ドリーム小説

14





変ワッタ?

黄泉は中学の時のと今のは少し違うと感じた。

2年と少し前に俺とは奇妙な出会いをした。

キッカケを作ってくれたキャシーは同じスクールメイトで
それなりに交友があった。

何度かお互いの欲求不満を解消し合った事もある。

その時、キャシーの部屋で気まぐれに手に取ったビデオに
映っていたのがだった。
力を持て余し、その分余計な動きを入れて観客を楽しませる
プレーに力を入れていた。
俺にはすぐにわかった。

コイツハ野球ヲシテイタ。

あんなにも多くの変化球はソフトには必要ない。

バッティングでもホームランが多かったのは野球よりソフト
のグラウンドの方が小さいからだろう。

『この黒帽子は誰だ?』
『=よ。黒蝶って呼ばれてる日本の選手。
この子を日本人と侮った私達は随分馬鹿をみたものよ』

キャシーは自嘲していたが、反面楽しそうな含みがあった。

『ふーん、少しは楽しめそうな奴だな』

最初は少しだけの興味。どんなにソフトで凄かろうと
女のコイツが俺に敵う訳がないと確信していた。

しかし、は初対決でそれを豪快にぶち壊してしまった。
悔しかった。そして、嬉しかった。
久々に野球が本当に楽しかったから。
自分の力を思いっきり出せるのが快感だった。

異性としては幼すぎるが、選手として認められる奴。
それが俺の中のだった。

その意識は年月が変えてしまったと気づいたのは昨年。


『何?が来ないだと!?』

久々に会ったキャシーは物凄く憤慨していた。

『そうよ!!そりゃ私はもう年齢制限であの大会には出れない
けど、それでもと会うの楽しみだったのに!!』

日本の奴に聞いた所、ワイルドピッチで相棒に怪我を
負わせた責任で学校を辞めたらしい。

俺の感情を埋めたのは恨みや怒りでなく、焦燥感と虚無感。
その時、自分の中のの大きさを知った。
日本に来ることを決めたのに、が関係なくはなかった。
もしかしたら、また会えないかと心の隅で望んでいた。

そして、今月の頭にそれは叶った。

外見は俺が待ちわびるのに不足ないほどに大人びて
綺麗になってきた。

昨日の試合を見る限り力の衰えもなさそうだ。
俺が惚れたからには並であっては困るから、その結果には
納得していたのに、どこが違うというのだろう。

一時的にでもグラウンドから離れたせいなのか?
それとも、まさかがあの出来損ないに感化された?
いいや、反対はあり得てもそれはないだろう。

それでも自分が認めた唯一の女であるのに違いはない。
黄泉はの前に立ち、のくいっと顎に手を
かけて持ち上げる。


「ソレニ、奴ノ言ウコトニモ一理アル。前々カラ思ッテ
イタガ、ハ自分ノ魅力ヲ過小評価シスギダ」

黄泉の台詞には素直に疑問の感情を顔に出した。
やはり、変わらない。自分の思い違いか。

それを確かめると黄泉はすっとの顎から手を離した。
は何がしたいのか不明な黄泉に訝しげな顔をする。

「まあ、十人並くらいの顔ではあると思ってますけど?」
「いやいやいや、あんさんのどこが十人並やねん!」

鵙来の切り替えしに周りが頷きあった。
黒蝶の名の通り、漆黒の髪は艶やかで、それに縁取られた
輪郭はすっきりとしたラインを保っている。
翡翠色の目は惹き込まれそうな強い光を持ち、他者に
大きな印象を残させる。
運動をするのに適したTシャツとスパッツは健康的で、
豊満ではないがバランスの良い体にとても似合っていた。

十人に聞いて十人が綺麗だとか、可愛いとか、美人とか
そう言った褒め言葉をすんなり使うことが出来るだろう。
黄泉の言う通り、謙遜しているか自分を過小評価して
いるとしか思えない。

「無理にお世辞言わなくてもいいですよ」

くすりと笑うに、鵙来は確信した。
ほんまに自分の顔過小評価しとる。

今浮かべとる笑顔を嫌える奴がいるとしたら
よっぽど自分と美意識かけ離れとる奴やで。

「それよりも、皆さんランニングいいんですか?」

…………。
沈黙が数秒流れた。


「現時刻、5時58分です!」
「急グゾ!!」
「ほなまたなちゃん!!」
「じゃあねんセクシーガール」
「お前ホンマいい加減にせえ!!」
「活躍楽しみにしとるで〜」

それぞれが一声ずつかけて全速力で道を駆けていった。
それはさながら真夜中をバイクで走る暴走族のごとく。

「もしかして、強さと非常識さって比例するのかしら?」

焦らない速さで走りながらは思ったままに言葉にした。




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