ドリーム小説


6







「作戦は以上。各自存分にやれ」

グラウンドベンチ近くでは霞監督を中心に円陣を組む
女子選抜の姿があった。

「まずは私が先発ね!甲子園初女子ピッチャー。
私にこそ似合うものよ」
「琴美、はしゃぎ過ぎるな。お前は技術も持続力も一級品
だが、今回は男子が相手だ」

浮かれている琴美に忍が一喝を入れるが、琴美はそれを
気にすることなく、サイドテールの髪を人差し指に絡ませた。

「男子だろうと何だろうと、勝つのが私であることに変わる事
はないわ。相手の皇海は剛球と奪三振で有名だけど、
ここで夢潰えさせるのは心が痛むわね」
「琴美それ絶対本気じゃない」

は黒帽子をかぶりなおしてツッコミをした。

「あらバレた?それより、あんた要なんだから
しっかりしなさいよ」
ぱさりと、ポニーテールを払い、黒い絹糸のような
髪が太陽の光を浴びて輝いた。
それは、黒蝶のシンボルに相応しい。

「勿論。見に来て良かったって絶対言わせてみせるよ」

裕仁にも、存分に後悔させてやるんだから。


は群馬ベンチを睨んでそう口の中で転がした。








「あんさーやる気出なくねぇ?」

群馬ベンチの清水がだる気に言い放った。

「この試合って勝っても負けても俺等悪者じゃね?」

浅間も同感だと清水の台詞を受け継ぐ。

「―お前んとこの身内
出てるけど手加減いらねーよな?」

「バーカ、に手加減したら負けるっての。
アイツ握力だけなら両手50以上で走りは俺並だ」

清水のからかった物言いにため息交じりに裕仁はそう答えた。
それを聞いた回りの連中は一斉に騒ぎ出した。

「ウゲッ!それもう女じゃねーよ!」
「顔可愛くても、それじゃーなー」

裕仁は赤い髪を掻き揚げ、濃い目の灰色の目を
俯かせるがまったく反応を返さない。

「ヒロ、怒らなくていいのか?」
「何言ってんすか皇海さん。あんたは試合に集中して下さいよ」

ぶっきらぼうな返事に、皇海は苦笑してグローブをはめた。

「お前さ、このチームと女子選抜どっちが勝つと思ってんだ?」
「群馬。の野球の上手さ知ってっけど、周りがついてけ
ないと思うっす」
「それじゃ、お前と黒蝶は?」


裕仁の動作が止まった。

「ぶっちゃけ俺よりお前の方が打撃イイ。群馬じゃ1番だろうな。
それでも、ヒロは試合前なのに黒蝶に飲まれてる」

皇海の言葉は、裕仁の奥をグサグサ刺す。
昔っから、に勉強でも野球でも勝てなかった。



『裕仁、ちゃんに負けてどうするの!
貴方は家の跡取りなのよ?』

母さんに何度もそうやって叱られた。

『ヒロちゃんまた魁と由太郎に負けたってさー』
『もう毎年だから驚けねーよ』

馬鹿にされた根本には、いつもがあった。

『裕仁なんか嫌い!!』

ああ、俺も嫌いだよ。




「っは、読み違いなんて皇海さんらしくないっすよ。
俺絶対に勝ってみせますから」



そうさ、もう子どもの時とは違う。

男と女の筋力の差はどうしようもない力の差だ。





NEXT