ドリーム小説

15



帰りのバスが来た。

敗北者を乗せる、苦痛なバスが。


「行くぞ」
「…おう」

また負けた。
1回戦敗退のショックも大きいが、これから親戚に浴びせら
れるであろう罵声を想像すると帰る足取りがとても重い。

長生きする血筋なのか、の家は老人が多い。

それに比例して対面、世間体を気にする大人が多すぎる。
そういう奴ほど女のに負けてばかりの俺を何度も
叱ってなじる。

その怒りを押し付ける相手はいつも要因となるだった。
が俺を無視しようとしてもそれを許さなかったし、
魁や由太郎、一颯の兄貴の目を掻い潜って悪戯を繰り返した。
それ以外、この気持ちをすっきりさせる方法を知らなかったから。
今だからこそ馬鹿な事してたなと思えるが、は過去を
忘れることは無いだろう。
試合前に向けられた視線は敵意むき出しだったし、
少しばかり恐怖の色が見えた。

それでも、一度試合が開始されれば、全部の感情の色が消える。

ああ、だから黒い蝶なのか。

今更だけど、すごく納得した。

野球をするの目は誰にも変えることができない。

だから全部を塗りつぶすような黒なんだ。


バスに乗り込み、点呼をとるとバスは出発した。
誰とも話す気になれなくて頬杖をついてぼーとする。
群馬までは夕飯までには帰れるかなと考えていると隣の
赤城さんに肩を叩かれた。

「おいあれ」

窓の外を指されて身を起こして外を覗き込むと、
が走っていた。

速いペースのランニングに汗を散らし、赤い髪の俺と反対
の黒髪を揺らし、ただ走っていた。

「こうしてればやっぱり可愛いのになぁ」

試合では人一倍を罵っていた赤城さんでもを
好意的にとっている。元々地道なことが出来る奴が
嫌いじゃないから仕方ないかもしれない。

「赤城さん嫌いじゃないんすか?」
「嫌いだぜ」

簡単に言い切り、赤城は言葉を続ける。

「努力すれば何でも叶うとか思ってそうなのがムカつく。
女と試合する男の心情とか全然考えてないのもな。
大体の男は女に怪我させるの怖えーし、手加減しなくちゃ
って気持ちがどっかにある。それを一番に体験する俺たち
の身にもなれっつーの」

赤城の言い分に裕仁は頷いた。

99%の女は男より力が弱い。

小学校で男女混合ドッヂボールをした時、
ボールを当てた女子に泣かれたことがある。
弱く投げたつもりでも相手にとっては強く、怖かったんだろう。

女と言うのは普通は手加減をしないといけない存在なんだ。

それなのにこんなイレギュラーな大会で主催者側は、ルールは、
女子選手を認めた。

横暴で考えなしとしか思えない。

そう、とその周りの奴等の存在がなければ。

1%の為に作られた特別措置に納得できる奴はどれぐらいだ?

その処置が正しいと証明するのに何年かかる?

すべてがガタガタの崖っぷち。

そんな状況ですべてを可能にする鍵は。

バスはを追い越し、アイツの姿は視界から
消えていった。
それでも、このバスに乗っている全員が
きっとアイツを忘れない。

アイツは天才だ。
魁と由太郎だって普通に超人扱いできるのに、
今、は総合能力で奴等より上にいる。

魁の投球速度や由太郎の長打力のような特に長じるもの
には勝てないが、打投走守のバランスが整っている。

もう1つ大きいのが皇海さんも飲み込む、身に纏う雰囲気。

オーラと言うのか、あれは男女なんて忘れさせる力がある。

怖い、でも逃げられない、追いかけてしまう圧倒的なオーラ。

俺はそれに飲み込まれた1人。


「勝つまで諦めないからな」
「ん?何か言ったか?」
「何でもないっすよ」


来年を作れよ。

そうしたら俺のリベンジ戦が出来るんだから。

俺がお前に勝つまで、俺はリタイアを認めない。

裕仁の決意は誰にも知られる必要はない。








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