に全員バラバラである。

「まったく、また男共のとこ行くの?
あんまり埼玉といるとと他で嫌味言われるよ」

燐の忠告はもっともなのだが、は素直に頷くことができない。

「埼玉選抜ってほっとけない人たちの塊だからさ」

この大会中だからと言って関係を絶つのは無理だと
自覚している。

それに今更嫌味の1つや2つ増えたからと言って
何も変わりはしない。

「それに…そろそろ忍の本領が発揮されそうな気
がしてあんまり部屋にいるのもどうかと思うのよ」

がため息交じりに本音を吐くと、
と燐は至極納得した顔になった。

「ああ…ナルホド」「燐はあれ楽しいけど」

も燐も納得はするものの、そこまで深刻には
捉えきれないと言った声色をしている。

「やられる立場になってみなよ。
ある意味一試合投げきるより大変だから」

そう…あれは肉体でなく精神が疲れてしょうがない。

「って言われてるけどどうするの、忍」
「私がそれくらいの反論で諦めると思うか琴美」

どうしてこうタイミングよく来るのかな!?

熱めのお風呂に入ったばかりなのに体温が下がって
いくのは何故なのだろう。

は忍と数秒間、一言も話さずに視線をぶつけ合った。

「そんなに嫌か?」
「うん」
「あまり無理を言っているつもりはないんだが」
「忍にとってはそうだろうね」
「折角随臣に良品を宅配便で送ってもらったのに」

※覚えていらっしゃる方がいるかわかりませんが、
随臣は明嬢のセンターです。

「大丈夫!私以外にそれを使った方が価値が出るよ!!
じゃあ私は用事すませてくるからお先にー」

パジャマ代わりのTシャツと半ズボンにさっさと着替えて
はその場から逃げ出した。

「はどうしてあんな嫌がる?」
「京極さんが際限を知ってればああなりませんよ」

燐のツッコミを理解できたのは、ここでは一人だった。







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