ドリーム小説


13




翌日の早朝。

ブーブー

「ぅん…」

バイブ設定にしてケータイの目覚ましに起こされて、
は布団から起き上がった。

ピッ
折りたたみのケータイを開いて音を消す。

時間は4時半。

寝静まりかえった静寂の部屋に起きているのは自分一人。

どこか優越感と寂しさが交じり合う感情があるが、
は着替えて外に出た。




「はっはっはっは」

浅い呼吸のリズムを崩さないよう出来るだけ早く、長く走る。

夏でも早朝の空気は澄んでいて目を覚ますには
都合のいい天気と気温を維持していた。

こちらに着てから決めたランニングコースにも
慣れ、かち合う人もパターン化してきたのだが、
今日は見慣れない人が走りながら…漫才してた(?)。


「現時刻5時30分38秒、少々ペースが速いです。
本来ならこの地点には35分30秒前後到着が望ましい」
「ほんま小煩いやっちゃな!遅いより速いほうがええやろ!!」
「ペース配分の問題を言っているんです!!」
「走りこみくらい静かにできんのやろか」

最後ツッこんだ人に賛成だ。おかっぱ頭の人は腕時計を
几帳面に確かめて、それにツッコミか暴力か区別が
つけがたい拳をいれる前髪から弧をかく髪型の人、
最後に仏ボクロのクールな人……で、その周りに
ガヤガヤ個性的な人が集まっている。

「朝カラドウシテ五月蠅インダ?」
「大阪は商いの都市やし朝から活動せな
あかんからとちゃうか?」

んでもって、前の方でツンツン髪の人と喋ってる
黄泉さんがいる。間違いなく大阪選抜だね。
昨晩お猿君から話聞いたばっかりで気まずい。

「この道通らなきゃホテルに帰れないんだよね」

しょうがない、違う道走ってこよう。
時間に遅れる方がまだマシだ。

思い立ってくるりと方向転換しようとしたら。

「やあ〜んv背中とうなじが超セクシーな子発ッ見――!!」
「ひゃんっ!!」

背中に指を走らされ、ぞくりとする感触が走った。

「っなにすんのよ!!」 ドゴオォッ「あふうっ」

は条件反射で相手の後ろ回し蹴りを食らわした。 「「「「「あ」」」」」」 」 「あ、黒蝶やん」 大阪選抜が異変に気づき、アフロ変態と私を見てきた。 黄泉が自分の名を呼び、隣の緑髪ツンツンの人が あだ名の方を呼んだ。 「…やっちゃった」 あーあ、関わり合いになっちゃったよ。 後悔しようにも自分の非を認められず、 かくりと肩を落とした。 「ぐふ…セクシーキックに3000万セクシーあげちゃうわ」 まずはこのお猿君大阪版をどうにかしたいと切実に思った が、それを抑えては事務的に言葉を連ねてから会釈した。 「はじめまして。女子選抜代表、です。 ちょっとビックリしたくらいでお仲間さんを蹴り上げて しまって申し訳ありませんでした」 「ご丁寧にあんがとな。わい鵙来九郎いうんや。 ウチこそヒヨが失礼したわ。ほんまにすまんかった」 それに答えてくれたのが昨日話題に上った鵙来さんだった。 「このアホヒヨが!何女の子の背中撫でてんねん!? 失礼にも程があるやろ!!」 「いやん鷹羽ちゃん。私はセクシーの伝道師よぉ。 女の子だろうが男の子だろうがセクシーを見逃すのは 私のポリシーが許さないわ」 「だからって大阪の印象悪くしてどないするんや!! 早う黒蝶に謝ってこい!!」 「あっちで騒いどるアフロが日夜鳥でその胸倉掴んどる のが鷹羽。んで今ヒヨ殴ったんが蓮角。その隣で "時間のロスが"って呟いてるのが鴨神や」 「はあ」 はチーム紹介に気の抜けた返事しか返さなかった。 なんつーかもう、十二支のノリよねこれ。 疲れるけどツッコまずにいられない雰囲気とか。 「モランニングカ?一人ハ無用心ダゾ」 「野球再開してからの日課ですから止める気はないです」 黄泉は叱責するが、は意に介した様子はない。 「というより、なんですかあのセクシーがどうとか… 自分で言うのもなんですけど今の今までセクシーなんて 一回も言われたことありませんよ」 気恥ずかしいし自分に似合わない言葉だと本気で確信して いるのだが、日夜鳥と呼ばれたアフロはすぐさま追撃反論 をしてきた。 「あら、それはおかしいわちゃん!女らしさを失って いないピンとしてそれでいてすらりとした背筋! ちょっと鳩胸っぽい鎖骨あたりから下腹までの凸凹ラインは 10代半ばとしては理想的! それと高く結わえられて露になっているうなじは漆黒の髪 と白い肌のコントラストがイイ感じ! 着物とか着たらセクシー度ドアップよ!!」 ナチュラルにセクハラだ。 「もう一回蹴ってもいいですか?」 「いや、あれでもレギュラーなので勘弁して下さい」 セクハラ発言の大暴露には拳を奮わせたが、 鴨神によってそれは抑えられた。 NEXT