#15










「師…じゃなくて瀧野監督。全員集合確認しました」


はチェックの印がついた名簿を女子選抜監督であり、
の師匠である瀧野霞に手渡した。


「ご苦労、も列に入りなさい」


は返事を返して最前列の開いている場所に収まった。


「私はこの選抜の監督、瀧野霞だ。

本職は医師で、野球の経験はほとんどないと言ってもいいが、
それなりの事はできる。

残りは自分たちの気合いと努力と才能で補うように。

では練習を始めよう。今この場には18名いる。

6人ずつの3チームに分かれてゲームを行う。

呼ばれたものは一箇所に固まるように。1班、比嘉、藤島、狩野…」


名簿の名前を読み上げられ、呼ばれるとぞれぞれチームごとに固まった。


「ポジションはピッチャー、キャッチャー、ファースト、セカンド、
サード、ショート。1試合5回まで、もしくは10点取られたら終了だ。

まずは1班先攻で2班との試合。3班は審判を」


流れるように準備は進み、は2班のショートに振り分けられ
グローブの吉祥天をはめ、守備位置についた。


キイィィン


金属バットで殴られた球がの右斜め軌道で迫ってきた。


パシッ ヒュッ パアンッ


球をワンバウンドで処理し、すぐさまファーストに投げ返す。


「アウト!」


「ひぇ〜やっぱ黒蝶だと動作が全部スムーズで速いわ」

「キャッチから送球の不安定な体勢でよく投げられるね〜」


への感嘆の声が聞こえ、燐は悔しそうに爪を噛んだ。


「ゲームセット!」


2班勝利で試合は終了した。


〜、何私の球楽〜に打っちゃってくれてんのかしら!?」

「琴美怖い!打たなかったら私じゃないでしょ!!」


凄みのある笑みで迫ってくる琴美に、思わず後ずさりしてしまう。


「でもムカつくわ!次こそ空振り三振経験してもらうからね」

「私が手抜きするわけないじゃん」

「その確信めいた言葉がまたムカつく!」


くぬっくぬっといった調子でをどつく琴美。

……傍から見ればただのコント。



、切原。いい加減にしておかないと"はの三番"特訓言い渡す」

「すみません監督!!」「すぐさま審判に入ります!!」

さらりと怖い事を言う監督にと琴美は大慌てで
次の試合の準備をした。




次の試合、1班対3班は、投手の投げあい戦の一言に尽きた。


「師匠、5回までどっちも0です」

「ふむ、投手はいいのがいるじゃないか。しかし、人数が少ない。

最悪でなくても、使われる可能性を覚えて置け」

関心したように頷く瀧野監督の通告を黒帽子のツバをつまみ、
深めに被りながら聞いた。


「はい」

「よろしい。それと、開会式の宣誓をして欲しいと
高野連から言われたよ」

「引き受けます」


はすっと了承の返事をした。

そして、次のゲームに出るため、グローブを片手に立ち上がった。

マウンドには、すでに燐がを見据えて立っていた。



+*+*+*+*




「あれ〜?ねえ白雪監督、グラウンド誰か使ってるよ?」


兎丸はバット入れを肩から下ろしながら白雪に問うた。

白雪の後ろには埼玉選抜の面々がぞろぞろと歩いてくる。


「おや、本当だ。もう使用時間過ぎてるはずなんだけど」


グラウンドの数には限りがある。その為、各選抜ごとに場所の
融通のし合いが必要となり、午後からは埼玉選抜がグラウンド
を使用するはずになっている。


「おい、バッターじゃねえKa?」


虎鉄が隣にいる猿野をつついた。


「あ、マジっすね。しかもピッチャーは昨日の…」


おいおい、平気なのかよ…。



猿野と虎鉄がそんな会話をしている間に白雪は
グラウンドへ入って相手監督に話をしに来た。



「師匠、もうグラウンド使用時間過ぎてますよ」

「待ってろ」


一言で済ませてしまうあたり、霞のあらゆる強さを物語っている。




「悪い埼玉選抜。もうちょいグラウンド使わせてくれ」


主将の比嘉は軽く頭を下げてそう頼んだ。


「久々にが喧嘩してるから思う存分やらせたいんさ」


比嘉と一緒についてきたが続いて弁明する。


「なあさん、あれが紀野燐さんなんか?」


由太郎は打席から目を離さないでそう聞いた。


「そうだよ」

「………何だ。んじゃ心配いらねーや。

あの人本気で嫌いじゃねえみたいだかんな」

「おいおいユタ、あれのどこを見てそう思うんだ?」



小饂飩は口元を引きつらせ、の何本目かわからない
ファールボールを見送った。










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