ドリーム小説

8



「ふぁーもう5回だよ。どっちも塁に出るけど
点が入らないねー」

あくびをかみ殺す兎丸。隣の司馬はコクリを頷いた。

「も1塁、3塁のシングルヒットはあるんだが、
加西の奴上手く繋げてねーじゃねーか」

ガムを膨らませて御柳が主観に見える客観的意見する。


「投手が上手い配球してるからアル。それぞれの苦手
上手くついてる球投げてるヨ」
「そうね、ちゃんはどこ投げても打ってしまうから
ホームランにならないよう気をつけて、次の加西さん
か松林さんで打ち取る感じ」

ワンタンと紅印が相手の皇海を褒める言葉を出した。

そして、試合は8回で変化が起きた。


「いけっ!」

キンッ

恵子が足の速さを生かしたバントで1塁出塁。


「ほいっとテレビ父さん」


せあらは覚醒した目でサードとレフトの連携が
上手くいかない場所を上手く突いて恵子を2塁
へ進ませ、自分も1塁へ。


「球緩んではるっ!」

“京舞”

由乃もフライ気味に球を打ち、センターへ落とす。
これでノーアウト満塁。


「せあらさん何でそこでテレビ父さん!?
ってかそれが技名なの!?」
「時計大臣もあるよ」

※分からない人は検索してみましょう。
北海道テレビと時計塔のマスコットです。


「ツッコミ活動はそこまでだ。
折角のチャンスを逃さないように」
「はい!」

は気を取り直す為にヘルメットの具合を直しながら
バッターボックスに入った。

長い深呼吸。
雰囲気が、変貌した。
元JSメンバーの恵子、、忍、琴美が
背中を振るわせた。

「さーてここからが本物の黒蝶のお出ましだ」

、アンタは誰よりも野球を魅せる黒い蝶だ。


ピッチャーの皇海が額の汗を拭う。

の調子が変わったら、赤信号ですよ皇海さん。

裕仁の言ってたのはこのことか。
これは、荷が重い。
満塁では歩かせる訳にもいかないが、今、目の前にいる
バッターを打ち取るビジョンが浮かんでこない。
それだけ、威圧感が違う。

キャッチャーの赤城がサインを寄越してくる。

ストレート。

「謡え乾闥婆(ガンダルヴァ)」

キイィィン

高音と共に、球は甲子園の天空に羽ばたいた。


「ッチ、皇海さんでも駄目なのかよ」

悔しそうな声。
唖然とする顔。
してやったりと笑い顔。
バットと放った乾いた音。
白いベースを蹴る砂の擦れる音。
全部が会場に詰まり、
次には大声援に染まる。

『満塁ホームラン!!!ここぞという所で最大に見せ付けて くれました黒蝶、!!』

「っしゃあ!4点ゲット!!」 「よくやったわ!!」 女子ベンチとそのスタンドが沸くように声を上げる。 「さあ蛇神君、久々の出番だよ!」 牛尾が嬉々としてインド神話の神の説明を求めた。 「ガンダルヴァは仏教においては釈迦の請願を守護する 八部衆が一人乾闥婆『けんだっぱ』也。 乾闥婆は天界の楽師として名高く、古代インドの神で神の 飲料水である蘇摩酒の番人でもある」 解説ありがとうございました(by筆者) 「蛇神殿の仰る通り。確か乾闥婆の名を持つのはナンバ 打法であったはずだ」 「ナンバって何?」 沖の素朴な質問には由太郎が答えた。 「着物着るときにいい歩き方。足と手がこう一緒に出る から着崩れし難いんだ」 由太郎は右足と右手、左足と左手を一緒に出す歩き方を 実演して説明した。 「江戸時代では日本人はこの歩き方だったのだが、明治以降 西欧化が進んで今のように交差する歩き方に変化したようだ。 一瞬ではあるが、今のの打ち方はナンバになる。 体力の消耗が少ない打法であるな」 「は男との体力の違いは知ってるんだ。 だから、それだけで対抗できねーんだ。 裕仁はその辺分かってないんだよな」 そして、群馬選抜にとっての地獄の回は更に進む。 NEXT