11 宴会の片付けも終わり、ぞろぞろと割り当ての部屋に戻る 人波の中ではに声を掛けた。 「先部屋戻ってて。私これから野暮用片付けてくる」 「あいさー。問題起こすなよ」 はの肩に軽くぽんと手を弾かせて見送った。 夜も深まり、この間のソファー近くには誰もいなかった。 仄かな暖色のライトだけが暗闇の沈黙から周りを画させ ているように見えた。 「お猿君らしくない顔してるね。そんなに黄泉さん嫌い?」 がちゃかしを入れると猿野は弾かれたように 反応を返してくる。 「ああ嫌いだね。それはもう小学校の時の漢字の 書き取り宿題くらい」 「また微妙な例えだこと」 「は違うんだろうな。あの野郎共にまで気に入ら れてるし、会った途端にハグられるぐらいだもんな」 冷やかしを込めた猿野の台詞には、うっすらとひがみの ような含みがあるように聞こえる。 「これ私の推測なんだけど、お猿君と雉子村親子 …親類じゃない?」 ビクンッ 猿野の肩が大きく揺れ、驚きと困惑の色が目に映った。 「その様子だとあながちハズレじゃないね」 は優位に立った時の余裕な微笑みで猿野を見た。 猿野はそれどころでなく、顔を険しくさせている。 「…大当たりだよ。雉子村九泉は俺の親父で、黄泉は兄貴だ。 どうして分かったかわかんねえけど誰にも言わないでくれ」 「言うつもりはないけど、JSだったメンバーは薄々気づ いても可笑しくないかも。お猿君は覚えてるよね、 ゼノン=レオハルト」 「そりゃ、あんだけ騒げば忘れるわけねーだろ」 「そりゃそうだ。そのレオハルトのSPに追っかけ られてる時助けてくれたのが黄泉さんだったんだ」 はそこで一呼吸置いて、昔話を始めた。 時は中学2年の夏。 夏休み半分使ってのジュニアソフトボール世界大会遠征。 その期間中に仲良くなったアメリカ在住の日本人少年がいた。 「久しぶりキャシー!」 『1年ぶりね!あまり変わりないわね』 1年前対戦した投手とおふざけの抱擁を交わし合う。 お互い母国語で話しているので何を言っているのか は正確には把握していない。 が、はフィーリングで大体の内容を把握し、 なんとなくで再開を喜んでいるのを知った。 「Thank you help me.」(助けてくれてありがとう) アメリカに到着した途端黒服男性に囲まれそうになって、 空港中逃げ回って撒いたはいいが、どこにいるのか わからなくなり、去年知り合ったキャシーに助けを求めた。 お陰でキャシーの迎えで宿泊予定地に向かうことができる。 『いいのよ。あのゼノンから逃げるなんて並大抵じゃ 無理なんだから、それと紹介するわ。黄泉=雉子村、 と同じ日本人よ』 キャシーは車を運転している金髪の男性を示す。 「雉子村さん、ですか?」 「ソウダ。オマエガBlack Butterflyナノカ?」 「黒蝶とは呼ばれています」 長いことアメリカにいるのだろうか、雉子村はカタコトの 日本語で話しかけてきた。 それが、私と黄泉さんの初対面だった。 「よくよく思い返すと、あの頃の黄泉さんと今のお猿君は よく似てる気がするわ」 16であの体格だとは思わなかったけどね。 ※ アメリカは州によっては16歳から車の運転できます。 黄泉がアメリカ国籍を持っているかどうかは分からないけど 多分取得できるはず…。 「つーか、そのアメリカ人ねーちゃんと兄貴どんな関係なんだよ」 「…………大雑把に言えば友人かな」 「何だその間は。まさか兄貴そのキャシーって人と?」 「あんまり突っ込んだことは聞かなかったけど、恋人 って訳でもなさそうだったよ」 不確かな発言を残し、は続きを話し始める。 NEXT