ドリーム小説


3






「魁兄、どーして言わなかったの?」

は眉を引くつかせて埼玉選抜の部屋にいた。
そして、目の前には魁が気まずそうに正座している。

「すまぬ」
「すまぬじゃないでしょ!手に違和感あるならあるって
早めに言ってよ!そりゃ今は敵同士だけどそのぐらいの
処置ならするから!」

無骨な魁の手をマッサージしながらは憤慨していた。

また野球が出来るからって投げすぎで手が痙攣気味!?
それでユタにも私にも言わないなんて!!

「屑桐殿も不調、鳥居殿は不在、犬飼殿は謹慎。
この状態で拙者が不調となると、投手が手薄になりすぎる」

「影州さんもいればクワットロさんもいる。
大学でも野球したいなら一瞬の恥くらい忍んで」
「…悪かった」
「君、魁君も反省してるし、お説教はそれくらいにしないかい?」

牛尾は魁を哀れに思ったのか仲裁に入ってきた。
もそれもそうかと思うことにし、マッサージを終えた。

「もうちょっと続けた方がいいね。幸一さんが来てればもっと
効果的なの教えてもらえたけど、今は根気よくするしかないよ」

幸一さんとはの師匠、瀧野霞の旦那様。
整体師の資格を持ち、にマッサージ技術を教え込んだ
張本人でもある。ちなみに瀧野師匠は医師免許に
薙刀、少林寺、空手の師範資格を持っている。
実質、には2人師匠がいることになるが、
が師匠と呼ぶのは霞のみだ。

「世話をかける」
「兄妹なんだから、遠慮しなくていいんだからね。
一応雪さんには私から伝えておくよ」

はそう言って埼玉選抜の部屋を出て、
今度は白雪の部屋へと向かった。



+*+*+*



「…という訳で、この選抜あんまし魁兄使えません」
「それじゃしょうがないね。屑桐君に続いて魁君まで
とは、投手をもう少し増やした方がいいかな?」

他は平均的な子が多いんだよね。

白雪は困ったように選手データを見直している。

「華武の人ならまだ居残ってますし、どうです?
帥仙さんって人がそれなりにいけると思うけど」
「ん〜考えておくよ。そういえば、猿野君と御柳君に
話があるんだけど、部屋にいた?」

は部屋のメンバーを思い返し、首を振った。

「ううん。そういえば、ユタもいなかったな」

う〜ん、もしかして……。

「雪さんお猿君とミヤ君、拳で喧嘩なんてしてませんよね?」
「ちゃんから見て、しそうかどうか判断できる?」
「……ぶっちゃけ、してても驚きません」

の回答を聞いて、白雪は大きくため息という名の深呼吸をした。

「ちゃんは部屋に戻りった方がいいよ。
女子選抜だって明日試合でしょ?」
「そう。しかも群馬って凄い偶然ですよね」

まさか出生地が初対戦になるとは思わなかった。
しかも親戚が出場したりするし。

「しかも裕仁(ひろひと)だからいいけど、
これで一颯(いぶき)兄さんだったら戦い難かったよ」

一颯兄さんは母の兄の長男で、大学1年だからこの
大会に出てくるなんてあり得ないけどさ。
裕仁は遠い親戚で私やユタと同い年。
優しい穏やかな一颯兄さんは好きだけど
昔から意地悪してくる裕仁は嫌いだった。

「あんまりご親戚と仲良くないのかい?」

白雪は上着を羽織ながらそう聞いた。

「両親の結婚で色々あったみたい。おばあちゃん
と伯父さんはよくしてくれるからいいけど」

はっきし言って群馬が好きなのはおばあちゃんと
伯父さん一家がいてこそ。
他の親戚は…私が嫌いだもん。

過去の出来事を頭の隅に追いやり、は立ち上がった。

「じゃあお休みなさい雪さん。明日の試合頑張って」

「いらぬ心配だろうけど、そっちも初戦敗退だけ
はしないようにね」

「もちろん、とっても面白い試合を観客に見せてあげるわ」

はそう言ったものの、緊張の色が見えた。

高校で初めての公式戦。
悔いは絶対に残したくない。






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