#12
ただ、嫉妬して、この上なく憎んだ。
燐ナイスピッチング!
このくらい、アンタも出来るんでしょ?
焦るな。次の回で挽回してみせる。
そうね、アンタはどんな球でも簡単に打ってしまうから。
へっへー選抜レギュラー獲得したよ。
あの時燐はおめでとうって言ったけど、本心は暢気に
笑いかけるアンタの首を絞めてしまいたかったの。
アンタは私の行く手を阻む怪物だから。
パアァァン
乾いた音が静まった廊下に遠くまで響き、
じんじんと鈍い痛みが真っ赤になった
手のひらから伝わってくる。
目の前から数十センチ先にはアンタがいて、長めの前髪が
縁取る頬は燐の手の平と同じように赤くなっっていた。
そうか、ぶっちゃったのか。
香苗と話をしてるアンタを見て、燐はすぐさま踵を返したけど、
アンタは追ってきた。
何度も出てくる謝罪の言葉に燐は……。
「謝らないから」
アンタはもっと酷いことを燐にしたんだ。
「何が黒蝶よ。アンタにそんな名前必要ない。化け物で十分よ」
蝶なんて可愛らしいものよりアンタにはこっちがお似合いよ。
「他人に気をかけているようで実は自分勝手で、勝手に消えて
せいせいしてたら、今度はこんなとこに脚変えして…」
「脚変えじゃない…元々私は野球の人間だよ」
アイツの淡々とした声の反論は癇に障った。
「ふざけないで!アンタはどれだけのものを
燐から奪えば気が済むのよ!!」
もう1回手を振ろうとしたら、がっと誰かに手首をつかまれた。
「Hey、何してんだい子猫ちゃN?」
変な語尾したバンダナが私の手を掴んで、そいつの後ろ
にもう1人男がいて、アイツに駆け寄った。
「おいおい、どうしたんだよ!」
「ちょっと女同士の話し合い中。ごめん、後で理由は話すから
今は放っておいて欲しい」
「これ見て放っておくなんてできっこねーだろ!」
アイツの知り合い…っは、無意識に男引っ掛けるのは昔と変わらないのね。
「それでも、私は燐と話が」
「別にいいわよ。この大会中は我慢するけど、出来るだけ近づかないで」
アンタの顔見ただけで、嫌な気分になるから。
「燐!!」
アイツが名前を呼んだけど、燐は振り返りはしなかった。
「ごめんなさい!!」
……言葉だけの謝罪だ。
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