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ホテルに戻ってくると、セブンブリッジ組が朝の光を一身に
浴びて玄関前で変な動きの体操をしていた。
一番張り切っているワンタンが号令をし、漢語数字を
テンポをつけて言葉にしている。
「おはようございます。太極拳ですか?」
が声をかけるとワンタン・紅印・影州・雀が
嬉々とした顔つきになり、次々に朝の挨拶を交わす。
「ニーハオ!」
「おはよちゃん。朝から勢が出るわね」
「オハヨ!そうなんだよコレ毎日義務付けでまいるぜ」
「日課欠落 怠惰開始合図」
きっと、ワンタンと東蘭風によって開始されたのであろう。
ワンタンは故郷の習慣の為、東蘭風は選手の健康維持…
特に剣菱の為に。
そういえば、剣菱さんは今どうしているのだろう?
凪はああ言ってくれたけど、凪は本当に大丈夫なのかな?
「…なあちゃん聞きたいんだけど、剣菱の
病気どこで知ったんだ?」
影州が聞きたいが聞いていいのか分からないと顔に
出して聞いてきた。
「剣菱さんが凪の迎えに十二支に来たとき、グラウンドで
喀血しちゃったんですよ。驚いて応急処置して、言わない
で欲しいって土下座されちゃって……すごく必死だったんです。
兄としての気持ちは魁兄が私に向けてくるのと良く似てたし、
仲間が大切で、野球をしたいって気持ちは私には良く分かり
過ぎました」
凪に嫌われるのは怖かったけど、
それよりも剣菱への共感が強すぎた。
手に持っているタオルは汗で湿って、じわりとした嫌な
感触は収まらない。
「剣菱さんは病気で、私は性別で野球をし難くなってた。
だから、その障害を越えようとする剣菱さんを止めるのは
私にはできませんでした」
影州に聞かれた事は通り過ぎているけど、言っておきたかった。
「 勘違発覚」
「勘違い?」
「朕たちはより先に剣菱の病気づいてたヨ」
大きく目を見開いた。
今耳に入ってきたのは空耳か?
紅印は苦笑気味に顔を歪ませ困惑しているを
安心させようとする。
「ちゃんとした症状は見てなかったけど、なんとなくね。
私達も同じよ。剣ちゃんの笑顔を壊したくなかった」
剣ちゃんは今の状態でもきっとちゃんに
ありがとうと言う。
自分の為に妹にギリギリまで内緒にしてくれてありがとうと。
それは私達にくれた言葉と同じ。
「つまりちゃんも俺達も共犯者。
だから一人で背負い込むことねーんだよ」
最後に影州がマジックに成功した時のような笑顔をみせる。
セブンブリッジの4人はの言葉を待つが、な何も
言わないで数秒、地面に視線を落とした。
それからぐっと顎を引き締め、晴れやかに笑った。
「ありがとうございます」
罪は消えない。
それは免罪符があったとしても……。
それでも荷が軽くなったのは事実だった。
「あ、やっと帰ってきた!」
「オハヨー。じゃあ4人とも失礼します。
練習頑張りましょうね」
「是」
雀の返答を聞いてからの元へ足早に歩いた。
後悔するのを覚悟した。
罵られるのを覚悟した。
嫌われるのを覚悟した。
それらは剣菱の主張を聞き入れた時になされた。
だけれど、彼等は一人としてを蔑まなかった。
ありがとう。
その言葉はそれだけの価値を持っていた。
パアァンッ
の両頬から小気味良い音が鳴り響いた。
「うしっ!」
引き返す必要はない。
道を作ってくれるのは私だけではないのだから。
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