ドリーム小説


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晴れ渡る夏の快晴。


蒸し暑さも日差しも最高潮の中、その時はやってきた。


『これより第1回全国高校野球県対抗総力戦の
開会式を開催いたします』


アナウンスは甲子園球場隅々まで響き渡り、
胸の高鳴りは更に上がってくる。

「、いつものより帽子ボロイ」

せあらは目頭をこすりながらそう指摘した。

「あ、本当だ」
「もう代えてる時間あらへんとちゃいます?」

チームメイトが口々に言い合う中、は横に首を振った。

「これじゃないと駄目なの」

色が黒いため汚れは目立たないものの、ツバの先はほつれ
ているのが近くによると分かる使い古された黒い野球帽。

「これに、一緒にいてほしいの」
「それって世界大会の開会式のと同じでしょ。
何か思い入れあり?」

もうグラウンドへの出口はすぐそこの所で恵子に聞かれた。
の清清しいまでの回答をした。

それは快晴の溢れる光に良く似合っていた。

「うん。私の初恋の君からのプレゼント」








『最後に女子選抜の入場です!女子高校野球選手が
甲子園グラウンドに入場するのは今大会が初となります!』

足並みそろえ、甲子園の土を彼女達は踏んだ。

『主将は今帰仁高校3年比嘉智美さん。副主将に別名黒蝶の
十二支高校1年さん等が率いる女子選抜!
どこまで奮闘できるかは大会屈指の注目となっています!』

「どこまで?優勝旗を握るまでに決まってるじゃない」

艶やかに口元を上げる琴美にチーム全体が賛同した。
私達が背負っているのは、県でなく、女子という性別。
そうそうすぐに消える訳にはいかない。



「SHINOBU様〜頑張って〜vv」
「比嘉姉さんいけ〜!!」
「切原!!神奈川の女帝の意地見せてやれ〜!!」
「黒蝶ファイト〜!!」
「由乃はん素敵ぃ〜!!」
「全国を驚かせてやれ〜!!!」
「お前は男に負けねえ位強いのは俺等が知ってるぞ〜!!」

十二支の野球部の人の声が聞こえて、は
スタンドを振り返った。


「さん頑張って下さいっす〜!」
「ファンタジックな試合なら貴女がトップですよ!」
「精進を怠らぬ主に勝るものなし也」


子津君に辰君、蛇神先輩…皆…ありがとう。

は彼らに小さく手を振った。

1人じゃない安心感が心中に広がった。



全チームが整列すると、開会式が始められ、
1人1人の挨拶で時間は過ぎていく。


『毎朝新聞会長ありがとうございました。最後に選手宣誓。
選手代表、女子選抜1年さん』


「はい!!」

は大きく返事をし、前へと進み出た。


過去、甲子園の土を選手として踏んだ女子が何人いた?

その人数は男子の何分の一だろう。

私は、歴史を変える舞台に今立っている。



高さの整えられたマイク立ての数歩手前で立ち止まる。

大きく深呼吸し、もう1歩を踏み出した。


『宣誓!』

高らかに響く女性特有の高めの声。

『我々!選手一同はスポーツマンシップに則り、 正々堂々と戦い抜くことを誓います!!』

神聖とまでされるこの甲子園球場で の声は何者にも邪魔されることなく 空へと駆け上がり、大地へと染み渡った。 新しい道が開かれた瞬間だった。 NEXT