#16











「無責任にも限度知りなさいよ!!燐と香苗に全部任せた
って、こっちがどんだけ大変だったと思ってんの!?」


燐は荒く息をしながら全力投球。




『やっぱ先輩じゃないと付いてこう!って気になんないよね』

『器が違うんだからしょうがないよ』


比較され、貶され、重責に耐え、それらすべての根源はだった。






「反論できない身分だけど、反論するわよ!!黒蝶って言っても
所詮虫けらって言ったのはどこの誰だったっけ!?」


ギンッ


「ファール!」

「1年の頃の話は今関係ないでしょ!!」

「大有りよ!それに燐が私が邪魔だって思ってたの
知ってるんだからね!!」

「っ思ってないわよ!!」



頬の紅潮し、燐は大振りに投げた。


「なら事ある度に嫌なもの見る目で私を見たの!?」



私は、その目が怖かった。



キイイィィン


の振ったバットは、球をフェンスの向こう側まで運んだ。

それと共に、燐の気力も空に放たれてしまう。


ちゃんのバッティングはいつ見ても綺麗ですね」


白雪は指にタバコを挟んで球の消えた方向を見送った。

あれだけ怒鳴りながらもバッティングスタイルを
崩さないのは驚嘆ものだ。


「この私の弟子なのだから当たり前だ。

静山、お前もうかうかしていないように」

「……了解です」



ダイヤモンドベースを回り、本塁を踏むと、は燐の立っている
マウンド手前まで歩いてきた。


「答えて。燐にとって、私は何だったの?」


燐にとっての……皆にとっての代わりだった燐にとって……。


「燐は自尊心が高い。それを傷つける事を私がしたんでしょ?

ならちゃんと私の前で言って。納得できる答えをちょうだい」


ギュッとグローブを握って、燐は声を荒げた。


「燐は、がずっと疎ましかった!!

燐はよりも上に立ちたかった!!

でも、できなかった!!!」



バンッ


グローブをへ叩きつけ、は投げ付けられたグローブをキャッチする。

それでも燐はをまっすぐに睨んだ。


「前に立つのはじゃないと駄目だった!

惨めで、気持ち悪い感情がいっぱい溜まって、
ソフトをやるのが苦痛になった!

全部の所為だって押し付けちゃいたかったのに、
思い出せるはいつも真剣な目をしてて、強くて、
憎ませてくれなかった!!」


は呆気に取られてしまった。






「ほらな。マジで嫌いな奴はあんな顔しねーもん」

「まったく、こちらの心配は杞憂だったか…」


村中兄弟はやっぱりなと大きくため息を吐いた。

本音が出たのなら、もうの流れに乗った証拠。


「この気持ち誰に向ければいいの!?

寂しさも、嫉妬も、全部、全部大嫌い!!

それを生み出したが嫌い!!」


燐の悲痛な叫び。

それは道しるべをなくした、困惑した者の言の葉。


「裏切らないで欲しかった!!いなくならないで欲しかった!!

どれだけ疎ましく思っても、燐の上にいるのはが良かった!!」


行くよ燐。

長い黒髪を揺らして、伸ばしてくれた手。

辛くても笑顔で、姿勢をピンと立てて歩く、
あの漆黒の蝶の称号をもつ友達は……。



「………い……たい」

『……燐、素直になった方が気持ちは楽になるよ』

「燐は……もっと、と一緒にグラウンドにいたかったよ…」


落ちるようにこぼれた本音は、にしっかり伝わった。

はマウンドにあがり、燐の首に腕をまわした。


「ごめんね。いっぱい酷いことしちゃって」


暖かい。


「次は、ないかんね」

「善処します」


大好きだった笑顔は、まだなくなっていなかった。







「そういえば、が髪切った理由俺たち今まで教えてもらわなかったNa」


虎鉄の呟きにがああと言って補足を話始めた。


「アタシん家の親父、極道の親分なのはこの間話したよな。

夕方くらいに病院に戻って来て待機してた若衆から
小刀借りて親父と母さんの前でさバッサリ髪切っちゃったんだって」


腰よりも長い、教師や監督に注意されても切らなかった髪。

高い位置でくくったそれを、躊躇無く切り落とした。


『命の指も私は置いていけません。
だから、代わりにこれを置いていきます


その話を聞いたのは、手塚が完全に記憶を戻させてくれてから2日後だった。


「驚いてたよ。女がこんなに潔くケリをつける様ははじめて見たって。

元々母さんは兎も角、親父はこんな事故で恨む気なかったけど、
男だったら跡継ぎにしたかったって笑ってたよ」


)が女で良かった!


  埼玉選抜と比嘉の気持ちは狂い無く同じであった。

















NEXT