ドリーム小説

10


高価そうな身がいっぱいつまったカニ、甘エビやいくら、
鮭まで色々揃う豪華な宴会の席が用意されていた。

「さあさあ北海道の海の幸をどーんと味わうだ!!」

長万部さんの掛け声で一斉に食べ始める球児たち。

「うひゃーうめぇ〜!!本場のカニは全然違うな〜」
「茹でたのもイケるけどこのカニしゃぶもたまんねーぞ」
「そうだべ!?北の幸は海と大地自然の恵みだべ!
食いもんの上手さはどこの県にもまけねーべよ」

北海道は県じゃなくて道だけど、本当に美味しいわ。

は刺身に舌鼓をうった。

「乙女ちゃんチーズちょーだい」

せあらが乙女の前に手を出して催促する。
白糠は素直に応じてタッパから自家製チーズを出した。

「ほらよ。さんもいるべか?」

手渡されたチーズを口に含むと、市販のチーズよりも
濃厚な味が舌に広がった。

「〜っ美味しい!」

手作りならではの手の行き届いた味には悶絶した。

「変な風にトリップしないでねー」

隣に座るはカニの足をほじくりながらに忠告した。
そんなにはしたない様子だったのか?

「ときに話は変わるけんど、おめん所は大阪戦に向けて
何か対策は立ててるんだべか?」

長万部の急な問いかけに猿野、御柳、の顔つきが変わった。

「気が早ぇなおっちゃん。今日まだ一試合目終ったばっかだぜ」
「ユタ、本当なら試合が始まる前から対策を立てるべきなのよ。
黄泉さんの球は華武の人はしっかり見たでしょ?」

は手についたチーズの欠片の舐めた。

「その通りだべ。オラの大雪山高校も準々決勝で見え
ない球に手も足も出んかったべよ。
それに豊臣にはもう1人鵙来ってのがいるんけんど、
あいつ今大会1試合3HRの清原・平田の高校大会記録
に並んだとんでもねえ男だべ」
「うちそいつ知ってはるよ。近畿ではリトルから有名な
お人どす。つま先立ちの変わった打法使いなはってたなぁ」

京都出の由乃は吸い物を綺麗に飲んでから知っているだけを話した。

「女子選抜は準決勝、埼玉選抜は決勝。ギリギリまで当たらん」
「それでも勝率10%もないんだよなー」

松林が行儀悪く箸の先で机を突き、が嫌なことを
思い出したように頭を掻いた。

「それでも、俺っち達は公式試合出られただけでもすっげー
ラッキーなんだ。このラッキー来年も続ける為には、
最低ベスト8にくいこまねーとな」

比嘉はそう告げてからジンジャーエールを一気飲みした。

「おいおい、そりゃどういう意味だよ」

影州の問いただしに、はため息を吐いた。

「何で高野連がこんなに急にこの大会開催したか判りますか?」
「何でって、あの球頭って人の思いつきじゃねーのか?」

小饂飩がそう答えるが、は首を横に振った。

「甲子園大会を運営する高野連がそんなに甘いはずはありません。
この大会は、女子の全国大会出場を審査する為と
潰す為に開催されたようなものです」

しんと、宴会会場が静まり返った。

「んだろうなぁ。練習試合ですら、せあらは女子ってだけで
出させてもらえないことだってあるべ」

長万部がせあらの肩に手を回した。

「この大会を快く思わない小者なんぞそこら中にいるだ」
「来年に回してじっくり機会を作るよりも、今年に開催して
監督も選手も不十分な状態で審査しちゃえば不可の可能性は
とても高くなる。反対派はそれを狙ってるのよ」

琴美が苦々しく思っているのが表情に露になっている。

「でも、その思惑はハズレだったって思わせてやるぜ。
女子野球選手の未来の一端背負ってるんだ。
絶対負けられないっつーの」

比嘉が主将らしく頼もしい口調で言い切った。
気持ちは全員一致していると一目で分かる顔つきは
綺麗で、そして女性特有の強さを目の当たりにさせる。

「そういえば、道楽達は明日帰っちゃうの?」

せあらがひょんと思い出したように長万部を見上げると、
太い眉を申し訳なさそうに下げていた。

「できれば最後まで見ていきたいけんどな」
「おとさんの手伝いしなきゃだもんね。しょうがないよ」

しょげる長万部を慰めるようにせあらは頭を撫でた。

猿野はすすっとの隣に近寄って声を潜める。

「おいおい、もしかしてあの子とカニのおっさん」
「付き合ってるよ。もう親公認だって」

あ、お猿君が落ち込んだ。そんなに意外なのかな?

は麦茶を飲みながら他人事と決め込んで食事を再開
しようと箸を持ち直したが、その前に聞いておきたいこと
を聞いておく。

「そういえば、黄泉さんとお猿君ってどういう関係なの?
共通性がまったく見えないんだけど」

はさらりとそう聞くと、猿野の背中が硬く
なったように感じた。

「言いたくないならいい。でも今は私がアンタのストップ
かけるのは難しいんだから、変な事しちゃダメだよ」

はそれだけを忠告すると、猿野は小さな声
でに一言呟いた。

「これ終ったら、話す」
「この間のソファーでいいね」

猿野が縦に首を振ると、タイミングを見計らったように
宴会終了の掛け声がかかった。














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